岡本全勝 のすべての投稿

被災地での女性の役割

被災地での暮らしやコミュニティーの維持、そして復興について、女性の役割は大きいです。避難所の運営がうまく行くかどうかは、取り仕切る女性あるいは影で取り仕切る女性がいるかどうかで決まると言っても、過言ではないでしょう。その点、おじさんには限界がありますね(おじさんの一員として反省)。平時の町内会も同じです。
ところが、残念ながら、復興計画をつくったりする際に、女性の声は必ずしも反映できるような仕組みになっていないようです。仮設住宅に話を聞きにいっても、たいがいのところでは、役員さんはおじさんばかりなのです。でも、毎日の買い物や高齢者の介護、子どもの世話などをしているのは、女性の方が多いのですよね。
各市町村の復興計画をつくる委員会の女性割合を調べて、発表しました。驚くほど、女性が少ないです。
先日、ある市の広報を見ていたら、復興会議の記事に漫画(イラスト)がついていましたが、7人のうち女性は1人でした。いくら何でも・・。そのようなイラストがホームページで売られていて、何も考えずに使ったのでしょうが。注意を喚起しました。

木寺准教授、地方行財政の解説書

木寺元・北海学園大学法学部准教授らの手による『地方自治の法と行財政』(藤巻秀夫編、2012年、八千代出版)が出版されました。
地方行政に関する書物はたくさんあるのですが、この本の特徴は、法・行財政の基本的仕組みと、現在の課題を、あわせて全体を理解できるようにしたことです。たしかに、法制度と現場の実践的課題は、これまで多くの場合、別々の本で解説されていました。大学生、自治体の職員、地方議員には、便利な1冊だと思います。

被災地支援・公益法人の活躍

このホームページでは、復旧に関し、ボランティア活動やNPOの活躍を伝え、またその役割の重要性を述べてきました。重要な主体を忘れていました。というか、混同して書いてきました。
公益法人です。利益を目的とせず公共のために活動する法人の種類に、よく使われるものに、NPO法人と公益法人があります。今となっては、この2つの法人制度の違いは、大きくないように思えます。元々の「起源」が違う=根拠法律が違う=所管省庁が違っていた(今は同じく内閣府ですが、その中で別れています)ので、並立しています。
NPO法人は、市民活動支援から始まりました(NPO法人制度のホームページ)。他方、公益法人制度は明治民法以来の制度を、より使いやすいものにする制度改正をしたばかりです(新公益法人制度のホームページ。参考、一般社団と一般財団制度のホームページ非営利法人制度のパンフレット(法務省))

被災地や被災者支援というと、NPOが良く取り上げられますが、公益法人も活躍しています。公益認定委員会(非営利法人のうち公益法人を認定する組織)は、東日本大震災に関するページを作って、支援の呼びかけ、具体事例の公表、活動の際の疑問への回答などを載せています。
ありがとうございます。紹介が遅れて、申し訳ありません。

国内で満足し海外に攻めなかった製造業

6月15日日経新聞「迫真。テレビなぜ負けた」の第4回は「これでシャープに勝てる」でした。
シャープ亀山工場の建設が始まったのが、2002年。液晶パネルからテレビまでを一貫生産する、世界初の垂直統合型工場を造りました。最先端技術をブラックボックスに閉じ込め、韓国、台湾勢の追随を許さない戦略です。
しかしその頃、韓国サムスン電子は、全く違ったことを考えていました。「これでシャープに勝てるかもしれない」。この時、サムスンが恐れたのは、シャープが液晶テレビの海外生産に乗り出すことでした。しかし、海外に進出することはありませんでした。それは、パナソニック、キャノン、ホンダも同じで、国内で大型投資に踏み切っていました。
「日本のものづくりは強い」と自信を持ち、1ドル=100~113円の円安にも助けられ、ミニバブルに酔っていたようです。モーニング娘。が「日本の未来は、世界がうらやむ」と歌っていたのが、1999年でした。
また、日経新聞電子版、西條都夫編集委員の「内なる顧客とともに沈んだ日の丸半導体」(6月13日配信)は、日本企業の内向き体質が顕著になったのは、1990年前後のバブル期だと指摘しています。
日本の半導体製造業は強かったのですが、一方、半導体を購入する市場規模でも世界の40%を占めていました。半導体メーカーは、国内のお客に食い込んでおれば良かったのです。しかし、半導体のユーザーである日本の家電メーカーが弱くなると、日本の半導体メーカーは弱くなり、韓国や台湾企業に負けるようになりました。
つい数年前まで「日本のものづくりは世界一」と言われていたのですが、あっという間の変化です。日本のメーカーが変わったから、ではありません。変わらなかった、世界の動きについて行けなかったから、後れを取ったのです。
かつて「日本の官僚と行政は世界一」と言われていたのが、1990年代以降、大きく評価を下げました。これも、日本の官僚と行政が変わったからではなく、社会が変わっているのに、行政が変わらなかったからだと、「行政構造改革」で論じました(連載は、途中で中断したままです。反省)。
でも、悲観することはありません。いろんな製品や分野で、世界のトップグループにいます。欠点がわかったのですから、それを見直して、努力すればよいのです。

消費税増税、3党合意の評価

昨日15日、消費税増税ついて、民主、自民、公明の3党が合意しました。今朝の新聞各紙が伝えているとおりです。その評価について。

日経新聞1面では、小竹洋之編集員が「合意、法案成立につなげ」と題して、次のように書いておられます。
・・複雑な思いが残る3党合意である。消費税増税の実施で足並みをそろえた点は評価するが、社会保障の抜本改革を先送りするのは看過できない。消費増税の合意を今国会での法案成立につなげ、社会保障改革の具体化も急がねばならない・・

朝日新聞1面では、曽我豪政治部長が「政権交代の回路崩壊」と題して、次のように書いておられます。
・・民主党がこの3年つづった政権交代の物語は、いったん終わった。決められない政治から抜けだそうとはした。だが自公両党との修正合意で払った代償はあまりに大きい。
思い出してほしい。2009年、民主党は「政権交代。」をうたい、最低保障年金制度を明記したマニフェスト(政権公約)は「国民との約束」とみえをきって民意を引きつけ、衆院選を制した。日本の政党政治が追い求めた政権交代のサイクル(回路)がやっと循環した。2大政党が公約を示して政権を競い、勝者はその実現度合いを次の衆院選で問い、敗者は対案と政権奪取にたる公約を磨く―だが民主党はそのサイクルを起動させるかなめの公約をかなぐり捨てたのだ・・

それぞれ詳しくは、本文をお読み下さい。なるほど、このような見方もあるのだと、考えました。一人は経済部、もう一人は政治部です。私ならどう書くか。そして、私にとっては旧知の2人の記者が、それぞれ1面の真ん中で、自説に基づいた評価を書いています。今朝は、別の感慨にもふけっていました。