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この四半世紀の日本の政治改革、その2

・・「平成デモクラシー」を特徴づけるものとして、先に透明性という言葉を持ち出した。これは単に政治がわかりやすくなったとか、メディアの役割が大きくなったとか、そういうことに止まるものではない。大げさにいえば、それは権力構造の大きな変化を伴っていたと考えられる。
かつて久野収と鶴見俊輔は顕教と密教という言葉を使って大日本帝国の権力構造を巧みに分析してみせたが、戦後の日本政治にもその手法はかなりの程度通用する。つまり、憲法に書かれている顕教によれば、日本は議会制であり、政党を基盤とした内閣が国会の信任を得て権力を行使するシステムを持っていたことになるが、実際のところは(密教によれば)憲法にその権限の規定のない役所に権力が集中し、個々の政治家や利益集団はその権力への接近を求めて日々角逐・競争に余念がないというのがその実態であった。単純化を恐れずにいえば、顕教によれば議会制であったが、密教によれば実は官主導であった。
ただし誤解のないようにいえば、この密教体制も議会制という顕教がなければ存続できない限りにおいて、この2つの側面は憲法体制の下にあって共生していたというべきである。政治家や政党の役割が重要でなかったわけではないが、権力のコアはあくまでも官僚制にあり、統治はそれによって実質的に担保されていたのである。多くの有権者も政治家よりは官僚により大きな信頼感を持ち、「政治家がダメでも、官僚がいるから大丈夫だ」という感覚で過ごしてきた・・
続く。

この四半世紀の日本の政治改革

講談社PR誌『本』2013年6月号、佐々木毅・東大名誉教授の「平成デモクラシーを問う」から。
・・平成になって四半世紀が過ぎた。平成元年はベルリンの壁が崩壊し、冷戦が名実ともに終焉を迎えた年であった。平成時代は世界史の大きな区切りとともに始まった。従って、平成を問うことは冷戦後の世界がどうであったかを問うことに重なる・・
政治についていえば、この四半世紀は世界規模での民主化の大波に洗われた時代であった・・日本はこの大波に無縁な民主主義国であったはずであるが、気がついてみると、日本の民主制もそれなりに大きく変貌した・・
今から四半世紀前の政治はすっかり姿を消した。確かに自民党という政党はあるし、再び政権の座についているし、相変わらず派閥という言葉はあるが、その内実は月とスッポンほどに違う。違いといえば「政治とカネ」の問題はその代表例であるし、今や「一票の格差」が二倍を超えたりすると違憲判決が出るようになった。
自民党自身が自らを変えようとし、それに他の政治勢力やメディア、有権者が加勢し、日本は連立政権から政権交代まで一気に走り抜けた。今や政治にとって透明性は命綱であるが、四半世紀前の政治は一言でいえば、派閥に代表される不透明性の集塊の感があった。「平成デモクラシー」はいわば透明性と変化に向けての体系的な跳躍の試みであり、リーダーシップにしろ、政権公約(マニフェスト)にしろ、そうしたものへの注目はこの大転換の中で生まれたのであった・・
この項続く。

企業から被災地への職員派遣要請、公務員と民間職員との違いとは

経団連が、被災自治体への人的支援について、企業に呼びかけをしてくださっています。ありがたいことです。
ところで、これまで、官民交流は何かと敷居が高かったです。もちろん、一社に偏した利益誘導や癒着があってはなりませんが。もっと、交流があっても良いと思います。官にとっても、日本社会にとっても。
役所が社会から超越しているという思考は、19世紀ドイツ国家学と、その影響を受けた20世紀日本行政学の基礎にありました。その対極が、アメリカ経営学です。
社会が求めるサービスを提供すると考えれば、官でも民でも変わりません。国有鉄道と私鉄、公立病院と私立病院、公立学校と私立学校・・。提供するサービスは変わりません。公立病院の医師が私立病院に転職したら、あるいは出向したら、行うことが変わるでしょうか。
違いがあるとすれば、これらサービスの提供主体による違いではなく、サービスの内容による違い、すなわちより公平性や強制的かどうかです。でも、人間の命を預かる医療でも、民間が提供できるのです。健康に大きな影響のある食品も、ほぼすべて民間が提供しています。提供主体に差をつけるのではなく、行為や製品に一定の規制をかければよいのです。

ここで見える復旧状況

復興の進捗状況をわかりやすく見てもらえるように、復興庁では、いろんな工夫をしています。今回、ホームページをさらに改良して、「ここで見える復旧・復興状況」というページを作りました。
まず、表紙の上真ん中に「ここで見える復旧・復興状況」があります。そこをクリックしてもらうと、「ポータルページ」(総目次)が出てきます。これまでは、住宅と公共インフラが中心でしたが、医療・福祉・教育と、産業・生業の分野も載せました。
住宅・公共インフラについても、14事業24項目について見やすくしたほか、定点観測の写真を載せることにしました。工事がどのように進んでいるか、一目瞭然です。例えば、大槌町の災害公営住宅(吉里吉里地区)を見てください。工事もどんどん始まり完成しています。
進捗状況だけでなく取り組み状況を合わせた参考資料「復興の現状と取組」(約100ページ、定期的に更新)、最も簡単な進捗状況と見込み「復興に向けた道のりと見通し」も利用してください。
いろんなデータがあるのですが、それを使いやすく見やすくすることも、重要です。インターネットという便利な手段も発達しました。職員が知恵を出して、新しいことに挑戦してくれます。ありがたいことです。