岡本全勝 のすべての投稿

国家の崩壊ということ

日経新聞私の履歴書、9月は、ジャンクロード・トリシェ前欧州中央銀行総裁です。1985年に、パリクラブ(途上国にお金を貸した債権国の代表による非公式グループ)の議長に就任します。借りた金を返せない国とどのような交渉をしたか、それは本文を読んでいただくとして。 1991年12月、ソ連崩壊直前に、ゴルバチョフ大統領と交渉します(9月12日掲載分)。
・・交渉の冒頭、パリクラブの議長の私は「ソ連はもう約束を守っていません。ソ連の債務返済への保証が必要です」と話した。
ゴルバチョフ氏は「良い交渉になるよう希望しています。どこかの共和国で問題があれば電話をください。私から首相に電話して手助けします」と支配者のようだ。だが直後に交渉官は「ソ連はもうないのだ。ロシアと交渉し、ウクライナと照合して、結果を他の共和国に示してくれ」とささやいた。存在しないと宣言したソ連に債務返済を迫るのは現実離れしていた・・
ベルリンの壁崩壊や、ソ連の崩壊は、私にとって、それこそ「想定外」でした。生きている間に、こんなことが起きるのだとは。歴史は過去のものであって、同時代のものではないと思っていました。若い人には、この衝撃は理解してもらえないでしょうね。
それ以来、「想定外はない」、「ないのは想像力だ」と気づきました(参照、ヨーロッパで考えたこと。2004年9月13日

新大臣のスタートダッシュ

竹下大臣には、9月3日に就任以来、10日間を駆け抜けてもらいました。なんと、翌4日朝には福島県、5日は閣議と初の幹部会議の後に岩手県へ。翌週の8日には石巻市の被災地と宮城県。9日は閣議と挨拶回り。10日も挨拶回り。11日は早朝に経団連会長との意見交換、その後福島県被災地視察。12日は閣議、報道各社のインタビュー・・。この間を縫って、打ち合わせや所管事項説明を、こなしてもらっています。
スピーディに仕事が回っていることはうれしいのですが、そのいくつかにお供をしている私の方も、疲れています(ある職員曰く「仕事を作っているのは、岡本統括官じゃないですか」。その通りです。苦笑)。大臣にも、申し訳ないです。これだけの行事や出張を準備してくれる職員に、感謝しなければなりません。
明日16日は官邸で、全大臣出席の復興推進会議を予定しています。また大臣には、17日以降も、被災地に入ってもらう予定です。

増税を競う与野党、スウェーデン総選挙

9月14日の朝日新聞が、「増税支持する有権者。スウェーデン総選挙、与野党が主張」を伝えていました。
・・スウェーデン総選挙が14日、投開票される。最大野党の社会民主労働党(社民党)が、増税を訴えて支持を拡大。減税を続けていた与党の中道右派連合も増税を主張するという珍しい選挙戦だ・・
・・ストックホルムで3日に開かれた各政党の討論会。社民党のステファン・ロベーン党首が、相対するフレドリック・ラインフェルト首相ら連立与党の党首を指さし、まくし立てた。「減税しても福祉に多くのお金をつぎ込めると考えているのは、大人になってもサンタクロースを信じているようなものだ」
ラインフェルト首相率いる穏健党を中心とする中道右派政権は2006年に発足し、10年の総選挙でも政権を維持した。社民党は、この8年間で与党が進めた減税を批判し、さまざまな増税計画を打ち出した・・
・・今のところ支持を集めているのは社民党の方だ。今年初めの世論調査での野党連合の支持率は5割台、連立与党は3割台だった。このため、与党も金融機関への増税や、たばこや酒税の増税を打ち出し、133億クローナ(約2千億円)の財政支出増を訴えた。最新の世論調査で差は縮まったものの、野党優勢の状況に変わりはない・・
・・ストックホルム大学のヨン・ハスラー教授は「政府が福祉や教育にお金を使い続けるには、高い税金が伴うことをスウェーデンの有権者は理解し、大幅な減税を求めない。政党も財政健全化の重要性を認識している」と説明する・・
詳しくは、原文をお読みください。15日のNHKニュースでは、野党が勝利したそうです。2005年のドイツの総選挙で、与野党が増税を争ったことがあります(2007年3月23日)。

3連休

みなさん、この3連休は、どのように過ごされたでしょうか。東京や多くの地域では、久しぶりに良い天気に恵まれました。充実した休日であったことでしょう。小生は、2日間は仕事片付け、1日はキョーコさんのお供と、充実した3日間でした。
出張などがなく、ゆっくりと職場で仕事を片付けることができるのは、うれしいです。出勤している職員に「子どもさんの相手はしなくて良いの?」とか、「休日は仕事が進むよね」などと会話をしながら、どんどんはかどりました。内閣改造以来、10日分の書類がたまっていたのです。目を通して、大量の書類を捨てました。執務室の床が、数センチ浮き上がったことでしょう。明日以降の仕事についても、何をしなければならないかを考え、その段取りを職員に指示できました。仕事に追われるより、先取りして準備しておくと、みんながハッピイになれます。
毎週、同じことを書いています。そして、今日もすべては片付かず。でも休日なのですから、ゆっくりさせてやってください。仕事以外の新聞切り抜きもたまっているし、読みたい本をたくさん買ってしまったし・・。

藤沢烈さんのインタビュー。お金でも制度でもない、被災地には人材が足りない

藤沢烈さんが、毎日新聞インターネット版のインタビューに応じています。ぜひ、原文をお読みください。ここでは、印象に残る部分を引用します。
・・お金でも制度でもなく、人材がまったく足りていない。新しい社会づくりが進められており、今こそ民間の人材が力を発揮できるので、「面白そうだ」という動機で構わないから来てほしい・・
・・壊れた家を建て直すだけなら、行政と建設会社だけでいいかもしれません。しかし、これからの社会を支えるすべというのは地域だけで完結しない。まちづくりや産業の専門人材を外から連れてこないといけない。そのため、地域と外とのつなぎ役であるコーディネーターが必要になってきます。これは東北に限った話ではなく今後、全国では数千人も必要になると思っています・・
「震災から時間がたち、現地に向かうボランティアは減少しています」という問に対して。
・・むしろ質が変わっていると見るべきでしょう。減っているのは単純な支援です。反対に、今になって初めて被災地支援に行くという人もかなりいます。復興は時間がかかると考えて自分の専門性が生きるタイミングを探していた人たちですが、専門性があり、東北出身者も大勢います。「誰でも来てくれ」という段階は終わり、いよいよ出番だなと・・
「企業による支援も細ってきていませんか」という問に対して。
・・もちろん金額や人数の面で、太く短い支援から細く長い支援にシフトしています。しかし今でもキリン、三菱商事、ヤマト運輸など30社ほどが力強く支援を継続しており、これだけでもすごいことです。実は4年目に入り、自治体などの受け入れ態勢が熟し、企業は力を発揮しやすくなっています・・
支援企業と被災自治体とのミスマッチについては。
・・企業が自治体の方向性を見ずに、「何でもやりますから言ってください」では自治体としても、大変な状況の中で何を求めていいのか組み立てられません。逆に「こういう専門的な物資が大量にある」といっても、どう使っていいか自治体が判断できない。課題に合わせて提案することが必要で、地元の求めているプランと合うとすっと入れます。一方で、自治体には窓口の一本化を要望したいですね。ただ担当者を置けばよいということではなくて、地域のことを把握して、つなげる存在になってほしい。企業から話が来たときにまずその人に話をして、それだったら何々課があるとか、地域にあるNPOとつなぐとか、適切にマッチングできる。そういう存在がいると企業が来ます・・