連載「公共を創る」第189回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第189回「政府の役割の再定義ー原発事故への対応と復興庁の発足」が、発行されました。
前回から、東日本大震災での経験のうち、原発事故への対応の難しさについてお話ししています。天災では政府は被災者を支援する立場ですが、原発事故にあっては被災者に対し責任を果たす立場になりました。

事故の責任をどのように果たすのか。しばしば「責任を取ること」が求められますが、被災者にとっては「責任を果たすこと」が重要です。関係者が処分を受けるだけではすみません。
政府と官僚に対する国民の信頼を事故によって失いました。それを、どのようにして取り戻すのか。当時考えたことを整理して書いてみました。官僚がこのようなことを振り返ることは、最近は見ません。それも、問題なのでしょう。

フリーランスは一人で働いているのではない

6月13日の読売新聞「組織を離れて フリーランス」が、組織に所属しないフリーランスという働き方を解説していました。
そこに、フリーランスが加盟する「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」の平田麻莉・代表理事の話しが載っています。

・・・平田さんは、フリーに必要な資質として〈1〉自己研さんを怠らない〈2〉他人を巻き込む力がある〈3〉セルフマネジメントができる――などを挙げる。
取引先のニーズに応える能力を磨かなければ仕事が得られない。ひとりで働いているようでいて、フリー仲間と協力したり、仕事を紹介してもらったりすることがある。そして勤め人のように、予定やモチベーションを気にかけてくれる上司や同僚はいない。・・・

フリーランスは、決して一人で働いているのではないのですね。
組織に属していると、組織がやってくれることを、一人でこなさなければならないので、大変だと思います。仕事の受注といった仕事そのもののほか、税金の計算など庶務業務なども。結構いろいろあるのです。

フリーランスへの調査が載っていて、仕事に満足している人の割合が7割近くあります。従業員への職場への愛着度調査は日本ではとても低いのに比べ、これらの人は仕事を自分で選んだので、満足度が高いのでしょう。

DBSってわかりますか

NHKニュースがテレビとウェッブで「「日本版DBS」法が成立 性犯罪歴を確認へ」を伝えていました。
皆さんは、DBSが何かわかりますか。このニュースでは、「子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」」と説明しています。
DBSって、何の略かわかりますか。インターネットで調べると、Disclosure and Barring Serviceの略だそうです。 これだけだと、「開示と禁止のサービス」という意味でしょうか。犯罪証明管理及び発行システムとか、前歴開示及び前歴者就業制限と訳すこともあるようです。

駅前で通行人に「DBSは何かわかりますか」と聞いたら、何人が正しい答えを出すでしょうか。今日はニュースでわかった人でも、数週間後にはわからなくなっているでしょう。この略語では、連想が効かないのです。「データベースだっけ」とか。
多くの報道機関が、このアルファベット略語を使っているようです。普通の日本人にわかる言葉にしてほしいですね。DBSの元の英語 Disclosure and Barring Serviceを見ても、「前歴確認制度」ではダメなのでしょうか。

身寄りのない高齢者

6月11日の日経新聞経済教室は、藤森克彦・日本福祉大学教授の「変わる家族像 身寄りない高齢者、対応急げ」でした。

・・・国立社会保障・人口問題研究所が4月に発表した世帯数の将来推計は、身寄りのない単身(一人暮らし)高齢者が今後急増することを示唆している。日本は「家族依存型福祉国家」と呼ばれるように、家族が福祉に関して大きな役割を果たしてきた。だが身寄りのない高齢者は、家族が提供してきた支援を受けられない。
この将来推計によれば、65歳以上の単身高齢者数は2050年に1084万人と、20年時点の約1.5倍になる。65歳以上人口に占める単身者の比率も、20年の20%から50年には28%となる。
注目すべきは、単身高齢者に占める未婚者比率の急上昇だ。単身高齢男性に占める未婚者の比率は、20年の34%から50年には60%になる。単身高齢女性の未婚率も、20年の12%から30%になる。生涯で一度も結婚していない単身高齢者の増加は、配偶者のみならず、子どももいない人の増加を意味する・・・

働いて元気なうちは、一人暮らしは気ままでしょう。家族はどんなに愛していても、時には面倒な存在であり、困った存在でもあります。子育ては重労働だし。でも、困ったときや悩んだときに、一人暮らしはつらいものがあります。そして、年を取って体が衰えてくると、若いときのようにはいきません。
家族は、経済的な保険であり、日常生活の保険(病気など)であり、そして心の支えです。困った場合や災害時に助け合う際に、共助、公助という言葉がありますが、それらの前に家族があります。
結婚するかどうか、子どもを持つかどうかは、個人の自由です。しかし、人類は長年の暮らしの中で、家族という形態を選んできました。それだけの理由はあります。
「今、ここで、私だけ」という思想では、自分の人生全体を考えることはできません。

首相指示の失敗事例?その2

首相指示の失敗事例?その1」の続きです。首相の指示がうまくいかなかった例として、新型コロナ感染初期の対応を挙げましょう。
感染拡大を防ぐために、2020年2月に、安倍首相が学校の休校を打ち出しました。この判断は正しかったと思われますが、その唐突さが問題を生じました。首相が記者会見をしたのが木曜日の夕方で、休校は翌月曜日からでした。

この記者会見の途中から、私の携帯電話に女性記者二人から電話が入りました。彼女たちは、子どもが保育園と小学校低学年です。「木曜日の夜に言われて、月曜日から保育園や学校が休みになると、私はどうしたらよいのですか」との抗議です。
保育園や学校、さらには学童保育が休みになると、この子どもたちの面倒を見る必要があります。この女性記者だけでなく、働いているお父さんとお母さんが、同じ状況になります。どちらかが、仕事を休んで面倒を見ることになります。月曜日の仕事の予定が入っていたでしょう。
せめて1週間時間をおいてもらえれば、対応策を講じることもできたでしょう。

官邸幹部は、そこまで気が回らなかったのでしょう。文科省と厚労省は事前に官邸が相談がなかったと発言しているようです。この記者会見は、総理の指導力を示す意図があったのでしょうが、休校・休園した後の対応を忘れていたようです。
文科省と厚労省が検討を命じられたなら、この点について指摘したでしょう。そして、休校・休園するにしても、準備期間をおいたと思います。