連載「公共を創る」第186回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第186回「政府の役割の再定義ー幹部官僚としての心構え」が、発行されました。第183回から、私が所管を越えて広く日本のあり方を考えるようになった経験を話しています。

今回は、前回に引き続き麻生総理大臣の秘書官の経験、そして2011年の東日本大震災対応の経験を書きました。
総理秘書官は国政の全般を見なければなりません。そして当時は、リーマン・ショックという、世界恐慌にもなりかねない事態に対応する必要がありました。日本が思い切った政策を打つだけでなく、各国に政策協調を呼びかけたのです。

東日本大震災では、これまでにない大災害なので、前例どおり・法令どおりが通用しませんでした。しかも、対応は急を要します。政府全体を動かす「仕切り役」「手配師」を務めました。私の言動は、「霞が関の治外法権」「永田町の治外法権」とも呼ばれました。名誉なことです。

財政規律

5月3日の日経新聞「私が考える憲法」、大田弘子・政策研究大学院大学学長の「財政再建、改憲ありきに反対」から。

ー日本国憲法は第7章で財政について定めます。様々な立場で政策決定に関わり、憲法にどんな問題意識がありますか。
「憲法に財政規律条項を入れるべきだとの主張がある。日本の財政規律が弱いのは憲法に問題があるからではない。財政規律を維持しようとする政治的意思が弱いからだ。1997年に(歳出削減目標などを示す)財政構造改革法ができたが、翌年停止になった。景気がよくなってから復活させる動きもなかった」
「今のままでは、たとえ憲法が改正されたとしても財政状況は変わらないだろう。やるべきなのは5年程度の中期で予算や財政を管理することだ。危機感が薄くなり視野が短期的になっている」

派閥はなくならない

自民党の派閥の裏金事件で、解消することを決めた派閥があります。それも一つの対応ですが、派閥はなくならないでしょう。それは人間の性(さが)であり、総理の座を競う集団には必須の機能だからです。

まず、人間の性格です。「人間3人集まれば派閥ができる」とは、大平正芳元首相の言葉です。2対1に分かれるからです。

次に、政権=総理を競う集団の原理です。そこには、派閥が必ず生まれます。代議制民主主義、議院内閣制では、総理になるためには国会議員の多数の支持が必要です。そこで、政党が生まれます。日本国憲法には政党は規定されていませんが、政党の存在を否定する人はいないでしょう。その際には、「総理を目指す多数派を作る」という力の面と、「総理になったらこんな政策を行う」という政策の面があります。通常は、両方を主張します。政権を取ると、主張していた政策の実現と、党内構成員に政府の役職を配分します。

同様に、政党の中、特に人数が増えた政党の中で、党首を目指す競争が起きます。「小政党」ともいうべき派閥が生まれるのです。この派閥を禁止しても無駄なことです。名前は変わっても、多数派を作る作業と、政策を実現する手段として、派閥はできるのです。
政党を認めるなら、派閥も認めるべきでしょう。また、数百人の構成員が小集団を作らずに、全員を党の代表や執行部が把握することはできません。もしそうなると、代表の独裁に近くなるでしょう。

問題は、裏金を作ることです。これは、派閥の機能とは別のものです。派閥の参加者を増やすために、構成員に資金を配ることも起きるでしょう。それは政党と同じように規制し、透明化すればよいのです。もっとも、裏金はそういうところには出てこない金なので、このような規制をしてもずるをする人は出てくるかもしれません。

中途採用の増加、3大銀行で5割に

5月2日の日経新聞に「3メガバンク中途採用5割に迫る 24年度、三菱UFJは6割」が載っていました。

・・・3メガバンクの2024年度の採用計画が出そろった。三菱UFJ銀行は中途で23年度比7割増の600人を採用し、新卒を初めて上回る見通しだ。3メガ銀全体で中途比率は45%と5割に迫る。デジタル化や富裕層向けビジネスの重みが増すなか、新卒一括採用で様々な部署を経験させて人材を育成してきた従来の手法が転機を迎えている。
三菱UFJ銀行は24年度に中途600人、新卒400人を採用する計画で、中途の数がはじめて新卒を上回る見通しだ。23年度は中途347人、新卒354人だった。システムやデジタル関連などに重点を置き採用する。
三井住友銀行の中途採用は過去最高だった23年度と同水準の200人となる見通し。持ち株会社や銀行などのグループ各社で従業員を一括採用するみずほフィナンシャルグループ(FG)は、23年度実績比では減少するが22年度比では2割以上多い400人を採用する。
24年度の3メガ銀の中途採用は1200人に達する見通し。中途、新卒を合算した3メガ銀の採用数は2650人となり、中途比率は45%と5割に迫る勢いだ。

これまでは3メガ銀の中途採用の割合は18年度で5%にとどまるなど、新卒一括採用を優先する色が濃かった。日本経済新聞社の採用計画調査では同じ時期に主要企業は20〜30%程度で推移しており、24年度は4割に達した。3メガ銀の中途採用の割合は新型コロナウイルス禍を経て主要企業とほぼ同水準に追いついたことになる。17年度以前も各行中途は数十人規模といい、全体の割合からみてわずかだった。24年度の中途比率45%は過去最高とみられる・・・
中途採用者の増加が与える衝撃

JICAイエメン研修講師

今日5月14日は、国際協力機構(JICA)のイエメン政府幹部向け研修講師に、横浜に行ってきました。2023年3月の研修にも、呼ばれました。

イエメンでは、政府と反政府勢力内戦が収まらず、まだ復興に取りかかる状況にはありません。しかし、日本としては、将来に備えて準備をしているのです。
大災害からの復興は、内戦で壊れた町を復興する際に、参考になるでしょう。そのような視点から、現場での注意点、復興庁の組織のつくり、職員の集め方、財源の確保なども説明しました。