政府予算、基金の問題。民間に丸投げ

朝日新聞が「膨張予算」という連載で、政府の基金を検証しています。さまざまな対策で基金が創られますが、使われずにいるものも多いのです。10月20日は「巨額の基金、企業が仕切る 官から運営委託、補助金審査も」で、もう一つの問題を分析してしいました。
役所が仕事を企業に丸投げすることで、能力が低下する問題についてはコメントライナー「役所にも人工知能がやってくる」で解説しました。

・・・経済対策の補助金などに使う国の基金が急増している問題で、主要な業務の大半を民間企業に委ねる基金事業が相次いでいることが分かった。公的機関だけで執行を担えないほど基金の規模が急拡大したためだ。補助金をどこに配るのかという政策的な判断が必要な業務も企業に委ねられ、中立性や公平性が問われる事業もある。

一度の補正予算としては過去最大の8・9兆円を基金に投じた2022年度の第2次補正の事業について、朝日新聞がお金の流れを各省庁の資料から分析した。その結果、予算計上された基金50事業計8・9兆円のうち、民間企業に補助金を配る事務局を委ねているものは8事業計3・9兆円分あった。
基金の多くは、独立行政法人や公益社団法人など公的機関が運営を担っている。一方で、8事業では、一般社団法人などがいったん基金の設置を引き受けたうえで、補助金の支給先を決める審査を含む業務の大半を、広告大手や民間シンクタンク、人材派遣会社に委ねていた・・・

・・・やむを得ず、この基金の実施を担う農林水産省以外の4省庁は、一般社団法人、低炭素投資促進機構に資金の管理を担当させ、審査の支援など業務の大半を野村総研などに外注することにした。機構の関係者はこう解説する。「うちには一切ベンチャー育成のノウハウが無い。だから、専門知識がある企業に実務をお願いせざるをえない」
経産省関係者によると、2020年度補正で新設した「中小企業等事業再構築促進基金」も、独立行政法人、中小企業基盤整備機構に運営を依頼したが、他の事業を新たに引き受けているとして断られた。結局、実務をパソナにほぼ「丸投げ」することで、機構が基金の設置に応じたという・・・

支援型上司

10月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、藤原美喜子アルファ・アソシエイツ社長の「カリスマより「サーバント」」から。

・・・研修などで管理職の卵たちと接し、求められるリーダー像が変わりつつあることを実感しているそうだ。いったいどんな変化なのか。

――ずばり、どんなリーダーが今、必要ですか。
「サーバント・リーダーシップを発揮できる人材です。サーバントという言葉は奉仕という意味ですが、『支援型』と言い換えるとよいかもしれません。部下の話をよく聞き、信頼感を醸成し、力を最大限発揮できるよう導く。自ら考え、自主的・積極的に行動する部下を増やすことをゴールとする。そんなリーダーシップの手法です」

――強烈なカリスマ性を有する人物が組織をぐいぐいひっぱる。こんなリーダー像はもう時代遅れですか?
「カリスマ型のリーダーは今は時代に合いません。黙って上司の言うことを聞けと言っても従順に従う人は若い世代ではいないでしょう」
「企業の管理職研修では約9割の人が部下について悩んでいます。指示したことはやるが自主的には動かないと」

――そんな状況下で、サーバント・リーダーシップはどう有効に働くのでしょうか。
「英国の投資銀行で働いていたころ、私が仕えたリーダーたちは部下の育成に自分の時間の半分くらいは割いてくれていた。それは、部下をちゃんと育てないと競争に生き残れないからです」
「研修を受ける管理職は、忙しくて部下を育てる時間がないとこぼす。でも私はそれは逆だと言います。部下が育っていないから上司であるあなたは忙しいのだと。部下のために時間を使い、ちゃんと育てたらあなたのために仕事をもっとするようになると」
「部下の話を聞きながら『君はここが長所だからそれを伸ばそう』と助言する。ミスが多ければ『こんなミスをしてはダメだ』ではなく、どんなミスが多いのかを部下と一緒に分析し、改善策を話し合う。そこまですると、部下の心は動き出します」

――従来のリーダー像とはだいぶ異なるため、モデルやお手本があまりないのでは。
「管理職は3つ、毎日部下に実行するだけでまずはいい。1つ目はおはようとか、体調大丈夫? など日常的な声かけをする。2つ目は部下が知らないことを減らそうという姿勢で教える。3つ目は部下の仕事を認めてあげる」
「子育てと似ている。そう思いませんか。子供には信号の青や赤の意味から教えていく。わからないことがあれば『誰でもそこから出発点だからね』と寄り添う。そんな上司がいたら、部下はもっとやる気が出せるはずです」

「迷惑掛けさせていただきます」2

迷惑掛けさせていただきます」の続きです。読者から、次のような指摘がありました。
・・・「させていただきます」ことばは、相手に毅然とした態度を示して反論させないために使うことがあります・・・

そうですね。時代劇で妻が夫に対し、「実家に帰らせていただきます」と発言する際は、「あなたとは一緒に暮らしていけません。離婚です」と宣告しているのですよね。
「お皿を下げさせていただきます」のように、相手に奉仕をする際に同意を求めるのとは全く違う使い方です。夫がなだめようとしても、「させてやらない」と言っても、妻の決心は固く初志を通すでしょう。
「させていただきます」は、状況によって意味合いが異なるようです。
では、「発売を中止させていただきます」は、相手に反論させない毅然とした態度でしょうか。すると、「殴らせていただきます」も、あり得ますね。

もっとも離婚宣告の場合も、夫が妻に対して「離婚させていただきます」とは発言しないでしょう。これは、かつての男女の役割や地位の違いを反映しているのだと思われます。

サントリーみらいチャレンジプログラム2024

今日11月4日は、サントリーみらいチャレンジプログラムの助成先の交流会に、郡山市に行ってきました。
あわせて、来年度の新しい助成方法を説明しました。サントリーが、来年以降も支援を続けてくださいます。ありがたいことです。「シン・みらいチャレンジプログラム
来年度からは、継続的な活動支援をできるように、3か年事業を採択します。これは、良い考えだと思います。

助成先のような地域での活動が、世間に理解され、参加者が増えることを期待しています。そのために、自治体や各種団体との協働ができれば良いのですが。
サントリーみらいチャレンジプログラム、記者発表

指定管理者制度20年

日経新聞文化面が10月23日から3回連載で「指定管理者制度20年の功罪」を載せていました。

・・・公共施設の管理・運営に民間の参入を認める指定管理者制度が導入されて今年で20年。美術館やホール、図書館といった文化施設では開館時間の延長など利便性が増す一方で、経営効率化による専門人材の大量離職などひずみも生じ、地域の文化芸術を振興する施設の使命が揺らいでいる。制度の弱点をどう乗り越えるのか。最前線を追った・・・

入場者数は増えたが、働く人の待遇の悪さ、学芸員が定着しないこと、定期的に事業者を選定し直すことで長期的視点が欠如することなどが挙げられています。
かつての経験から、直営だから良いとは言えません。他方で「経費削減」という視点でなく、どのように機能を活かすかという視点が必要なようです。「丸投げ」はよくないです。
報道機関だけでなく、行政でも、この仕組みの功罪を検証すべきですね。