原発被災地の復興、浪江町

読売新聞は毎月11日に、大震災特集を組んでいます。7月11日は「新たな「街」 活気少しずつ…」でした。
浪江町は、2017年春に避難指示が一部解除されました。町の面積の約2割、居住人口では約8割です。町の中心部が暮らせるようになったのです。
しかし、かつて2万人が住んでいましたが、現在はまだ千人です。少しずつ人が戻り、それにつれて商店が戻る。すると、また住民が戻るという過程にあります。
長期間住民が避難した町を復興するということは、これだけ大変です。

連載「公共を創る」第10回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第10回「町を再建するーまちとは何か 町を復旧・復興する」が、発行されました。
前回の「町をつくり直す難しさ」に続き、実際にどのようなことをしたか、説明しました。

まずは、施設や住宅の復旧です。元の場所では危険な場合は、高台を切り開いたりかさ上げして、町の基礎を造りました。
通常の災害復旧はこれで完成ですが、今回は続いて、暮らしの再建に取り組みました。産業再建やコミュニティの再建です。

就職氷河期世代の支援

7月5日の読売新聞解説欄、山田昌弘・中央大学教授の「氷河期世代支援 30万人正社員化 間に合うか
・・・バブル崩壊後の景気低迷期に就職時期を迎えた「就職氷河期世代」に対し、政府が支援策を本格化させようとしている。何が課題になっているのか・・・
・・・政府は6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、就職氷河期世代を対象に職業訓練や採用企業への助成金拡充などを集中的に行い、正規雇用を30万人増やす目標を掲げた・・・

紙面には、「骨太の方針」のポイントが表になっています。その中に、地域若者サポートステーションや引きこもり支援NPOなどが載っています。第一次安倍内閣で、「再チャレンジ政策」が進められましたが、まさにそのときの問題意識は、就職氷河期世代、正規になれなかった人たちだったのです。私は、担当室長でした。
簡単な資料」「保存されている当時の官邸資料

「正規と非正規」「勝ち組と負け組」という言葉が、はやりました。そのような観点から見ると、日本社会は「標準的人生」からはずれた人、何らかの制約を持った人には冷たい社会でした。
アルバイト・パートタイマー・派遣社員は正職員と同じ仕事をしても待遇は悪く、技能を向上させる機会もありません。女性は、補助的業務しかさせてもらえせんでした。学校を中退した若者は、誰もかまってくれません。事業に一度失敗すると、再挑戦の機会は与えられませんでした。

これらの問題は、それぞれに対策が進められています。しかし、これら「標準的と言われる人生を歩めなかった人」という視点で、統一して考える必要があると思います。
その人たちに、どのような支援をするのか。子供たちに「正しい生き方」を教えるとともに、「失敗した際の対応策」をどのように教えるか。
これが、成熟社会日本の課題です。ちょうど、連載「公共を創る」で、そこを書いているところです。

よき死に方、よき生き方。佐伯啓思先生

7月6日の朝日新聞オピニオン欄、佐伯啓思先生の「死すべき者の生き方」が、勉強になりました。取り上げられているのは安楽死です。これも寿命が延びると重要なテーマですが、先生は、どのような死に方をするかは、その最後までいかに生きるかの問題だと提起されます。

近代社会では、「よき生」は問わずに、生きることが至上の価値とされ、生命の尊重が最高の価値となったこと。20世紀には経済成長と福祉が求められ、21世紀には医療技術と生命科学の進歩によって、あらゆる病気を克服して寿命を延ばすことが目標になったことを指摘します。

近代市民社会そして憲法は、各人の生き方については本人に任せ、国家が立ち入らないこととしました。そして、どのような死に方をするかもです。それは、宗教の世界であり、本人の信念とされました。
しかし現代では、宗教がかつてほど人の信仰を引きつけず、他方でどのように生きるかも教えてもらえません。道徳は、社会での行動の決まりは教えてくれますが、生きることの意味は避けます。

私たちが生きる意味を、そして死ぬ意味を、一人で悩むのはつらいことです。
近代市民社会は、宗教や迷信、親や社会の束縛から、自由になることを目指しました。しかし、それらが簡単になくなったわけではありません。西欧で革命が起きても、日本国憲法が施行されても、宗教などは根強く残っていました。それが、近代化が進むことで希薄になりました。市民社会の完成は、何にも束縛されない、そしてよりどころのない、「自由だけれど、孤立した不安な個人」を生みました。
ぜひ、原文をお読みください。

「公共を創る」を執筆する中で、この問題をどう取り上げるか、悩んでいます。宇野重規著『『私』時代のデモクラシー』を読み返しています。

原発事故被災地での農業復興

東北農政局が、12市町村を訪問し、営農再開に向けた農業者の意向把握や、営農再開ビジョンの策定などの支援を行っています。
それをまとめた「震災復興室だより」の第30号(6月21日)がでました。具体事例が写真入りで載っています。数値による復興度も重要ですが、このように具体事例はわかりやすいですね。
商工業が徐々に再開されつつあり、次の課題は農業再開です。