被災地では着実に復興が進んでいますが、残る課題に風評被害があります。農産物価格の低迷や観光客の減少です。復興庁では、関係者とともに、観光振興にも力を入れています。
「東北の観光復興の取組について」のページ。
その一つとして、外国人旅行者を呼び込むため、民間の新たな試みを支援しています。 モデル事業として、旅行商品の開発・販売などに取り組んでいます。
その中間報告がまとまりました。今年度始めたばかりの旅行商品の販売なのですが、すでに効果が出始めています。今後引き続き外国人観光客が来てくれると、効果は累積します。
担当職員から、「宣伝してください」と指令がありました。
月別アーカイブ: 2017年1月
「トランプ大統領」が、民主主義と資本主義につきつけるもの
1月22日の日経新聞、マイケル・サンデル・ハーバード大学教授の「これからの民主主義の話をしよう。市民の無力感 解消の道探れ」から。
・・・欧州では多くのポピュリズム政党が台頭しつつある。だからこそ、今こそ、民主主義と資本主義について根本から問い直す時期だ。民主主義についていえば、政府を代表する伝統的な組織や機関はお金や企業の利害によって左右され、普通の市民の声が反映されていない、と人々は感じている。それこそ、民主主義に対する不満の源だ。
資本主義についていえば、過去数十年間にわたるグローバリゼーションと技術革新の結果、生み出されたものは格差だけだったという点があげられる。この問題と向き合わなければならない。政治の世界において、我々はもっと普通の市民に意味ある発言をしてもらう方法を見つけなければならない。経済の世界では、グローバリゼーションと技術革新がもたらす利益を広く共有できる術を見いだす必要がある・・・
「そういう観点で見れば、トランプ政権の誕生はある種の社会革命ともいえますね」という問に。
・・・その通りだ。ブレグジット(英国による欧州連合離脱)も全く同じ構造だ。部分的には経済上の問題だが、実は社会的、そして文化的な反発が背景にはある。その反発とはつまり、エリート階層が普通の人たちを見下している、ということだ・・
・・・格差の問題は昨年、突然、表面化したわけではない。過去20年以上、我々はその問題を提起してきたが、本来、労働者に寄り添うはずの民主党がプロフェッショナルな階層や、ウォール街に近づいてしまった。この結果、民主党は普通の労働者から遠ざかってしまった。
米国ではこれまで、格差について人々はあまり心配していなかった。我々はいずれ上向くという信念があったからだ。貧しい出であっても、のし上がることはできる。それこそ、アメリカンドリームなのだ。
しかし、今、そうしたケースが急速に減っている。今は米国において、貧しい生まれなら、その7割は中間層にすら上がることができない。上位20%の層に入る率はわずかに4%だ。上位の層に上がる率は今や、米国よりも欧州の方が上だ。これはアメリカンドリームの危機といえる。もし、子供たちに「格差のことは心配しなくても、君たちはのし上がることができる」と言えなくなれば、もっと平等や団結といったことに注意を払わなければならなくなる・・・
原文をお読みください。
加藤秀俊先生、違った視点・独自の視点でものを見る
加藤秀俊先生が、『加藤秀俊社会学選集』(2016年、人文書院)を出版されました。
私は学生の頃、加藤先生や梅棹忠夫先生を代表とする京都大学人文研の先生方の本、松田道雄、清水幾太郎、山本七平さんなどの世相や日本人論を読みふけりました(「私の読んだ本 残す・残さない」)。大学の授業や学術書では教えてもらえない「日本社会」が、そこにはありました。その鋭いものの見方に、感銘を受けました(私も若かったですし。「私の読んだ本」)。
加藤先生は、デイヴィッド・リースマン『孤独な群衆』を翻訳され、中公新書の末尾(奥付の次のページ)に付いている「刊行のことば」は、加藤先生が32歳の時に書かれた文章だそうです。
1月9日の読売新聞文化欄に、小林佑基記者が「世の中そう変わらない」として、加藤先生のインタビューを載せています。
・・・そこから浮かび上がってきたのは、この50年間の「変らなさ」だ。交通や通信分野では大きく変化したものの、日常生活や人間関係など日本人の基本的な生活文化は、そう変わっていないと指摘・・・変わらぬ理由として挙げるのが日本語の存在だ。共通言語が生活習慣に影響し、文化を固有のものにしているというのだ・・・
・・・他方、様々な母語があるがゆえに異文化との衝突は避けられないとも・・・だからこそ、西洋を絶対視していたかつてのアカデミズムには批判的だ。「我々の頃は、カントやヘーゲルを読むことが教養と言われていたが、生まれた土壌が違うのだから役に立たなかった」。それよりも人生訓などが詰まった落語を聞いたり、夏目漱石や司馬遼太郎の作品を読んだ方が、よほど教養になるというのが持論だ・・・
86歳になられた加藤先生のお写真も載っています。
トランプ大統領とポピュリズム
1月21日の朝日新聞オピニオン欄「分断の行方」、水島治郎・千葉大学教授の発言から。
・・・トランプ氏の政治手法はポピュリズム的です。欧州のポピュリログイン前の続きズムとも共通点が多いのですが、違いもある。
ポピュリズムにも「右」と「左」があります。左派ポピュリズムは、貧富の差が激しい中南米などに多く、分配を求める。右派ポピュリズムは、欧州のように福祉国家化が進み、格差が比較的小さい社会で、移民を排除する。
米国は、欧州と中南米の中間の社会です。先進国ですが福祉国家化が遅れ、西欧より格差が大きい。だからトランプ氏の右派ポピュリズムと、民主党のサンダース氏の左派ポピュリズムの両方が支持を得る。ハイブリッド型です。
既成政治かポピュリズムか、右か左かという2本の軸で分けると、「既成で左」がクリントン氏、「既成で右」がジェブ・ブッシュ氏ら共和党主流派、「ポピュリズムで左」がサンダース氏、「ポピュリズムで右」がトランプ氏を支持したといえます。中南米は「ポピュリズムで右」が弱く、欧州では「ポピュリズムで左」が弱いが、米国は四つがそろっている・・
水島先生は、昨年12月に、『ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か』(2016年、中公新書)を出しておられます。これを読むと、各国の社会・政治的背景によって、一概にポピュリズムが悪だとは言い切れないようです。その点については、別途書きましょう。
散歩、町の変化
40歳から50歳頃にかけては、休日に運動も兼ねて散歩をよくしていたのですが。その後、何かと忙しくなり、出歩かなくなりました。天気の良い休日に、新宿紀伊國屋本店まで5キロメートル、青梅街道を、ちょうど地下鉄丸ノ内線の上を歩くくらいでしょうか。運動不足は自覚しているのですが、原稿執筆などに追われて・・・。
たまに歩くと、町並みの変化に気づきます。「あれ、こんな店はなかったよな」「前は、なんの店だったっけ」とです。近所の商店街(高円寺パル商店街とルック商店街)のお店の入れ替わりの速さには、驚きます。それだけ競争が激しいのでしょうね。古本屋もお菓子屋さんも、紳士用品店も、次々となくなっていきます。
先日の日曜に、原稿に一区切りついたので、阿佐ヶ谷の本屋「書原」まで出かけました。この本屋は、社会や人文系をはじめ、お堅い本が結構並んでいるのです。意外な発見があります。いつもは、近くの新高円寺駅前の本屋と紀伊國屋本店に行くのですが、違う本屋に行くと違った発見があります。たぶん、紀伊國屋本店にもあるのでしょうが、この本屋は余りに大きく、目につかないのでしょうね。
ところが残念なことに、書原阿佐谷店は、2月で閉店だそうです。書原は、昨年も虎ノ門の近くの店が閉店しました。町の本屋がどんどんなくなっていると報道で知りましたが、実際にそうですね。