事実の追求と国民的議論の片付け方・イギリスの独立調査委員会

18日の朝日新聞が、「イラク戦、独立調査委員会。英国式戦争のけじめ。前・現首相も公開喚問」を解説していました。次のような内容です。イギリスで、イラク戦争を検証する、独立調査委員会が開かれています。世論や野党の突き上げで、ブラウン首相が設置しました。歴史学者や元外交官ら5人で、構成されています。イギリス国会は強い調査権を持ちますが、二大政党制の下で、手順などをめぐって対立が起き、うまくいかないことが多かったそうです。そこで、政治的に中立で、一般の人から尊敬される議会外の「賢人」に調査を委ねる方式が生まれたのだそうです。もちろん、調査委員会にかけるということが、政治的意図を持つので、完全な中立はあり得ないのでしょうが、一つの知恵ですね。アメリカではニクソン大統領の時に、ウオーターゲイト事件の究明のために、特別検察官を任命したことを思い出します。政策ではありませんが、行政の検証として、日本でも、年金記録問題の調査のために検証委員会がつくられました。これについては、「行政構造改革 第二章第四節1政治の責任(2)行政組織の管理と業績の評価」で議論しました。

経済活動の基盤づくり・税制

19日の日経新聞が、「海外の稼ぎ、国内へ。企業の配当、非課税化で22%増、09年4~12月」を伝えていました。
これまでは、日本企業が海外で稼いだお金を配当として日本に戻すと、最高40%の税金がかかりました。それを避けるために、企業は現地法人に内部留保を貯めます。その額は2007年に、20兆円にもなっていました。
2009年度の税制改正で、4月から、海外からの配当をほぼ非課税にしました。すると、この記事の見出しにあるように、4~12月に海外子会社や現地法人から国内に戻ってきた配当は、約2兆円と前年同期に比べ2割増えたのです。
当時、「そんなことをしたら、税収が減る」という意見も聞きました。でも、日本に返ってこない限り、課税はできません。日本に返ってきたら、そのお金は消費に回るか、投資に回ります。それが、日本経済を活性化します。そして、その時点で課税されるのですから、税収の面から見ても、問題ありません。
このように、税制というのは、経済発展のための重要なインフラです。

新しいトラックをつくる・石井裕さん

(新しいトラックをつくる・石井裕さん)
日経新聞2月19日夕刊「人間発見」、MITメディア研究所副所長、石井裕さんの発言「出すぎた杭は打たれない」から。
・・真の競争は、100メートルを早く駆け抜けることではありません。競技トラックもストップウオッチも、競技のルールすらない原野をただ一人で孤独に耐えて走り、そこに新しいトラックをつくっていくことにあります・・

社会のリスクの変質

宇野重規東大准教授が、日経新聞「やさしい経済学」に、「個人の再発見」を連載しておられます。
・・これまでの社会では富の配分が問題になったとすれば、これからはリスクの分配こそが問題になる。このように予言したのは、ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックである。
・・ベックの念頭にあるのは、いまや階級とは関連しない社会的不平等が存在するのではないか、という問題意識である。例えば失業である。現代社会において、失業は個々の人生のある局面で、あたかも個人的な運命として訪れる。彼が例示するのは、女性にとっての離婚である。データが示すところでは、社会的出自でも学歴でもなく、離婚こそが新たな貧困への入り口になっているという。結婚や離婚は、個人にとっての私的関係の問題であ利、社会的な問題ではない。このように考えるとすれば、現代において失業を生み出すきっかけは、階級ではなく、私的関係にあることになる・・(さらに重要なことが書かれていますが、引用はこれくらいにとどめます)。
私はいま、最近の大学での講演大阪大学講演を元に、原稿をまとめつつあります。趣旨は、「社会のリスクの変質がもたらす行政の変化」です。古典的な災害、事故、戦争、病気といったリスクの分野にも、新しいリスクが生まれています。それとは別に、個人の社会関係の破綻ともいうリスクが、個人の責任から社会や行政の課題になりつつあるというのが、私の主張です。かつて、内閣官房再チャレンジ室に勤務したときに、その一端を文章にしました。「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2007年8月号。それを、社会のリスクという観点から、整理しようと考えています。

日本の法令の英語訳

法務省は、主要法令の英訳を載せた「法令外国語訳データベースシステム」をつくり、昨年4月から公開しています。現在、約200本の翻訳法令が、載っています。
日本が国際化するためには、必要なことですよね。今までなかったことが、不思議なくらいです。残念なのは、まだ200本にとどまっていることです。今後、増えていくことを期待しましょう。また、非英語圏の人のために、特にアジア各国の言葉が、必要になるでしょう。