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審議会の責任

14日の読売新聞1面から2面にかけて「検証9か月原発危機」で、放射線審議会が取り上げられています。
・・だが、同審議会の法的権限は、省庁からの諮問に対し意見を述べることに限られている。2001年の省庁再編に伴い「審議会が省庁の隠れみのになっている」として、各審議会について必要最小限の機能のみを残すことになり、放射線審議会もそれまで持っていた提言機能を失った・・
省庁改革の際に、審議会の見直しを担当しました。この記事に書かれているとおりです。審議会を、審査決定を行う審議会と、提言を行う審議会に分けました。そして、後者については省庁の隠れ蓑にならないよう、大臣からの諮問に答える以外は、提言する権限を絞り込みました。拙稿「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会)2001年2月号、7月号

行政権の責任を明確化するという観点からは、この記事の論理は、少し変ではないでしょうか。行政の責任を明確にしたので、この場合は、省庁の不作為について、「放射線審議会が提言しないからだ」と言えないようにしたのです。審議会は、あくまでも省庁の一機関です。提言が必要なら、大臣が審議会に諮問するのが筋でしょう。またメンバーが専門的知見から提言をしたいのなら、審議会という場でなく別の方法で意見を発表することも可能です。
さらに、行政が、民間人の知見を集めることは、悪いことではなく、奨励されるべきことです。それを、メンバーが固定した審議会という形をとるのか、テーマごとに大臣が意見を聞く場を設けるかは、別の話です。

アジアの社員が日本人従業員を指導する

少し古くなりますが。タイの洪水で工業団地が浸水し、日系企業も操業停止に追い込まれました。企業が生産を続けるために、タイ人従業員を日本に呼び寄せて、部品の生産を始めました。
例えば12月4日の日経新聞は、電子部品会社の例を取り上げています。そこでは、タイから来た熟練工が、日本人従業員を指導していることを書いています。1989年にタイに進出して以来、技術を蓄積していて、「日本人では量産ラインを管理できない」と、日本人社長が述べています。
労働力不足を補うために、外国人労働者の入国を増やすべきか否かの議論がありました。その議論より、現実はもっと先を行っているようです。アジア各国が、経済や技術の面で日本に追いつくことは、「日本は優秀だ」と思っていた人にとっては、少々残念なことでしょう。しかし、日本が世界と共に繁栄するためには、アジア各国と日本の経済格差が縮まることが必要です。

企業の被災地支援

経団連が、会員企業の大震災での支援実績を、まとめてくださいました。項目は、金銭寄付、現物寄付(サービスを含む)、社員等の被災者・被災地支援活動への参加、社員や消費者等への寄付の呼びかけ・マッチング、施設開放、被災地応援・風評被害対策購買活動です。ありがとうございます。

第三者委員会

企業の不祥事が続き、その事実と原因を究明するために、第三者委員会が設置されることが多いです。12月7日の朝日新聞オピニオン欄は「不祥事と第三者委員会」を特集し、8日の日経新聞経済教室は、国広正弁護士の「第三者委員会、機能の条件」を載せていました。
それによると、企業の第三者委員会は、欧米から輸入された制度ではないそうです。1998年に破綻した山一証券の調査委員会から、10数年かけてわが国独自の第三者委員会が形成されたとのことです。刑事事件になると捜査機関が捜査しますが、それは犯罪を構成するかどうかという観点であって、不祥事の原因やなぜ防げなかったかの究明までは、期待できません。また、内部調査では、客観性が確保でず、真実が究明されずに、世間の信頼が得られないこともあります。
日本弁護士連合会では、昨年「第三者委員会ガイドライン」を制定しました。弁護士が、調査委員に依頼されることが多いのです。そして、依頼者である経営側は、真実を全て明らかにされることを好みません。そこで、このガイドラインが、経営者からの圧力に対して「盾」になるのです。

また、行政機関でも、第三者委員会が設置されています。10日の読売新聞は、政府(各省)が依頼した第三者委員会の、外部有識者へ払う報酬が適正かどうかを、取り上げていました。そこに、8件の第三者委員会が載っています。原発事故、汚職、裏金問題、ヤミ専従問題などです。
このホームページでも、行政の失敗を検証することの必要性を、何度か取り上げました(2007年11月1日、2日5日など)。イギリスのイラク戦争を検証する独立調査委員会も、紹介しました(2010年2月20日)。私の関心は、行政の失敗を検証し、そこから教訓を蓄積することです。そのためには、このような検証実績をまとめる必要があります。
もっとも私の関心は、官僚の汚職などの不祥事でなく、行政の失敗や政策の失敗です。
なお、地方行政では、市民による監視として、オンブズマン制度が導入されているところもあります。

発災9か月

今日で、大震災が起きてから、9か月が経ちました。避難所に残っておられる方とホテル住まいを選ばれた合計千人あまりを除いて、33万人の方は住宅に住んでいただけるまでになりました。もちろん、仮設住宅の寒さ対策など、対応が必要なこともあります。また、原発から避難された方は、帰還のめどが立ちません。
津波被災地では、町の復興計画づくりが進んでいます。11日の読売新聞は「未来図作り、住民激論」を特集しています。