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大学教育、その社会的機能

教育が、社会の発展を支えます。優秀な労働力を提供できるかどうかは、その国が発展するかどうかを、左右します。また、教育が、社会の格差を縮小します。もちろん、生まれや財産でなく、本人の能力が発揮できる社会においてですが。そして、金持ちの子弟でも貧乏な子弟でも、平等に教育を受けることができるという社会条件も必要です。
アメリカ経済を考える。格差問題に関する米国の論点(6)」(東京財団、安井明彦さん。2015年1月27日)、「米大学卒業率、富裕層と貧困層の差が大幅拡大」(ウオールストリートジャーナル日本版、2015年2月4日)。
このようなアメリカでの議論を読みながら考えました。これらの記事では、大学卒業率が取り上げられています。しかし日本では、大学進学率はよく聞きますが、卒業率は余り議論にならないようです(間違っていたら、ごめんなさい)。それは、進学率と卒業率に、大きな差がないからでしょうか。でも、高校でも、中退や進路変更する生徒が大きな割合でいます。たぶん、大学でも同じでしょう。
すると、なぜこれまで、卒業率が議論にならなかったか。たぶん、高度成長期以降、高校進学率を上げることが、日本の一つの社会目標でした。そして高校がほぼ全入になると、大学進学率を上げることが次の目標になりました。それを、未だに引きずっているのではないでしょうか。もう一つは、大学進学が目標であって、卒業が重視されていないこともあります。各高校にとって、難関大学に卒業生を送ることは一つの「指標」です。しかし、大学にとって、卒業生の「品質保証」は、まだ十分に行われていないようです。学校ごとに、どの程度の中退率があるのか、公表されているのでしょうか。

放射線量地図

2月13日に、原子力規制委員会が、福島第一原発周辺の、平成26年9月時点の放射線量モニタリング地図を公表しました。p4の経年変化をご覧ください。事故から3年半の間に、線量の高いところ(赤や黄色)が、縮小していることがわかります。とはいえ、まだかなりの面積で、残っています。
この地図の数値は、時間当たりで、単位はマイクロシーベルトです。非常に粗い計算ですが、5倍した数字が、年間のミリシーベルトの数字と推計しています。すなわち、時間当たり3.8~9.5マイクロシーベルト(黄色)の地域が、年間20ミリシーベルト以上になります(1日8時間は、屋外でそのまま浴びる。16時間は屋内にいると、遮蔽効果がありその0.4浴びるという計算です。経産省の解説)。
また、空間線量と人体が浴びる線量とは、個人の活動実態によって異なります。先ほどの簡易な推計より、はるかに低いという報告もあります。「人年間追加被ばく量、実測値政府推計の3分の1」(2015年1月28日、福島民報)。
・・政府の推計式は1日のうち屋外に8時間滞在することを想定しているが、実際には同市の児童の場合、4時間以内が平日で97%、休日で85%だった。一律40%と想定する建物の遮蔽率は、空間放射線量が高い地域ほど高い傾向があることも分かった・・

面接、本音を聞き出す。社員がやめる本当の理由

日経新聞2月10日スポーツ欄、村井満・Jリーグチェアマンのコラム「スポーツピア」から。
・・リクルートホールディングスで人事担当役員を務め、その後、リクルートエイブリッック(現リクルートキャリア)で人材紹介、転職の支援に携わっていたので、数え切れないほど面接官をこなしてきた。面接では、相手に「実は」と言わせたら、私の勝ちと決めていた。「実は」は本音や真実を明かすときに使う言葉で、「実は子どもが3人いて、この給料では妻に反対されそうなんです」といような打ち明け話につながる・・
・・退職面談では「実は」がたくさん出てくる。その後に続く話に耳を傾けると、会社を辞める理由はたいてい本人の半径10メートル以内で起きている問題に起因していることがわかる。上司や同僚が自分を理解してくれていない、思いが通じていない。それが退職理由であり、会社にビジョンがないからとか、新しいことをやりたいからというのは、後付けであることが多い・・
詳しくは、原文をお読みください。

被災地での産業復興、40の挑戦事例

被災地で産業振興のために、新たな挑戦や課題の克服に取り組んでいる事例を取りまとめました。「新しい東北」の一つの実践です。『被災地の元気企業40―創造的な産業復興を目指すフロントランナーたち』。40の事例を、「産業復興の目標像」別、「業種」別、「所在地」別で整理しています(p8~14)。「目標別」は、次の4つです。
1 地域基幹産業の底上げ・成長(事業革新・高度化、競争力強化)
2 地産地消型・地域資源型産業の地域基幹産業への成長(需要フロンティア開拓)
3 新たな地域基幹産業の創出(再生可能エネルギー関連産業、医療福祉機器関連産業等)
4 地域の暮らしと雇用を支える産業・生業(地域生活基盤産業)の再生

40事例すべてを見るのは大変でしょうから、興味ある事例を選んでご覧ください。また、成功事例を5つ選んであります(p17)。忙しい方は、ここをご覧ください。例えば、p20の「チーム漁火(いさりび)」は、水産加工の4社(同業他社のライバル)が手を組んで、生産の効率化、新しい商品の開発と販路開拓に挑戦している例です。若手4人の跡継ぎたちが、これまでの方法では復活しないと悩み、手を組みました。p112以下には、直面した課題をどう克服したかを、分析してあります。
表紙には、40人の顔写真が載っています。産業振興の秘訣は、「核になる人」です。行政からの補助金や東京の大手コンサル会社より、地元で頑張る人によります(8日に開催した「新しい東北」×「地方創生」」パネルディスカッションでの、海士町の奥田麻衣子さん、神山町の大南信也さん、紫波町の岡崎正信さんの発言も、参考にしてください)。産業と生業の再生がないと、地域は復興しません。これらは、地方創生の先行事例です。悩んでおられる各地にとって、参考になると思います。問い合わせ先は、p121をご覧ください。