「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

止まらない公共事業

15日の朝日新聞社説は、「何のための半世紀だった」として、徳山ダム建設について次のように指摘しています。
・・多目的ダムというのに、発電の施設もなければ、水道水や工業用水を取り込む設備もないままだ。「洪水対策に役立つ」というが、それだけならもっと小さなダムでよかった。
なぜ、こんなことになったのか。時代が移り、電力や水の需要が予想ほどには増えなくなったのに、引き返すことなく、過去の計画をそのまま進めたからだ。費用と効果のバランスを考えず、役所の都合ばかりを優先した日本型公共事業の典型といえる。
発電、利水、洪水対策、さらには渇水対策。そんなふうに看板を次々にかけ替えて公共事業を守るのは、もうやめてもらいたい。そして、こんなお役所仕事が半世紀もの間、なぜ許されてきたのか。そのことも突きつめて考えたい。

アメリカ、政策の成果と世論

10月3日の朝日新聞国際面「2010アメリカ中間選挙」、立野純二記者の「縮志向の米国」から。
・・「私たちは昨年来、数々の目標を達成した。なのに、なぜ、未完の課題ばかりをあげつらう? なぜ、成功したことに目を向けないのか」。オバマ氏は8月初め、ホワイトハウスに与党上院議員を招いた昼食会で、珍しく語気を強めて敗色ムードを戒めた。
そのいらだちの矛先は、11月の中間選挙を前に議員らが神経を注ぐ世論の動向にも向けられている。歴代大統領ができなかった国民皆保険、未曾有の経済危機を起こしたウォール街への規制強化、8千億ドル(約66兆9千億円)に及ぶ景気刺激予算枠の導入など、政権が任期前半で積み上げた実績は確かに異例の規模だ。
問題は、グローバル化した経済は、米大統領にも制御が利かないことだ・・

大統領と議会のねじれ、アメリカの場合

日経新聞10月3日「世界を語る」ジャック・ウェルチ前GE会長の発言から。
・・米国では政権与党と議会を握る党が別々だった時期の方が良かった。互いに議論を戦わせる結果、よりバランスの取れた政策が出てくるからだ。(共和党の)レーガン大統領時代は議会で民主党が強かった。そこには歩み寄りがあった。(民主党の)クリントン大統領は就任して初めての中間選挙で議会を共和党に握られると、その後はともに偉大なチームをつくった。
(共和党の)ブッシュ大統領時代は議会も共和党が優位で、巨額の財政赤字を生んでしまった、一政党が動かすと、過ちを犯しやすい。今年の中間選挙で共和党が勝利して、オバマ大統領がより良い大統領になれば、うまくいく・・

国際社会の統一

ジェームズ・メイヨール著『世界政治-進歩と限界』(2009年、勁草書房)を、先日読み終えました。著者は、イギリス・ケンブリッジ大学教授で国際政治学者です。国際関係論では、アメリカが圧倒的な地位を占めていますが、それに対し、英国学派の代表的学者だそうです。
彼は、変化より継続を重視し、国際社会は冷戦の終結などによって修正はされてはいるが、根本的な変化は起こっていないことを主張します。そして、国際社会の民主化は、主張され試みられた割には、進んでいないことも。革命主義や理想主義より、現実主義(リアリスト)です。
ソリダリスト的要求(連帯主義的要求。主権国家を超えて、世界全体が立憲主義的に統一されるべき)に対して、伝統的なプルラリスト(多元主義的)価値観を支持します。主権国家の存在を、重視するのです。もちろん、手放しではなく、道徳的であるべきという条件をつけてです。近年行われた、他国への人道的介入を踏まえての議論です。
確かに、世界秩序が統一され、国際規範が「押しつけられる」ようになると、もし間違いや弊害が生じた場合に、抵抗するすべがありません。金融、経済、情報などが国際化し、どんどん主権国家を侵食しています。私は、日本では戦国時代の群雄割拠が統一されたように、また西欧でも領邦国家が次第に統一されたように、国際社会も徐々に統一されるのだと考えていました。もちろん、その道筋は簡単ではありませんが。
しかし、経済などの統一の動きと、世界秩序や国際規範の統一とは、分けて考えなければならないということでしょう。世界の安全と繁栄のために、そして全世界の人たちの幸せのために、より立憲的に国際社会を統一する努力を重ねるべきですが、その設計には慎重な配慮が必要です。

ドイツの政治

(ドイツの政治)
日経新聞連載「ドイツの未来図」9月30日の記事から。
・・9月14日、連邦議会(下院)でショイブレ財務相は、信念のように繰り返した。「ドイツは正しい道筋を歩んでいる」
2011年予算案などに航空会社や電力会社への増税策を盛り込んだ。政権公約の所得減税も凍結。ドイツ産業界の猛反発や、欧州域外での「景気に響く」との懸念は意に介さない。
5月、荒れた市場への対抗措置も強硬策だった。国債の空売り規制の強化へ、法案概要を銀行協会など約50カ所に電子メールで一斉送信。金融市場で反対論が巻き起こっても「池の水を抜くのに、何で池に住むカエルの意見を聞かなくちゃならんのだ」と黙殺した・・いつも目先より将来に目を向け、国家の「持続可能性」を意識していると自認する。
・・「社会的市場経済は世界のモデルケース」とメルケル首相が力を込めるほど、自らの経済制度に自信を持つ。経済学者オイケンの提唱に基づいて、1950年代にエアハルト経済相が確立した思想は、市場原理を尊重しつつ、政府が「経済秩序」の枠組みづくりを担うと位置づけた。それを東西統一後も、主要政党は尊重。「市場の暴走」への政府介入を当然視する・・