人事院の広報誌『人事院月報』2011年2月号が、ドイツとイギリスの幹部公務員人事を取り上げています。それぞれの人事委員会幹部を招いての、パネル・ディスカッションの報告です。そこで、大杉覚首都大学東京教授が、人事行政や公務員制度について、体系だった研究蓄積がなく、制度設計研究が必要であることを、指摘しておられます。
同感です。採用、昇進、評価、育成、退職とその後の処遇。また、幹部公務員にあっては、その任用方法や、政治家との関係をどうするかなど。公務員制度改革が長く議論になっていますが、議論の基礎となる共通の認識がないこと、議論する政策共同体が十分でないことから、百家争鳴になっているようです。公務員バッシングとも言われますが、その割には出口は見えません。
改革の目的と議論の対象者をそれぞれ明確にして議論しないと、結論が出ません。まずは、公務員一般と幹部公務員を分けて議論すべきです。そして、成果や能力による評価の議論と、スト権付与と、政官関係は、分けて議論すべきでしょう。公務員に何を求めるか、民間と何を変えるべきなのかです。
これまで「日本の官僚は優秀だ」と言われていたことから、その問題点や改革論が議論されなかったのだと思います。しかし、官僚と公務員が必要なことは、世界各国共通です。諸外国がどのような運用をしているのか参考にして、現在の日本に適したものを作ればよいのでしょう。その際に国によって違うのは、政治家との役割分担が各国の事情によって異なることや、民間での処遇や転職の状況でしょう。後者は、公務員の処遇を考える際や民間との交流、転職を考える場合に必要となります。
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行政
国際行政の進化
今後リーマン・ショックを起こさないように、国際的な金融規制が議論されています。例えば、2月13日の日経新聞は、巨大金融機関の規制を解説していました。経営破綻すると世界の金融システムを揺るがしかねない巨大金融機関を規制しようとするものです。
これまでは、各国が自国内の金融機関を規制していました。ところが、金融のグローバル化が進み、国内規制だけでは効果がなくなったのです。アメリカの投資会社(証券会社)であるリーマン・ブラザーズの倒産は、世界各国の金融と経済に大きな危機をもたらしました。詳しくは、記事を読んでいただくとして、世界政府がない現在の国際社会で、どのように国際的な規制をつくるか。国際行政の進化として、興味深いケースです。
自治体を信頼していないが信頼している?
中邨章先生が、『日経グローカル』2011年2月7日号に、「公助依存症候群の改善検討を』を書いておられます。
行政に対する信頼は、日本も西欧諸国もかなり低いです。興味深いと先生が指摘しておられることは、次のようなことです。
世界価値観調査によると、「これまで政府や自治体が提供してきたサービスを今後、どうしますか」との設問に対して、フランス、イギリス、アメリカでは、50%を超える人が「個人責任」と答えています。不信感の募る政府や自治体に依存するより、自分のことは自分でするというスタンスです。この個人責任の中身は、住民がNPOやNGOを設立し、ゴミ処理や福祉、健康に関連する課題に対応する方法をとることです。一方、日本では75%の人が「この先も福祉や保健などの対策は行政指導」と答えています。
先生は、さらに次のように書いておられます。
「行政に厳しい眼を向けながら、自助ではなく引き続き公助に依存するというのが、日本の大多数の住民意識である。日本の場合、個人責任を選択した回答は、25%を下回る低率にとどまる。そうした反応を見ると、日本の住民はわがままで、甘えが過ぎるという印象を受ける。これは、逆説的であるが、日本の地方自治体が、ほかの国とは比べものにならない、すばらしい質と量を誇るサービスを提供しているからである・・」
続きは、原文をお読みください。
また、この号には、坂本森男千葉県副知事による「地域で異なる高齢化、きめ細かな対応必要。猶予は10年、カギ握る高齢者の活用」も載っています。85歳以上人口の急増、2035年までに要介護高齢者が倍増するとともに介護不要高齢者も2,300万人から2,800万人に大きく増加すること。さらに、千葉県下でも、地域によって人口構成が異なることを、豊富な図表で解説しておられます。
政務三役の発令手続
2月10日の政務三役の発令手続は、参考になると思うので、紹介しておきます。
朝の閣議後、平野復興担当・防災大臣に、総理から復興大臣の補職辞令が渡されました。平野大臣は既に大臣になる際に、陛下から「大臣」としての認証を受けているので、認証式は不要です。担当が変わる辞令をもらいます。他方、中川大臣(防災担当)は、宮中で認証式を経なければ大臣にならないので、夕刻それを経た後、官邸で総理から補職辞令をもらいました。
同じく朝の閣議後、3人の政務官に、総理から復興大臣政務官の併任発令がされました。復興庁には専任の政務官がいないので、他の省の政務官に兼務してもらいます。その後、復興大臣から、それぞれの政務官に「岩手復興局担当」などの指示書が渡されました。
復興副大臣には、松下経産副大臣と末松総理補佐官が就任しました。松下副大臣は既に副大臣ですが、副大臣の場合は、認証の内容が「××副大臣」となっているので、横滑りの場合も、認証式が必要です。その代わり、総理からの補職辞令が不要です。
また、新内閣が発足したり、内閣改造がされる場合は、官邸の階段でそろって記念撮影がありますが、少人数の場合は総理との写真撮影になります。
政権交代のルールづくり
2月11日の朝日新聞政治欄に、「2008年度決算やっと議決」という記事が載っていました。
・・国会の混乱でたなざらしだった2008年度決算が、14日の参院決算委員会でやっと議決される・・2008年度決算は福田、麻生両政権で予算編成・執行され、政権交代後の2009年11月、鳩山政権で国会に提出された。
2010年の通常国会で審議し、議決されるはずだったが、鳩山前首相が辞任し、審議は打ち切り。昨秋の臨時国会でも閣僚の問責決議が可決され、審議が止まった。民主が「自公政権の予算に反対したから、決算も反対」との姿勢だったことも影響した。
そこで与野党の理事が海外の事例を取り寄せ、対応を検討。自民は「政権交代のたびに同じ問題が起きる。前例をつくろう」と主張。民主も将来の政権交代を見据え、「予算の執行が適法なら決算を認める」と合意した・・
こんなところでも、政権交代による民主主義の成熟が進んだのですね。