読売新聞は、5月31日から政治面で、「政策決定と科学」を始めました。そこに、イギリスの「政府への科学的助言に関する原則」(2010年3月)が紹介されています。
そのポイントは、政府にあっては、科学的助言者の学問の自由を尊重し、評価する。政策決定が助言に反する場合は、決定理由を公式に説明する。科学的助言者にあっては、科学は政府が政策決定で考慮すべき根拠の一部にすぎないと認識する。助言は、国家安全保障や犯罪助長などの理由がある場合を除き、公開する。そして、双方とも相互信頼を損なう行為をしないことです。
イギリスでこのルールが作られたのは、1990年代BSE(牛海綿状脳症)に関する科学的助言が過小評価されたとして、政府と科学者双方への不信が増したことがきっかけでした。アメリカやドイツにも、同じようなルールがあるそうです。
科学者は助言内容を自由に公表できる、しかし政策決定の際に考慮する一部でしかないことを双方が認識することです。日本でも、今回の原発事故対策や、今後の津波対策に際し、有用でしょう。
「行政」カテゴリーアーカイブ
行政
学校の保健室の役割変化
古くなって恐縮です。5月5日の読売新聞「くらし・教育欄」に、高橋香代岡山大学教授のインタビューが載っていました。養護教諭の役割変化についてです。
・・以前は病気やけがの処置が仕事の中心だったが、悩みや不安を抱えている子どもに対応する割合が大きくなってきた。アレルギーや感染症、いじめや発達障害などの子どもの健康問題が多様化し、家庭の問題を抱えた子供は増えている。理由もなくふらっと保健室に来る子の数も増えており、養護教諭の役割は重要だ・・
強い現場と弱い本部
5月16日の朝日新聞「大震災と経済」に、藤本隆宏東大教授のインタビューが載っていました。藤本先生は、日本のモノづくり現場の研究で有名です。先生は、日本の特徴を「強い現場、弱い本部(本社)」と表現しておられます。すなわち、品質が良いものを安く効率よく作るというように、目標がはっきりしている場合は、本社が目標を定め現場は目標に向かって頑張ります。しかし、目標が不明確になると、目標を定められず、弱い本部になってしまいました。
これは、行政機構にも当てはまります。欧米に追いつくという目標がはっきりしていた時は、官僚機構は効率的でした。その目標を達成し、次の目標がはっきりしなくなった時に、官僚制が効率的でなくなりました。決められたことをする職員と、次に何をするのかを考える立場の人との役割分担です。後者が、本部機能です。
記事では、「復興対策をどう評価しますか」との問いに、次のように答えておられます。
・・出張で海外に行ったが、識者の間でも、被災現場、原発事故現場に踏みとどまる人々の粘りと沈着さは高く評価される一方、官民とも対策本部の判断や発表の混乱は低い評価だった。日本の現場の強さと本部の弱さを、全世界が認識してしまったようだ・・
「復旧、復興に向けてどう改善すべきですか」という問いには、
・・高い組織力を維持している日本中の現場の力を一層活用することと、心もとなかった本部の失地回復が必要だ・・
「本部はどうすれば」という問いには、
・・本部は部門の壁の撤去が急務だ。具体的には、重要な復興テーマごとに、関連省庁・自治体から実務担当者を集めたプロジェクトチームを編成し、政府中枢に省庁横断のマトリックス組織を早急に作るべきだ。トヨタ自動車の製品開発組織、日産が復興期に使った部門横断チーム、英国内閣府のプロジェクト制など、成功例は多い・・省庁幹部間の連絡会だけではだめ・・
詳しくは、原文をお読みください。
内閣官房に置かれた組織
終わった政府組織の記録
政府では、新しい課題について、いろいろな検討組織が作られます。これらは、任務を終えると廃止されます。
現在は、それらを調べることが、容易になっています。内閣官房のホームページに「各種本部・会議等の活動情報」のページがあり、そこに「現在活動中の会議」と「活動を停止・終了した会議」の一覧が載っています。そこをクリックすると、それぞれの会議の資料を見ることができるのです。便利なものですね。私の関係した組織でも、「再チャレンジ推進会議」と「安心社会実現会議」は載っています。「省庁改革本部」は載っていないようです。これは、内閣官房でなく、内閣に直属したからでしょうか。若い人は、これらの組織を知らないでしょうね。
私の記憶では、安倍晋三内閣の時に、このページ(終了した会議)が作られたと思います。当時、内閣府に出向していて、内閣官房の職員に「こんなページを作って欲しい」とお願いしていたのです。私以外にも、問題意識を持った幹部がいたのかもしれません。
各省に置かれた暫定的組織なら、どこかの部局に引き継がれるのでしょう。しかし、内閣や内閣官房につくられる組織は、そもそもが各省に属さない、あるいは各省にまたがる課題を扱います。どこにも引き継がれない可能性が、大きいのです。さらに、ファイルに綴じられた文書も重要ですが、一般の国民や若い公務員には、インターネットの方が便利でしょう。理想的には、各組織ごとにきちんとした文書が記録され、インターネットで公表資料が残り、できれば1冊解説書があれば、便利ですね。