カテゴリーアーカイブ:政治の役割

参議院選挙、将来像を巡る議論の欠如

2019年7月3日   岡本全勝

7月2日の日経新聞経済教室「参院選で何を問うのか」は、砂原庸介・神戸大学教授の「将来を巡る対立軸 意識せよ」でした。

ヨーロッパでは生活保障と社会的投資が対立軸になっていることを紹介し、それとの対比で、日本では中長期的な政策、社会保障と国民負担、そして経済発展をどのように持って行くのかといった議論が少ないことを指摘しておられます。
また、経済活動支える「新しい中間階級」が不在であることを指摘しています。
もっとも、これは私の関心からの要約なので、砂原教授の補足説明をお読みください。

国民の怒りが動かす政治

2019年6月13日   岡本全勝

6月10日の朝日新聞別刷り特集は「怒りの正体」でした。その中から、「怒りは票になる 右翼も左翼も壮絶な「怒れる人々」の奪い合い」を紹介します。

・・・人びとの怒りをエネルギーにしようとする政治家。怒りは票になる。だがそれはうつろいやすい。左右の勢力が攻守所を変えるスペインやギリシャで、そんな怒りと政治の関係が見てとれる。

「今日の『怒れる人びと』は、極右の人びとなのかも知れない」。スペインの左派ポデモス系の前議員マノロ・モネレオ(68)は4月下旬、総選挙を前にそう話した。モネレオは元共産党幹部で、ポデモス党首のパブロ・イグレシアスも慕う。2011年5月、緊縮財政や体制に不満を募らせた若者らが首都マドリードの広場を占拠した「インディグナードス(怒れる者たち)」運動から14年のポデモス結成までを間近に見てきた人物だ。人びとの怒りはポデモス側にあったのではなかったのか?・・・

・・・移民排斥問題などで怒りや不満をあおるポピュリズムは右派の得意技だった。座視できなくなった左派も、若者や高齢者の怒りをすくい取り、一つの勢力にまとめて参加型の政治を促すことで民主主義を深化させようと戦術を転換している。政治理論家シャンタル・ムフが言う「左派ポピュリズム」だ。アプローチは異なるが、左右両派が人びとの怒りを奪い合う構図といえる・・・

民主政治が安定するのは、成長が続くとき、そして格差が広がらないときだけなのでしょうか。

マクロの産業政策とミクロの事業者支援の違い

2019年6月11日   岡本全勝

6月10日に開かれた、福島相双復興推進機構(官民合同チーム)の成果報告会に行ってきました。400人の参加者で満員でした。企業コンサルタントの方などが多いようです。
相双機構は、原発被災地の事業者を戸別に訪問し、事業再開支援を行っています。これまで約5,300の事業者を訪問し、支援しています。「再開事例の紹介

ところで、産業支援には、大きな計画をつくり、補助金や減税などの施策によって対象になる事業者を支援する方法と、このように個別事業者ごとに相談に乗る方法があります。前者がマクロ政策で、後者がミクロ政策と言ってよいでしょうか。
これまでの行政の支援は、前者が主だったようです。マクロ政策は、霞ヶ関で立案でき、方法は方向の明示とお金による支援です。それに対し、ミクロ支援は、お金の支援もありますが、相談業務が主になります。現場に行って、一つ一つの事業者の相手をしなければなりません。手間がかかります。中には、帳簿もうまくつけられない家族経営の店もあります。そこから、支援しなければなりません。

ここに、産業政策の変化、新しい形が見えると思います。
新しい産業や元気な企業を育てるには、マクロ政策で可能でしょう。そのような事業者は、自ら応募し、それらの施策を活用します。
他方で、自分ではそのような施策に応募できないような、零細な企業や、困っている事業者は、マクロ政策では支援できません。個別に、相談に入る必要があります。そしてたぶん、そのような事業者は、自らの経営のどこが悪いのか理解していないと思います。復興庁が行っている「結の場」もそうです。

これまでは、元気な事業者を育てることに重点を置いていました。しかし、弱い事業者支援も重要です。これは、日本の行政一般に言えることです。民間や国民に対して「先導者」となることと、ついて行けない企業や国民の「安全網」になることとです。
その際に、元気な者を育てる場合と、それができない弱い者の支援をする場合とは、手法が異なるのです。

政治学の最前線

2019年6月7日   岡本全勝

久しぶりに紹介します。砂原庸介・神戸大学教授による、政治学研究書の紹介です。
次々と若手研究者が、様々な分野、様々な角度から研究を続けています。とてもそれらを追いかけることは困難なので、この紹介は助かります。
ところで、これらの研究成果が、どのように政治学の教科書に反映されているのか、反映されるのか。そちらも、興味があります。

紹介されている本の中には、私もいただいたものがあるのですが。まだ読んでいないので、私のホームページでは、紹介できていません。すみません。

日本の安定した政治

2019年5月28日   岡本全勝

5月18日の日経新聞オピニオン欄、丸谷浩史・政治部長の「外国モデルなき令和の政治 ポピュリズム防ぐには

・・・安倍政権では首相と菅義偉官房長官が「移民ではない」と確認したうえで、外国人労働者の受け入れ拡大をあっさりと実現した。賃金も政府主導で引き上げている。これが外国からは「リベラルな中道政権」に映る。
主義や理念の定義はさまざまだろうが、いわゆる保守と中道・リベラルが違和感なく共存する空間が、首相官邸と自民党にはある。平成の2度にわたる政権交代があわせて4年ほどで終わった理由のひとつも、ここにある。「非自民政権」とは、自民党でないことがアイデンティティーとなる。自民党は昭和30年以来の長きにわたって政権党の座にあり、その政治手法は日本社会そのものに組み込まれている部分もあった。
「自由民主党」を全否定すると、政権運営のモデルは外国に求めざるを得ない。2009年の民主党政権は、それを英国に見いだし、政府と与党の一元化を一気に進めようとしたこともあって、つまずいた。政権奪還をはたした自民党は、民主党の失敗を教訓に、首相官邸主導や与党優位に働く小選挙区制の政治システムを、20年かけて完成形に導いたといえる。

制度は完成したと思った瞬間に綻びが生じる。強すぎる官邸がブラックボックス化し、政官関係にゆがみが生じるなどの指摘も出てきた。では、新たな改革モデルをどこに求めるのか。
幕藩体制から近代に脱却する時から、日本の政治はドイツや米国など外国の制度を参考にしてきた。平成の政治改革でモデルとなってきた英国の二大政党制は、ブレグジット(欧州連合からの英国離脱)で機能不全をさらけ出した。最近の世論調査では、支持率トップに「ブレグジット党」(Brexit Party)が躍り出た。「保守」「労働」のように理念を表す党名ではない。単一の政策争点だけを掲げるシングル・イシュー政党だ。
欧州でも政党地図は激変している。共通するのは極右やポピュリズム(大衆迎合主義)政党が伸長している事実だ。既存の政治勢力が改革を怠り、民意が離れれば、ポピュリズムが台頭してくるのは、戦前の日本も含めて歴史の教えるところでもある・・・