カテゴリー別アーカイブ: 人生の達人

企業の出社回帰

12月14日の朝日新聞東京版に「出社回帰、オフィス需要堅調 優秀な人材確保へ、立地と設備重視」が載っていました。

・・・コロナ禍で広がった在宅勤務の流れが弱まり、出社回帰の傾向が一段と強まっている。オフィスで快適に働いてもらおうと企業は、オフィスの立地や設備をこれまで以上に重視し始めている。オフィスの立地として注目が急速に高まるエリアも出てきている。

不動産大手「森ビル」(港区)が5日に発表した「オフィスニーズ調査」(主に東京23区に本社を置く企業が対象)によると今年、出社率の平均は78%で、前年より2ポイント上昇。出社率は新型コロナウイルスの感染拡大後の2021年、62%まで落ち込んだが、急速に回復している。
背景には企業側の意向があるとみられる。ロイター通信が今年10~11月、国内の企業に社員の働き方を聞いた調査では、83%の企業が「従来型の出社が望ましい」と回答。「できるだけリモートを増やすほうが望ましい」とする回答(17%)の4倍超だった。意思疎通やコミュニケーションの点から、出社を求める企業が多いとみられる・・・

ウェルビーイングの国際規格

11月21日の日経新聞に「中高年「働きがい」向上へISO規格 指標作りのヒントに」が載っていました。

・・・企業や自治体が社員や住民のウェルビーイング(心身の健康と幸福)を向上させるのに役立つ国際標準化機構(ISO)の規格がこのほど発行した。企業が指導的な役割を担う中高年の社員など向けに、仕事の意欲を高める行動計画作りの手順や効果を測る指標を考えるのに役立つ。規格に沿って取り組む企業は、人材の確保や投資の受け入れで有利になりそうだ。

ウェルビーイングは人々が身体や精神面、社会的に良い状態にあることを指す概念だ。1940年代に世界保健機関(WHO)憲章に書かれた言葉で、ここ数年は日本でもよく使われる。ただ個人の価値観は多様で、ウェルビーイングの具体的な姿は一人ひとりで異なる。そのために企業などが目標や達成する手段を設定するのが難しい面があった。
だが日本や世界では心身の病気や孤独に悩む人が増えている。WHOは2023年、うつ病に悩む人は世界で2億8000万人に達すると発表した。調査会社の米ギャラップによると世界人口の2割強が強い孤独感を抱える。特に中高年の社員は仕事の責任や加齢に伴う体の変化で体調を崩しやすい。

そこでISOは中高年の社員や住民などを念頭に、ウェルビーイングの指標作りなどに役立つガイドラインにあたる規格を作った。ISOの規格は国際的な取引を円滑に進めるために、世界で同じ品質や水準のサービスなどを提供するために作る。日本や米国、中国など約30カ国が10月に実施した投票で規格案が通過し、11月12日に発行した・・・

・・・規格は企業や自治体がウェルビーイングの向上を目指す手順を示す。まず企業の社長や自治体の首長など、議論を主導する人物を決める。次にウェルビーイングの達成度を測る様々な指標や、測り方を定める。指標は仕事への意欲や幸福感など主観的なものと、業績など客観的なタイプの両方を含む。
続いて実施する対策の効果を調べる。例えば企業ではアンケート結果などを基に社員の性格や部署との相性を人工知能(AI)で分析するツールを使い、人事面談や労働環境の改善、人員の再配置に生かす。その後に仕事への意欲がどう変化したかも調べ、次の改善策につなげる。

企業は規格の手順に従い、ウェルビーイングの向上を目指す。ポイントは主に2点ある。まずは体の健康や社員の人間関係の改善、働く意味の提示などの様々な関連分野のうちでどれを対象に選ぶかだ。次に目標に向けて適切な指標を設定することが大切だ。経済産業省が認定している健康経営に取り組む企業の事例が参考になる・・・

JR九州高速船の浸水隠し

11月7日の読売新聞に「高速船浸水隠し 安全二の次」が載っていました。

・・・JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多港―韓国・釜山港間を結ぶ旅客船「クイーンビートル」で浸水を隠蔽しながら3か月以上運航していた問題は、海上保安庁が10月に船舶安全法違反などの容疑で強制捜査に乗り出すなど波紋を広げている。背景には安全意識の著しい欠如と、親会社・JR九州のガバナンス(企業統治)の機能不全がある。同社は運航再開を目指すが、ハードルは高い。

なぜ浸水は隠されたのか――。JR九州高速船(社員約70人)が10月31日に国交省に提出した改善報告書に詳細が記された。
発端は2月12日。釜山港で船長が船首に約3リットルの浸水を確認した。報告を受けた運航管理者は「浸水量が少ないことなどから経過観察とし、関係機関へ報告は不要」と判断。安全統括管理者も「安全運航に支障はない」などと考えた。2人は船員経験が長い。
翌日、当時の田中渉社長(56)と両管理者、運航管理者代行の4人が打ち合わせをした。田中氏は両管理者から「(国に)報告すれば運航停止が必至」と聞き隠蔽を決めた。
船は1月にも浸水し、約2週間の運休後に再開したばかりだった。報告書は、田中氏の判断には予約のキャンセル対応で営業社員に再び相当の負担がかかるのを避けたいという思いもあったと記した。安全より会社の都合を優先した形だ。田中氏はJR九州の人事課長や長崎支社長などを経て2023年6月にJR九州高速船社長に就任。田中氏は今年8月13日に、両管理者は10月31日に解任された。

運航管理者は浸水が確認された翌日の2月13日、船長に外部に出さない裏管理簿に浸水量を記載するよう指示。量が増えた5月28日には運航管理者代行の指示で浸水警報センサーを上部にずらした。社長らも問題ないと判断した。
報告書によると、船長は疑義を持っても指示に従わざるを得ないと考えた。船員の多くも疑問を持っていた。2日後にはずらした警報センサーが鳴るほど浸水し、社長らは「営業運航不可」と判断。初めて浸水を把握したように国交省に虚偽報告をした。

航海士の養成経験が長い神戸大の若林伸和教授は「前代未聞で言語道断だ。航行中に亀裂が広がり浸水が急増すれば、沈没の恐れもあった。安全意識が欠如している」と非難する。14年に約300人が犠牲になった韓国のセウォル号沈没事故や、22年に26人が死亡・行方不明となった知床半島沖の観光船沈没事故に触れ、「根底にあるのは利益優先。甘い考えで悲惨な事故が起きてきた」と話す。
JR九州は16年に株式を上場。配当金支払い(昨年度は計146億円)など株主への利益還元の圧力にさらされていることが、問題の背景にあるのでは、との見方もある・・・

上司代行サービス 管理職なり手不足

11月9日の読売新聞に「上司代行サービス 管理職なり手不足 外部人材活用」が載っていました。

・・・会社の中核を担う課長や部長を外部から送り込む人材紹介の新たなサービス「上司代行」が注目を集めている。働き方や雇用形態が大きく変わる中で、管理職への昇進を断る若手社員が増えているためだ。かつては出世の登竜門であこがれの対象だった管理職に、何が起きているのか。

「上司代行」サービスを行っているのは東京都渋谷区の「Hajimari(ハジマリ)」。プロのフリーランス人材の紹介を手がけていたが、2年前から専門家を「上司」として企業に紹介するサービスを始めた。紹介先の上司に取って代わるのではなく、補佐して業務の推進や部下の育成にあたる。新入社員を指導する「メンター(教育係)」の管理職版ともいえる。
紹介する人材は大企業で新規事業の立ち上げに携わったり、組織の活性化で実績をあげたりした人ばかり。最近では大企業への紹介も増えており、中でも「代行上司に将来の管理職候補を育成してほしい」という依頼が多い。人材豊富なはずの大企業も、社外から上司を招き、将来の管理職候補の育成を委ねるほど、中間管理職の「なり手不足」は深刻になっている。
日本能率協会マネジメントセンターが昨年、従業員300人以上の企業に勤める一般社員1116人に行った調査では、77%が「管理職になりたくない」と答えている。32%は「今の仕事は楽しいが、管理職はいやだ」と答え、なりたくない理由のトップ(複数回答)は「自分には向いていないから」(52%)。以下「負荷が報酬と釣り合っていない」(30%)、「責任が重い」(26%)と続く。負担や責任の大きさから、管理職を目指す前から自分には不向きだ、と考えていることがうかがえる。

経営幹部と部下の板挟みに悩む「中間管理職の悲哀」は以前からあった。しかし、最近の管理職は、自ら現場に出る「プレーヤー」としても、部下を管理する「マネジャー」としても、以前より格段に負荷が増している。
働き方改革によって社員の残業時間は10年前の半分に減り、部下と分担していたプレーヤーの仕事を一人で背負うことが増えた。マネジャーとしてもパワハラ、セクハラに神経を使い、SDGs(持続可能な開発目標)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、コンプライアンス(法令順守)といった職場環境の変化にも対応しなければならない・・・

社員や職員と管理職に求められるものは異なります。社員や職員の全員が管理職に向いているわけではなく、また望んでいるわけではありません。
記事には、次のようなことが書かれ、諸外国との年収比較も載っています。日本の管理職の年収の低さは驚くばかりです。
・・・にもかかわらず、日本の管理職の報酬は国際的にも低い。米コンサルティング大手、マーサー社の昨年の調査結果によると、日本の一般的な管理職の年収は先進7か国(G7)では最低で、タイや中国よりも低い。マーサージャパンの伊藤実和子プリンシパルは、「終身雇用、年功序列の考え方が残る日本企業では、管理職は給与を上げなくても辞めないと見られているのではないか。忙しくなっても報酬が増えなければ、社員が管理職になるメリットを感じにくいのも無理はない」と話す・・・

英会話、拙くても自分の言葉で自分の文化を話す

11月1日の日経新聞夕刊コラム「プロムナード」、新見隆・武蔵野美術大学教授「総合芸術の夢」に、次のようなことが書かれています。

イギリスのステンドグラス作家、ブライアン・クラークとの交遊についてです。クラーク氏が来日して、新見さんと展覧会をし、大企業の重役たちに高級レストランで接待されました。共通の話題がありません。社交的なクラーク氏は、くだらない冗談にも楽しそうに相づちを打って愉快そうです。

その夜、二人でバーに行ったら、次のように言われます。
「リュウちゃん、奴らのような、最低な英語を絶対に使っちゃ駄目だぜ。日本のビジネスマンは、だからバカにされる。お前さんは文化人だ。英語は人まねじゃない。拙くても何でも自分の言葉で自分の文化を話す。それが真の文化だ」