カテゴリー別アーカイブ: 人生の達人

技能を身につける2

技能を身につける」の続きです。
学び直し(リスキリング)も、はやり言葉になっています。
何を学べばよいのか知りたくて、インターネットを検索したら「リスキリングで学ぶべきスキル10選」を見つけました。そこには、次のような技能が並んでいます。
1.マーケティングスキル 2.プログラミングスキル 3.マネジメントスキル 4.語学スキル 5.営業スキル 6.財務・経理スキル 7.動画編集スキル 8.AIやIoTなどの先端ITスキル 9.コーチングスキル 10.ビジネスライティングスキル

さて、あなたが将来の転職を考えると、どれを身に付けますか。それは、どのような方法で身に付けますか。
私は知見はないのですが、「職業人として一般的な技能」と「その職や職位に必要な技能」は別で、後者は仕事内容によって異なるのでしょう。すると、転職先を絞らないと、身に付けるべき技能は定まらないと思います。
英語を学ぶ人も多いですが、仕事で英語を使う職業でないと、身につけても教養になってしまいます。
技能を身につける3」に続く。

技能を身につける

若手官僚の職場への不満の一つに、「技能が身につかない」があります。連載「公共を創る」第157回「官僚の役割ー現状分析」で、若手官僚の悩みを紹介しました。
この人たちを対象に研修の講師をする際に、内閣人事局の担当者たちと議論して、若手官僚の悩みを整理しました。それは、「どのようにしたら良い仕事ができるか」「どのようにしたら官僚としての能力が身に付くか」といったことよりも、次の三つでした。
・生活と両立しない長時間労働がいつまで続くのか。
・従事している仕事が国家国民の役に立っているのか。
・この仕事で世間に通用する技能が身に付くのか。

ここにも、技能を身につけたいとの希望、現状では身につかないのではないかとの不満がありました。ところで、彼ら彼女らは、どのような技能を考えているのでしょうか。私の経験では、最初の5年間は仕事を覚えることで精一杯でした。そしてその後も、勉強することばかりでした。
若いうちは、与えられた仕事を覚え、さらに現状の問題点を考え、改善することを考えました。その分野の第一人者になることを目指しました。
あわせて、上司や先輩の仕事術を学びました。よいお手本もおられましたが、反面教師もいました。それは、将来自分がそのような席につくための勉強でした。

そこで得た知識と技能が、他の職場で通用するか。それは、一概には言えません。もっとも、それは官僚の世界だけでなく、企業や民間団体でも同じでしょう。「技能を身につける2」に続く。
参考「官僚で身につく技能」「東京海上日動火災保険社員の転職記」の「損保社員の市場価値

社員が増えると上司は仕事を変える

2月6日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、日高光啓に「他人に任せ、違い楽しむ」から。

ラッパー・音楽プロデューサーの日高光啓さんが2020年に設立した音楽事務所BMSG(東京・港)。着実な成長を重ね、「日本発の音楽を世界に広めたい」という日高さんの思いは一歩ずつ実現に向かって進んでいる。

――事業規模が大きくなると、トップとして目が届かない部分も出てくるのでは。
「社員は約80人まで増えました。24年4月からは『C×O(チーフ×オフィサー=各組織の最高責任者)』を配置し、経営と執行を分けています。会社が小さかったときは自分が全てを見ていて、何の仕事をどのタイミングで人に渡せばいいのかも分からなかった。社員から『もっと雑に仕事を渡してください』と言われてから、仕事を任せることができるようになりました。今では進捗報告で『こういう企画になっていたのか』と驚くこともあります」
「考えてみれば社長として5年目で、自分も日々成長しているんですね。最近は、どうしても社長である自分が会わなければならない場合など、自分がやるべき仕事に集中できています。そもそも自分の専門的な領域は意外と狭いと思っているんです。他人に仕事を任せた時に自分とは違う決断が出たとしても、違いを楽しめるところがある。自分では思いつかないような意見が出ることも多いので、面白いですね」

――会社の事業展開が軌道に乗ってきて、リーダーとしてなんらかの変化は感じていますか。
「企業としての『成長痛』は社員が10人から20人に増えるときの方が大きかったんですよ。社員10人の時は『BMSG=日高』で、僕の考えていることが100%、BMSGと一致していた。でも20人になると組織になる。そうするとルールができる。手続きが必要になる」
「今までは同僚だったのに、上司と部下という人間関係に変われば感情面でも色々とあります。僕自身に対する不平不満もたまってくるだろうし、毎日が今まで経験したことのない変化でめまぐるしかった」
「その経験から、特に何かをスタートさせるときは、ルールは走りながらつくるようにと心がけています。立ち上がったばかりのアーティストにもよく言っていますが、メンバーやスタッフも含めて、最初からルールやマナーをしっかり決めてからスタートするなんて無理。とりあえずは走ってみて、小さな失敗でも繰り返しながら決めていけばいいと思っています」

管理と運営の違い2

管理と運営の違い」の続きです。
「管理」という言葉には、内部を管理するという印象がつきまといますが、外部の変化を見ることが必要です。その要素を加えて「運営」という言葉を使いました。

もう一つ「管理」に欠けていて、「運営」に含みたい要素があります。それは、目標を掲げること、未来を見ることです。
管理でも、日々に新しい出来事があり、それに対応する必要があります。前例通りではすみません。とはいえ、「維持管理」という言葉があるように、現状維持の印象がつきまといます。
しかし、組織を継続するためには、日々の出来事に対応するだけでなく、目標を持って長期的に考えることも必要です。短期的でなく長期の目で見るのです。「蟻の目と鷹の目」「ゾウの時間とネズミの時間」です。
受動的対応と能動的対応の違いでもあります。

役所の各課には「所管」はあるのですが、「目標」が定められていないことが多いです。これも、管理と運営の違いを生む原因でしょう。

船長に例えたこともあります、船長は船員を管理しているだけでは不十分で、目的地まで船を運航しなければなりません。潮流を読み天気の変化など外部の要素にも対応して、船を進めなければらならないのです。船内を見ているだけではだめで、外を特に前を見なければなりません。
官僚には法解釈学だけでなく立法学が必要だと、私は主張しています。それに通じます。「過去の分析と未来の創造と:官僚の限界

管理と運営の違い

職場では、「管理」という言葉をよく使います。管理職、職場の管理、人事管理、業務管理など。私も、使っています。
先日、ふと思いました。「良い管理をしていたら、その組織は成果を出すのか」とです。良い管理だけでは、その組織は生き残ることができない、さらなる良い成果を上げることはできないのではないか。

管理職は、上司から与えられた課題を、預かった組織を使って成し遂げます。ところがたくさんの管理職を見ていて、管理としては十分な仕事をしているけど、物足りない管理職や、評価が低くなる管理職を見てきました。何が足らないのか。
「管理」は「与えられた任務を遂行する」ことで、あわせて内部管理の意味合いが強いです。外部環境の変化とそれへの対応が、「管理」という言葉では抜けてしまいます。言われたことしかしない、前年通りの仕事しかしないのです。

それで、「運営」という言葉を思いつきました。
運営も管理に近いですが、その組織を使って何を成し遂げるかという、戦略を考えることも含みます。その際には、その組織が置かれた環境の変化を見て、目標や組織をどのように変えていくかを考えなければなりません。管理は静的で、運営は動的です。「管理方針」と「運営方針」だと、この違いをわかっていただけるでしょうか。
良い管理だけでは、社会の変化について行けません。前年通りの仕事をきちんとしているだけでは、社会の変化に取り残されます。企業なら、新しい商品やサービスを出さないと、消費者に飽きられ、競争相手に負けて衰退するのです。もちろん、組織全体でそれを考えるのは、経営者の役割です。運営の上位に、経営があります。

役所は、市場での競争がないので、この意識が希薄です。首長や部局長からの指示を待つだけでは、不十分です。預かった組織は、次に何をしなければならないか。それを考えるのも管理職の役割です。
管理職には、「組織を運営するという意識」を持つことが必要です。内だけでなく、外も見なければならないのです。「内包と外延、ものの分析
私がこのことに関心を持つのは、社会が変わっているのに昔ながらの仕事をしている課を見てきたこと、復興庁では新しい課題に取り組まなければならないので、「管理」では不十分だったことなどからです
管理と運営の違い2」に続く