カテゴリーアーカイブ:人生の達人

『南緯69度のチーム 南極地域観測隊』

2026年1月4日   岡本全勝

知人に勧められて、原田尚美著『南緯69度のチーム 南極地域観測隊』(2025年、WAVE出版)を読みました。
原田尚美さんは、第66次では女性初の隊長を務めました。これで3度目の南極だそうです。第33次南極地域観測隊(1991年)に女性として2人目の隊員として参加、第60次では副隊長兼夏隊長を務めました。

書店の宣伝には、次のように書かれています。
「本書は、第66次南極地域観測隊において隊長を務めた著者が、日本での訓練・準備期間から、南極での活動の詳細を時系列にそってお伝えしています。
また南極地域観測隊史上、初めての女性隊長として、どのようなことに心を砕いたのか、著者自身の南極の経験とともに伝えます。隊員とのコミュニケーションにおける工夫や配慮、プロジェクトを成功に導くマネジメント、隊員一人ひとりのマインドセットなど、著者の氷の大地で学んだ挑戦と伴走のリーダーシップは、多様性が高まる組織のチームビルディングに悩む読者にもヒントとなる一冊です」

このように、南極観測の概要や基地での暮らしを紹介するのではなく、隊長が114人(うち女性は25人)の隊員をどのようにまとめて、成果を上げるように気を配るか、「管理職の苦労」が書かれています。なので、このホームページでは「仕事の仕方」として取り上げます。
観測担当、基地の運営担当、輸送担当など、さまざまな職場から集まった混成部隊です。しかも、氷点下、吹雪くと外に出ることすらできない過酷な条件、世間から隔絶された場所、休みと言っても遊びに行く場所もなし、いやだと言っても簡単には帰ることができません。各人の心身の健康に気を配り、さまざまな事件事故を乗り切り、集団としての成果を出さなければなりません。会社や役所の管理職がふだん気づかずに行っていることが、ここでは鮮明な形で見えます。

そしてもう一つは、性別固定観念との戦いです。私のような「昭和の男性」は、南極観測隊の隊員も隊長も屈強な若い男性と思い込んでしまいます。あなたは、どうですか。本書は、チームになるためのマインドセット リーダーは男性? ―固定観念はどのようにつくられるのか」から始まります。雪や寒さとの戦いの前に、固定観念との戦いがあるのです。
体験記なので難しくなく、読みやすいです。南極観測隊が、組織としてどのようなものか、関心ある方はお読みください。

祝・鎌田浩毅先生のベストドレッサー賞

2026年1月3日   岡本全勝

去年11月の話になります(このホームページの加筆ができなかったので)が、めでたい話として。
鎌田浩毅・京都大学名誉教授が、ベストドレッサー賞を受賞されました。
選考理由は、「南海トラフ巨大地震や、それに誘発される富士山の噴火を予測し、対策と減災に警鐘を鳴らし続ける地球科学者の鎌田浩毅さん。その啓蒙の手段として自身が目立つようにと開眼したファッションのため教授時代のボーナスはすべて服につぎ込み、現代アートをファッションに取り入れるのが最近のテーマだという、趣味を超え道楽とまでのめりこんだベストドレッサーです。」とあります。
紹介本の写真も、奇抜です。私には、まねができません。

企業経営陣育成の遅れ

2026年1月3日   岡本全勝

2025年10月28日の日経新聞経済教室、ニコラス・ベネシュ会社役員育成機構ファウンダーの「トップ育成の現代化急務」から。

・・・(日本企業に対する)こうした厳しい評価の背景には、最も重要な「人的資本」である経営陣・取締役層の育成プロセスが、いまもなお実効性を欠いているという現実がある。中間管理職層も同様の停滞が見られるのは偶然ではない。日本企業の構造的な問題がそこにある。

海外、特に米国では労働市場の流動性が高く、多くの従業員が複数の企業で経験を積む。異なる企業文化の中で培った柔軟性や新手法の習得はキャリア形成に不可欠である。他社に自らを売り込む必要性から、「マーケティング」「人事」「財務」といったポータブルスキルを獲得する強い動機が生まれる。このような環境が、管理職や役員の質向上につながる。
企業も従業員が最先端の知識を獲得することに積極的で、専門的な外部研修機関を活用する。従業員が長く在籍しなくても、「あの会社出身なら優秀だ」という評判が新しい人材を引き寄せる好循環を生む。こうした人事方針は企業価値の向上に寄与する。

昇進基準は年齢や国籍、ジェンダーではなく業績と能力である。多くの企業では特定の職務(ジョブディスクリプション)に必要なスキルや知識を客観的に習得したと認められなければ、昇進できない仕組みが整っている。成果の上がらない管理職は降格・解任されることもあり、必須の研修を受けるほか、自ら進んで夜間講座などから学ぶ。
社外取締役を含む取締役も同様である。全米取締役協会の2020年調査によれば、独立取締役は年間平均33時間を教育に充てていた。日本の平均の10倍以上と推測される。

一方、日本では生涯1社型のキャリアが依然として主流であり、特定スキルの習得よりも「当社のやり方」に精通することが組織風土として重視される。他社で通用しにくい「スキル」に依存することは、必然的に外部の視点を遮断することにつながり、閉鎖的な発想を助長する。
近年、ようやく日本でも中途採用市場(ミッドキャリア市場)が発展してきた。しかし管理職に関してはまだ市場が未成熟であり、企業の閉鎖性やグループ主義が依然として強いため、中途採用者の昇進が難しいことが多い。このことが、経営者育成の停滞をさらに悪化させている。
研修についても社内で済ませることが多く、財務や戦略といった経営者全員が持つべきスキル獲得への投資は、極めて少ない。外部研修を依頼する場合でも、自社用にカスタマイズされた内容か、あるいは「他流試合」の意見交換があまりないものを希望する。他社事例をケーススタディーとして取り扱っても、「自社の仕事に早く戻るべきだ」と考える上層部の意向で、短時間になりがちだ。
こうした上層部の意識を反映して、昇進基準に具体的な知識習得が含まれることもまれである。統計データからもこうした組織風土がうかがえ、日本の人材開発費は国内総生産(GDP)比で主要先進国の3分の1以下にとどまっている。
財務や戦略に関する深い専門知識は、限られた研修の機会で習得できるものではない。優れた上級管理職や取締役を育成するには、管理職を複数の職務に配置し、異なる人々と協働しながら、長年にわたって財務や戦略スキルを磨く現場経験も不可欠である・・・
・・・新任取締役は、指名される前の段階では「まだ取締役ではない」と考え学習を避け、就任後は「指名されたのだからおおむね適格だろう」と考え、その地位に安住してしまう。一部の社外取締役は責任を軽視し、「あまり時間をかけずに良い報酬が得られる」と、無邪気に就任しているケースもみられる・・・

NHK「羽田空港 空飛ぶ翼を守るプロたち」

2025年12月29日   岡本全勝

12月29日の朝8時過ぎから、NHKで「「羽田空港」完全版 空飛ぶ翼を守るプロたち」を放送していました。羽田空港で、全日空の運航指令組織を中心に、旅客機が飛んで着陸するまでを追いかけます。

問題なく進めば良いのですが。チェックインしながら、定刻に搭乗口に現れない人がいます。一度積み込んだその人たちの荷物を、たくさんの中から探し出して下ろします。その作業で、出発が遅れます。
乗務員にも、事故が起きます。出勤途中で渋滞に巻き込まれたとか、急な発病で勤務に就けないとか。機体も故障します。悪天候で着陸できず引き返すとか。そのたびに、対応を考えなければなりません。代替の機材と乗務員の手配をしなければなりません。一つの便を変えると、その機体が飛ぶことが予定されていた続きの便にも影響が出ます。どのように対応するか。その忙しさと大変さは、番組をご覧ください。

新人社員が、先輩や上司の助けを得て、育っていきます。いずれこの業務にも、人工知能が導入され、対応案の提示が行われるようになるのでしょう。しかし、どこまで機械に頼ってよいのでしょうか。人による対応は、それが訓練になっています。その「実地訓練」がなくなった場合、何か機械に処理できない事態が生じると、まったく動かないことが予想されます。最近起きたサイバー攻撃による、大手飲料会社での業務停止を思い浮かべます。

順調なときは、社員も管理職も、定例通りで仕事が進みます。能力を問われるのは、問題が起きたときです。この番組は小さな危機管理の連続として、参考になります。関心ある方は、ご覧ください。
私は途中から見たのですが、見逃した部分は「見逃し配信」を利用して見ました。みなさんも、どうぞ。

秀吉「夢のまた夢」

2025年11月27日   岡本全勝

露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢

有名な、豊臣秀吉の辞世の句です。
初めて聞いたときは、意外に思いました。あの権力者、しかも貧農から自分の力と時の運で最高実力者にまで駆け上った人でも、このような気持ちになるのかとです。
最高実力者になったからこそ、このような句が詠めたということもあります。
もちろん、師匠が手を入れたのでしょうが。

61年の人生でした。
1598年の死後2年で、天下は大阪城の豊臣氏から、江戸城の徳川氏に移り、1615年には大阪城も滅びます。
もちろん、織田信長の遺業を継いで、天下統一を成し遂げた功績は不滅です。