カテゴリーアーカイブ:人生の達人

「やめてやる~」

2025年6月25日   岡本全勝

私がまだ駆け出しの頃の話です。
仕事の後、先輩に誘われて、しばしば飲みに行きました。その席で、一人が仕事がうまくいかないことを話題にして、笑いながら「やめてやる~」と叫んでおられました。私たちも、一緒に笑っていました。
もちろん笑いながらで、その方は仕事もとびきりできて、出世されました。

知人と、最近の若い人たちが早くやめて転職するという話をしていて、思い出しました。
当時は、若くしてやめることは負けと見なされ、やめた官僚を雇ってくれるところも簡単には見つかりませんでした。転職が難しい環境で、その先輩はやめることはないので、そのような「叫び」をしておられたのです。
ところが最近では、「やめてやる」は実行されます。転職が自由な時代になって、この叫びは笑い話ではなくなりました。

具体の従業員学び直し

2025年6月22日   岡本全勝

6月8日の日経新聞に「米ウォルマート、AI時代に「脱単純労働」 30万人にリスキリング迫る」が載っていました。

・・・米小売り大手ウォルマートが毎年30万人の従業員にリスキリング(学び直し)の機会を与えていくと表明した。30万人は全従業員の15%にあたる。オンラインに販売の主軸が移り、人工知能(AI)導入を進めるなか「単純労働」はなくなると判断した。米国の最大雇用主である同社の方針は、他の企業にも波及しそうだ。

ウォルマートは4〜6日、従業員大会と株主総会、メディア説明会などのイベントを本社がある南部アーカンソー州で実施した。毎年、関係者を集め経営戦略を説明している場で今年はリスキリング計画を表明した。世界約200カ所の研修拠点に、あわせて毎年30万人分のリスキリングプログラムを導入する。
これまで店舗で荷出しや顧客対応、オンライン注文の発送作業などを担当していた従業員がリスキリングの対象だ。資格が必要な技能職への転換を促す。自動化装置の保守、空調や冷蔵などの電気機器の管理、フォークリフト操作や庭園管理などだ。

「将来すべて自動化された現場で、何に投資すべきだろう。私たちは(従業員の)皆さんに投資し、成長し続けるのを見守りたい」。ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は6日、従業員大会に集まった数万人の従業員を前にリスキリングの意義を説き、発破をかけた。
なぜリスキリングが必要か。「小売り現場の労働力は変質している。手作業の荷詰めや簡単な機械操作はもう必要ない。新しくてより高度なスキルが求められるようになっている」。RJ・ザネス副社長は、単純労働は必要なくなっていくからだと端的に説明した・・・

次の文章に納得しました。
「これまで店舗で荷出しや顧客対応、オンライン注文の発送作業などを担当していた従業員がリスキリングの対象だ。資格が必要な技能職への転換を促す。自動化装置の保守、空調や冷蔵などの電気機器の管理、フォークリフト操作や庭園管理などだ」

「学び直し」(リスキリング)という話をよく聞きますが、具体的に何をするのか。私には理解できませんでした。これから必要とされる技能、転職先で使える技能を示さないと、単にリスキリングと言われても困るでしょう。

人事担当者が見る卒業生活躍の大学

2025年6月21日   岡本全勝

6月11日の日経新聞に「人事が見る 卒業生活躍の大学ランキング 一橋大トップ 上智大2位」が載っていました。
・・・卒業生が企業で活躍している大学はどこか。日本経済新聞社と就職・転職支援の日経HRが調査を実施したところ、総合ランキングは一橋大学が首位となった。上位10校のうち8校を国立大学が占めた。採用を増やしたい大学では金沢大学が首位だった。上場企業と一部の有力未上場企業の人事担当者に、採用した学生の資質や姿勢などを聞いた。
調査は各大学の卒業生について、「行動力」「コミュニケーション能力」「知力・思考力」「成長力」の4つの分野で評価した・・・

それによると、1位一橋大学、2位上智大学、3位名古屋大学、4位京都大学、5位南山大学、6位熊本大学、7位鹿児島大学、8位東京科学大学、9位千葉大学、10位筑波大学です。東京大学は20位、慶応大学が11位、早稲田大学が16位でした。

評価項目が、「行動力」「コミュニケーション能力」「知力・思考力」「成長力」の4つの分野というのも、納得できます。

真面目だけでは評価されない

2025年6月20日   岡本全勝

6月10日の日経新聞夕刊「人間発見」、田村咲耶・MonotaRO社長の「優等生気質を超えてゆけ」第2回から。
2007年、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社したときの話です。

・・・1年目は企業をヒアリングして中期経営計画をまとめたり市場調査をしたりしました。文章の書き方や報告書のまとめ方など、上の人が最後までついて赤入れしてくれました。真面目でガッツも情報収集能力もある私は新入社員のエース的存在で、就職情報誌などにも取り上げられました。言われたことをきれいにまとめるのは得意だったのですね。

ところが2年目から評価が急落し、3年目は翻訳しか任されなくなりました。フットワークが軽くて情報は取ってきましたが、それ以上の判断や対応策などを示していなかったのです。電車で帰ることがほとんどないほど頑張ったのに評価されず、どんどん消耗していきました。
優秀な同期はプロジェクトリーダーの意図を理解した上で自分の頭で考えて仕事を進めていたのに、私は学生時代同様、量や暗記に頼っていました。ほとんどの同期がコンサルタントに昇格する中で私は昇格できません。コンサルタントとしては戦力外ということです。

いま思うと、3年目で「おまえの仕事のやり方はだめだ」と突きつけてくれたことに本当に感謝しています。真面目に良い点を取れるように頑張るだけでは、戦力になれないことを痛感したのです・・・

頑張る、社会的歴史的意味

2025年6月19日   岡本全勝

6月7日の朝日新聞オピニオン欄「「頑張る」と言う前に」、大川清丈・帝京大学教授の「能力平等観、報われぬ社会」から。

・・・「頑張る」の辞書的な意味には、忍耐と努力の要素があります。ここには、誰でもやればできるという「能力平等観」が関係しています。生まれつきの能力はあまり違わないという見方です。差があっても後から挽回でき、結果は「頑張り」次第、となります。

歴史的に見てみましょう。日本は明治期以降、立身出世の時代になります。たとえ生まれが貧しくても、頑張れば上に行けるようになりました。さらに戦後は焼け野原で、皆が平等に貧しかった。平等も、「頑張り」を生む一つの条件になります。不平等だとあまり頑張る気がしませんが、平等だと頑張る気になる。当時は食糧難という困難の共通体験があり、何とかして貧しさから脱却したい、おなかいっぱい食べたいという、国民共通の目標もあった。平等、共通体験、共通目標によって、「頑張り」が広がったと私は見ています。

指摘したいのは、「頑張り」は社会的なものでもあるということです。立身出世の時代でも、同級生や仲間同士で切磋琢磨していました。1人で頑張るよりも、頑張れ、頑張ろうと共に努力したのです。
そんな「頑張り」は高度経済成長期に浸透していきます。会社のために頑張ればそれだけ年収が増える時代だったのです。その流れが変わったのはバブル期でしょう。ぬれ手であわのように金もうけができると、まじめに働いても馬鹿を見ると感じます。さらにバブル崩壊後、今度は頑張っても報われなくなった。いわゆる格差社会です。ますます「頑張り」の基盤が掘り崩されていきます。

1995年の阪神・淡路大震災では「がんばろう神戸」が合言葉となりましたが、被災者に「頑張れ」は心ない言葉だ、とも言われるようになりました。97年ごろから三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券などが経営破綻する中、「頑張らない」というスローガンが出てきます。2000年には鎌田實さんの著書「がんばらない」もヒットしました。当時の「スローライフ」、令和の「親ガチャ」にも通じる流れでしょう。

とはいえ、「頑張り」という言葉は、今でもしぶとく残っていると思います。「頑張ります」など、皆があいさつのように言い、一種の空気を読むような言葉としても使われ続けています。これだけ価値観が多様化しても、社会を辛うじてつなぎとめる言葉の一つと考えられるかもしれません・・・