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経済

日本の個性、世界にどう売り込む

日経新聞5月5日「日本の個性、世界にどう売り込む」、工業デザイナーの奥山清行さんの発言から。
「産業空洞化など日本の製造業が急速に元気を失っている状況をどう見ますか」という問に対して。
・・機能競争が飽和し、コモディティ(汎用品)化してしまうと、日本企業にとっては厳しい。労働コストの安さだけの勝負では、中国などの新興国に勝てるわけがない。消費者が生活に必要だというニーズではなく、どうしても欲しいというウォンツ(欲求)が購買動機になる商品を作り続けるべきだ。空腹の消費者ではなく、満腹の消費者がまだ食べたいと思うものをどう生み出すかが勝負になる・・
「ものづくりで世界に勝つには何が必要でしょうか」という問に対しては。
・・想像力とビジョンだ。ものづくりが難しくなっているのは、消費者に欲しいものを聞いても答えが出てこないため。レストランでシェフから「何を作りましょうか」と聞かれても、客は魅力を感じない。自分が知らない世界を見たいと思っているからだ・・

雇用と賃金の開国

朝日新聞4月29日連載「限界にっぽん、超国家企業と雇用」は「フラット化する賃金」でした。
中国大連にあるIT企業が、日本の大手システム開発会社からソフト作りを請け負っていることが、紹介されています。そして、大連のシステムエンジニアの賃金が日本国内の半額であること、それが日本のシステムエンジニアの賃金を引き下げたり失業に追い込んでいることが指摘されています。
国際化は、カネやモノが国境を越えるだけでなく、雇用も国境を越えます。すなわち、労働者が移動しなくても、仕事を海外に発注することで、雇用が海外に流れ出します。産業の空洞化の一面です。すると賃金が「国際化」して、より安い国に引きずられます。「賃金の開国」です。
福岡県内では日産自動車の工場に、日本と韓国の両方のナンバーを付けた大型トレーラーが、韓国から部品を運んできます。「九州日産」は日産本体から分離され、給料は別体系になっています。すると今後の給与水準は、横浜の日産本社とではなく、アジアの水準に引きずられます。
記事には、2001年と2011年の正社員の年齢別賃金がグラフで出ています。10年間で給与が下がっていること、55歳以上で急激に下がることが示されています。この給与が上がらないことが、これまでのデフレの主犯であり結果です。

ネクタイの消費量半減

5月2日の毎日新聞に、「消える?ネクタイ」という記事が載っていました。
業界の調べでは、ネクタイの生産・輸入量は、1991年の5,600万本に対し、2011年は2,900万本です。半減です。うち国内生産は570万本で、1988年の4,700万本から8分の1に減っています。
私にとって、驚きの事実は次の通り。
・20年間で、消費量が半減したこと。成人男性の数は、そんなに減っていません。
・減った理由として、クールビズが挙げられています。でも、それだけでしょうか。もう一つの大きな理由は、贈答品が減ったことではないでしょうか。ネクタイは、自分で買うより、奥さんや恋人からもらうもの、取引先や飲み屋のママからもらうものが多かったのだと思います。
輸入先は、イタリアとフランスだと思っていたのですが。2011年では、中国が2,140万本、イタリアが165万本、フランスが108万本、韓国が137万本です。
・輸入に比べ、輸出はどうなっているのでしょうか。

先進諸国若者の失業

日経新聞4月14日「初歩からの世界経済」、3月23日と24日の「働けない若者の危機」から。
OECD調べでは、2013年2月の各国の失業率と若者(24歳以下)の失業率は、次の通りです。スペイン26%(若者56%)、イタリア12%(38%)、フランス11%(26%)、ドイツ5.4%(7.7%)、アメリカ7.7%(16%)。日本は4.3%(6.6%)です。スペインでは全年齢で4人に1人、若者は2人に1人が失業者です。フランスでも、若者は4人に1人が失業です。
他方で、スペインでは2012年の1月から9月までの間に、5万5千人が外国に職を求めて出ています。ドイツに移り住んだ外国人は、2012年1月から6月までの間に50万人います。
職もなく教育も受けていないニートの割合が、ドイツ9.5%、フランス12%、アメリカ14.8%です。
これでは若者は希望が持てず、社会は不安定になります。

人材は作るもの。買えばいいものではない

古くなって恐縮です(いつものことですが)。3月24日の読売新聞特集「NIPPON蘇れ」から。
パート、派遣、契約社員など非正社員が雇用者に占める割合が、1990年の20%から、2012年には35%に増加したこと。非正社員の年収が、正社員に対して3割にとどまるほか、教育訓練を受ける機会が乏しく、結婚もできないこと。非正社員から正社員に転職した割合は27%にとどまることを指摘しています。
清家篤慶應義塾長の発言から。
・・国際競争の激化や少子高齢化で労働力が不足する中、日本が活力を向上させるには、一にも二にも、付加価値の高い商品やサービスを生み出せる人材を育てることが欠かせない。
だが、現状では課題も多い。若者の間では、新卒での就職に失敗し、身分が不安定で十分な職業能力を身につけにくい非正社員として働く人も増えている・・
経済成長戦略の観点から、正社員雇用規制を緩和して労働市場の流動化を進めようという議論が、最近強まりつつある。産業構造を転換することに加え、安定した正社員と不安定な非正社員、といった二極化している現状の打開策につながるとの期待感もあるのだろう。
確かに、流動化が進めば、既に能力を身につけている人にとっては、より能力を活かせる職場に転職できるプラスの面もある。だが、能力は安定した雇用のもとで蓄積される。若者などまだ能力を身につけていない人には、マイナスになることを忘れてはいけない・・
流動化の議論の底流には、人材は「作る」のではなく、「買えばいい」という考え方があるのかもしれない・・
人材は買えばいいとの風潮が蔓延すれば、企業は自社で育てるのは損と考え、付加価値の高いモノやサービスの生産に貢献できる人材を育てる環境が失われてしまう。人の育成こそが、活力向上のカギを握ることを忘れてはならない・・