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社会

長寿社会へのコロナの影響

5月24日の日経新聞「コロナと世界」、リンダ・グラットン、ロンドン・ビジネススクール教授の「長寿社会への変革力問う」から。

・・・10年ごとに2年のペースで延びてきた平均寿命に感染拡大が影響したとしても、長寿化の大潮流は変わらない。コロナが改めて示したのは働き方や社会システムの対応が個人の寿命の延びに追いついていない現実だ。人生100年仕様への変革が急務だ。
教育、就業、リタイアという従来型の3ステージ人生と実際に現代人が生きる時間の長さにはギャップがある。重要なのは100年時代を前提にしたキャリア形成。コロナによる経済の混乱、金融市場を通じたリターン低下を考えれば、一段と長く働かざるを得ない時代も考えられる・・・

・・・高齢者の死亡率が際立つコロナは、長寿に対する後ろ向きな見方につながるかもしれない。だが年齢を重ねることと、老い衰えることは必ずしも同義ではない。
年齢の持つ意味は個人の行いや環境、国の政策次第で変わりうるということが、長寿社会でカギとなる考え方だ。コロナの重症化リスクも年齢以外に健康状況の影響が大きい。より良く年を重ねることがコロナに対するレジリエンス(回復力)を高める。コロナの存在は高齢社会と長寿に関わる課題の解決を迫るだろう・・・

「教育、就業、リタイアという従来型の3ステージ人生と実際に現代人が生きる時間の長さにはギャップがある」という指摘に同感です。連載「公共を創る」で、人生100年時代を考えているところです。「65歳で引退」とは、いかなくなると思うのですが。では、どこで何をするか。他人ごとではないのです。

毎日の食卓はハレではない

5月24日の読売新聞、料理研究家の土井善晴さん、「家庭料理は「ケ」一汁一菜でいいんです」から。
・・・新型コロナウイルスの影響で、食をめぐる風景が変わった。外食を控え、自宅での食事が当たり前になったが、料理の回数が増えて作り手の負担となっている。多くの人を縛るのは、「家庭料理はかくあるべし」という固定観念だ。食文化を見続け、日本らしい食を提案する料理研究家の土井善晴さんはもっと日本人が生きやすくなるために、「一汁一菜」というシンプルなスタイルで「食の初期化」を説く。家庭料理の世界から見た日本社会の変化と多様性について語ってもらった・・・

・・・新型コロナウイルスの感染拡大は、食生活に大きな影響を及ぼしています。自宅で過ごす時間が圧倒的に増え、特に女性が家族のために食事を作る回数が増えました。SNSでは、「大変だ」「料理なんかしたくない」という内容のつぶやきもたくさん見かけます。女性が悲鳴を上げている。それでもなおかつ「料理を作らなければならない」と思っています。
日本社会が食べることに困らなくなり、ぜいたくが当たり前になって、家庭の中まで入り込んできた。レストランで食べる料理のように、味付けや完成度までが家庭料理の基準になってしまっているのです。
昭和時代は男性が働き、女性が家を支えるという、分業ができていました。その後、女性が外で働くようになり、一層忙しくなったにもかかわらず、家庭料理というもののハードルが非常に高くなっていきました・・・

・・・日本には、民俗学者の柳田国男が言った「ハレ」と「ケ」という生活習慣の概念があります。神様に祈り感謝する祭りなど特別な状態である「ハレ」のような食事を、多くの人が毎日の家庭料理にもイメージしているのです。家庭料理は日常である「ケ」です。毎日の食卓が華やかである必要はないのです。
料理をして食べることは、生きるための基本の行為。何かに強制されたり義務感で料理をしたりするのはつらい。生きることそのものまでつらくなりかねません。
でも、自分自身が核になるものを持っていれば、自信が持てるし、もっと自由になれる。そう考えたのが「一汁一菜」という提案でした。いわば「食の初期化」。持続可能なスタイルです。
ご飯を炊いて、具だくさんのみそ汁を作る。具は何でもいい。あとは漬物。料理の上手下手もないし、作り手に男女も関係ない。ひとりでできる。簡単であるけれど、手抜きではない・・・

・・・ネットの発達で数え切れないほどのレシピやグルメの情報があふれています。情報をだれでも簡単に集められるようになった一方で、大量の情報に踊らされるようにもなりました。幾度となく繰り返される「おいしい」という言葉や、「いいね」の数は情報を均一化、単純化させている。そして私たちの感覚をまひさせている。情報に頼る依存体質になってしまっています。
2018年に私のツイッターの写真が物議を醸しました。
「いただいた赤福のあさごはん。こんでええやん」と記し、伊勢名物のあんこのお菓子「赤福」とみそ汁の写真を載せたところ、「栄養のバランスがとれてない」「健康に悪い」「正しい日本の朝食じゃない」という内容が書き込まれました。
私は「なにいうてんねん。石頭やなー(笑)。こんなんときどき言いたい。どうぞ家の中の多様性を認めてください」と書きました。
栄養のバランスは一回では判断できない。たった一回のことだけで言うなと、ちょっと面白がって反論したのですが、それぞれが「正義」を主張する。
多様性の時代と言われながらも、実際には日本は多様性が認められていないんです・・・

外出自粛、ゴミ急増

コロナウイルス対策のため、外出自粛が続いています(一部地域では解除されましたが)。家庭ゴミが増えているようです。わが家のゴミ収集車も、ふだんに比べかなり遅く回ってくる日があります。
5月22日の読売新聞夕刊に「ごみリサイクル悲鳴 巣ごもり廃プラ急増」という記事が載っていました。

・・・かつての「日常」が戻る兆しも見える中、家庭ごみの行き着くリサイクル処理施設がパンク寸前となっている。背景にあるのは、ここ1か月余りの「巣ごもり生活」で出た大量のごみだ。都市部に近い施設を中心に、食品の包装容器などのプラスチックごみ(廃プラ)が山のよう。大量の古着や古布は倉庫に眠り、家庭からの回収をストップした自治体もある。

「これ以上増えるとパンクしてしまう」。関東地方の廃プラ処理工場の男性経営者は今、焦っている。
4月の緊急事態宣言から、「ステイホーム週間」と銘打たれた5月の大型連休を経て、家庭ごみは一気に増えた。食品の容器、ポリ袋……。同工場では予定の受け入れ量を超えてしまい、保管場所に入りきらない廃プラが高さ3~4メートルほど屋外に積まれている。
工場は廃プラをプラスチック原料にリサイクルしており、土曜もフル稼働で何とか処理している。が、男性は「ごみの保管量はいつもの2倍に達し、置き場所に余裕がない。これで従業員が感染でもしたら、ダメかも」と危機感を募らせる・・・

持ち帰り弁当や総菜は、プラスチック容器に入っています。便利なのですが、ゴミが増えます。ある方(単身赴任中)が、「家飲みだと、ゴミが増えるわ」と言っていました。
外出できない機会に、家の片付けをする人も多いようです。ちょうど、衣替えの季節ですし。すると大量のゴミが出ます。

経済活動再開の順番

5月18日の日経新聞オピニオン欄、西條都夫・上級論説委員の「ウィズ・コロナ時代の備え 「命と経済」両立戦略を」に、ハーバード大学が4月に公表した「パンデミックに強い社会への道」が紹介されています。そこに、社会基盤を担う職場から順に、正常に近づけていく段取りが載っています。

・・・まず第1段階ではエッセンシャル・ワーカーといわれる、医療従事者や食品スーパーの店員、電気・水道などライフラインを担う人、警察消防など全労働者の4割にあたる人に繰り返し各種検査を実施。陽性者は公的な所得補償をした上で隔離し、職場には感染者がほぼおらず、安心して働ける環境を整える。
続くフェーズ2では、日用品の生産や食堂、公共交通など日常生活に必要な機能を提供する約3割の人に検査対象を広げ、その後は美容院など遠隔では難しいサービスに、最後にオフィスワーカーにも検査範囲を拡大する・・・

表がついています。
第1段階のエッセンシャル・ワーカーは、労働力のうち40%を占めます。第2段階の準エッセンシャル・ワーカーは、30%です。
第3段階は対人サービスが10%、第4段階のホワイトカラー労働者が20%です。

年末年始の連休などに、病院、警察、消防、交通など休みを取らずに働いている人たちがおられます。この人たちのおかげで、安心して暮らしていけるのです。この人たちが労働者のうち何割くらいになるのか、気になっているのですが。この表の分類も、一つの見方です。

金田安史・阪大副学長。コロナウイルスのワクチン開発

5月21日の朝日新聞に「ワクチン実用化、見通しは―3タイプ開発する大阪大、2氏に聞く」というインタビューが載っていました。そのうちの一人、金田安史・阪大副学長は、高校の同級生です。

記事によると、3タイプのうち1つは、来年の年明けか今頃にも、一般人が使える可能性があるとのことです。
私だけでなく、日本中、世界中が期待していますよ。