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社会

推奨されない検診

朝日新聞ウエッブ「論座」に、緑川早苗・宮城学院女子大学教授/POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)共同代表の「現在の福島では甲状腺検査を継続することは正当化されない 見直しを行わない「不作為」がもたらすもの」が載っています(3月8日掲載)。

詳しくは原文を読んでいただくとして。
・・・甲状腺がんの超音波を用いた検診に対する世界の認識は、検査開始後に出されたものではあるが、2017年のUSPSTF(米国予防専門委員会)による「症状のない成人に対して超音波による甲状腺がんスクリーニングは行わないことが推奨される」という勧告に代表される。さらにそれは2018年には世界保健機関(WHO)の外部組織IARC(国際がん研究機関)から、原発事故後であっても推奨しないとする提言が出された・・・
・・・超音波を用いた甲状腺がんスクリーニングが推奨されない理由は過剰診断による不利益(害)が非常に大きいからである。それは現在では世界の科学者の間では共通認識であろう。過剰診断とは、一生症状は出ず、命にもかかわらない病気を検診によって診断してしまうことである。後述するが、がんはその種類によっては早期発見早期治療が必ずしも患者のメリットにつながらないことが分かっており、甲状腺がんは、そうしたがんの代表である。

にもかかわらず、福島では甲状腺検査という子どもや若年者を対象にした超音波による甲状腺がん検診が継続されている。しかも多くの住民はいまだ過剰診断の不利益を知らずに検査を受けている。平均して毎日、数百人の検査が行われており、一定の確率で甲状腺がんが発見され、それらは放射線の影響とは考えにくく、かなりの過剰診断が含まれることが報告されている。
なぜ推奨されない検査が、福島で継続されているのだろうか? 一度始めた検査が変えられないのはなぜか、震災後甲状腺検査の担当者として携わった一人の内分泌内科医としての反省から、また現場からの改善の提案が様々な「不作為」の壁に阻まれた経験から、本稿ではその「不作為」に焦点をあてて考えてみる。甲状腺検査の課題の全体像を詳しく知りたい方は、拙著「みちしるべ」ご覧いただければ幸いである・・・

外国人に通じない和製英語

このホームページ定番の、カタカナ語批判です。3月20日の日経新聞別刷り「プラス1」(これもカタカナ語です)に「外国人に通じない和製英語」が載っていました。
・・・日本で生まれた和製英語は外国人に通じない。クイズで約1000人の読者に尋ね、正しい英語だと勘違いした人が多い順にランキングした・・・
順に並べます。
リフォーム、リストアップ、ライブハウス、フライング、マンツーマン、キーホルダー、アフターサービス、ワインクーラー、フライドポテト、コンパニオン。

あなたは、どれくらい知っていましたか。
このような言葉は、主にマスコミを通じて覚えるのでしょう。間違った英語を教えるマスコミの罪は大きいです。変なカタカナ語で新製品を売る企業も同罪です。新製品には、モノやサービスだけでなく、概念もあります。ソーシャルディスタンス、クラスター、SDGSとか。
カタカナ語乱造者

日本の暗黙の秩序、成長を阻害

3月6日の朝日新聞オピニオン欄「考・わきまえる」、宋文洲さんの発言「暗黙の秩序、成長の足かせ」から。
・・・「わきまえる」という日本語の定義を、私たち外国人に説明するのは難しい。「それぞれの立場(プレース)に従って」という訳し方では真意が伝わりません。「秩序(オーダー)に従って」が正確だと思います。「階級」とも言える。つまり、会社内の役職のように男女にも上下の階級があるとの前提で、「おまえの階級に合わせて物を言え」というのが、今回のわきまえる問題の本質なのでしょう。
この秩序や階級は、性別の問題に限らず明確に日本の社会に存在しているのに、外からは隠れていて見えません。なぜそのような暗黙の秩序があるのか。それは日本では、自ら社会の上下をひっくり返すような「革命」を経験したことがないためです・・・

・・・日本の戦後の高度成長は、GHQによって旧体制が一掃されたためにもたらされました。ソニー創業者の盛田昭夫氏やパナソニックの松下幸之助氏も旧体制では下っ端に過ぎなかった。でも、従来の秩序がひっくり返ったから、クリエーティブな人材が輩出し、経済も活性化したのです。しかし、秩序の根っこを自らの手で切らなかったため、効果は30年しか持たず、新たなわきまえが形成された。だからその後、経済は低成長に陥っているのです。
そのような今の日本でビジネスを成功させたいのならば、上手にわきまえたふりをすることが必要です。ベンチャーで成功したソフトバンク創業者の孫正義氏や楽天の三木谷浩史氏もそうでしょう。見た目からわきまえていない人は、周囲の支持を得られないから結果も出せません。
今こそ暗黙の秩序を壊す志の高い人が求められています。若い人は表面ではふりをしても、心では決してわきまえないで。力をつけて成功し、わきまえる必要を一切なくしてほしい。日本はもう変わらないとあきらめていましたが、今の若い人の間に、変革のマグマがたまってきている兆しも感じています・・・

自己肯定感の低さ、続き

容姿を気にする」(1月23日)の記述に、読者からお便りをいただきました。

日本人の自己肯定感の低さについて、その方の仮説は「小さい成功の積み重ねが少ないからではないか」です。
小さい成功とは、自己決定、小さな成功体験、他者による無条件の承認などです。
また、評価においても、加点方でなく減点法が多いことも挙げておられます。無条件に褒められることが少ないことは、海外で子育てをした人がよく指摘することだそうです。

容姿を気にする

1月13日の朝日新聞オピニオン欄「「ありのままの姿」って」が参考になりました。

世界調査が載っています。「自分の容姿を肯定的に受けきれていない」と回答は、多くの国が50%程度なのに、日本は93%です。
日本の若者の自己肯定感が低いことは、ほかの調査でも指摘されています。なぜなのでしょうか。連載「公共を創る」でも、この点は気になっているのですが、うまく組み込むことができていません。
「メディアの女性画像の多くがデジタル加工・修正されていることを知っている」は、世界平均が69%に対し、日本は37%という数字も載っています。日本人は素直なのでしょうか。

金敬哲さんの発言から。
・・・「ありのままで生きる」なんて、のんきなことは言ってられない。これが老若男女を問わない、今の韓国人の考え方です。韓国社会では、就職や出世の激しい競争を生き抜くために、学歴だけではなく、ルックスも有力な武器となっているからです。
韓国はもともと世界有数の「美容整形大国」でした。「整形」への偏見が少なく、ソウルの江南地区には病院が並び、「ビューティーベルト」と呼ばれています。大学に合格した娘に、親が二重まぶたの手術をプレゼントするのはよくあることです。
最近の傾向は、中年の男性客が増えていることです。ある大企業ではオーナーが代替わりしたら、年上の役員たちが目元の脂肪を取り除いたり、おでこのしわをとったりして若返りを競ったそうです。美容整形のお得意さんには弁護士や塾の先生、開業医も多く、性別は問いません。
利用者は、若い容貌が快活な印象を与え、信頼度を高めると信じています。「外貌至上主義」と呼ばれるこうした考え方が男性にまで広がったのは、1997年の通貨危機がきっかけです。多くの企業が倒産し、雇用情勢が悪化しました。国際通貨基金(IMF)などから多額の支援を受けて経済は回復したものの、財閥系企業と中小企業の待遇の差は広がり、非正規労働者も増えました。
たとえ大企業に勤めていても出世競争に敗れれば、定年前の退職を余儀なくされることも珍しくありません。先が見えない不安社会で生き残るために、誰もが「ルックスを良くしたい」と考えるようになったというわけです・・・