カテゴリーアーカイブ:政治の役割

田中拓道教授、これからの政策を考える視点

2017年12月29日   岡本全勝

12月27日の日経新聞「経済教室・社会保障の未来図」は、田中拓道・ 一橋大学教授の「政策 財政・雇用と横断的に」でした。全文を読んでいただくとして、これからの日本を考える視点として、一部を紹介します。

・・・評価のポイントとして、大きく2点が挙げられる。
第1は、財政・雇用・社会保障を横断する「パッケージ」となっているか否かである。先進国はいま、複数の領域にわたる政策転換を迫られている。グローバル化のもとで税や保険料を引き上げることは難しく、財政均衡も共通の課題となっている。
他方、労働市場と家族の変化は「新しいリスク」をもたらしている。先進国の産業が製造業から情報・金融・サービスなどの第3次産業へと移行すると、一時的な失業、短期や非正規などの不安定雇用が増大する。不安定な立場に置かれた人への支援がなければ格差は拡大する。さらに女性の就労が進むと、家庭と仕事の両立に苦しむ女性も増えていく。男性稼ぎ主型家族からの転換が進まなければ少子化のリスクが高まる・・・
・・・第2は、日本の「三重苦」への対応である。他国と比べて日本では、労働市場と家族の変化への対応が遅れた。20年にわたって政界内部で離合集散が繰り返され、場当たり的な対応が積み重ねられた結果、国の借金は国内総生産(GDP)比200%超と先進国最大の水準になった。長時間労働の是正や子育て支援も進まず、男性稼ぎ主型家族からの転換が遅れた。その結果、合計特殊出生率は20年にわたって1.5を下回るなど、少子化と高齢化に直面している。正規労働者と非正規労働者、男性と女性の格差が固定化され、不安定な暮らしに直面する若者が増えている。
少子高齢化、財政赤字、格差固定化という三重苦は、政治の不作為によってもたらされた側面が大きい。はたして今回の改革案は、こうした行き詰まりを打開するきっかけとなるだろうか・・・

・・・現政権は「安倍一強」と言われるほど強い基盤を持っている。にもかかわらず、不人気政策を含めた中長期的なパッケージを提示できないのはなぜだろうか。最後に2点を指摘したい。
第1は、将来どのような社会を目指すのかというビジョンがはっきりしない点である。安倍政権は当初、アベノミクスで3本の矢を掲げ、その1つに規制緩和を軸とした成長戦略を挙げていた。しかし規制緩和があまり進まないまま、15年以降は一億総活躍社会へと看板を変え、分配政策を重視するようになった。
税負担や財政支出を抑え、規制緩和と労働市場の流動化によって市場を活性化し、経済成長を目指すのか。それとも国民に広く税負担を求めつつ、国が中心となって子育てや就労を支援するのか。基本的な将来ビジョンが依然として不明確である。
第2に、より深刻なのは与野党間の競争の不在という問題である。10月の衆院総選挙でも、野党勢力は国内政策を軽視した合従連衡を繰り返し、消費増税凍結などの現実性の乏しい公約を掲げるにとどまった。与党の側は不人気政策を含めた政策パッケージを競う必要に迫られず、耳当たりのよい分配策を並べることで有権者の支持を獲得しようとする傾向が強まった。
社会保障とは、市民一人ひとりの生活に密着した政策であり、単なるトップダウンだけで決められるものではない。中長期的な社会のビジョンに基づく政策のパッケージが複数示され、有権者の選択を経て決定がなされるという民主主義的プロセスが機能しなければ、大胆な意思決定を行えない。今後、こうした政党間競争を実現できるかどうかが問われている・・・

政治家で見る歴史2

2017年12月26日   岡本全勝

政治家で見る歴史」の続きです。
イギリスは、伝記が重要視される国です。最近の日本は、伝記、特に政治家の伝記はあまり見かけません。児童向けの偉人伝も、かつてほどは作られないとのこと。
もちろん、政治家や偉人だけで社会の歴史が作られるわけではありませんが、彼らの行動が社会や歴史を変えることは事実です。
民主主義の時代、政党の時代になった現代では、政治家個人の判断で国政が動くことは狭まったでしょう。しかし、その制約があるが故に、選挙民を動かし、政党を導くことも合わせて、政治家の力量が問われます。

欧米では首相や大統領は、やめた後に大部の回顧録を出版します。日本語にも翻訳されています。日本では、首相経験者の回顧録も、多くはありません。
本人の回顧録も、どのような考えでそのような判断をしたのかを知るために、価値があります。本人にインタビューする、オーラルヒストリーが、それに近いのでしょう。

しかし、第三者が書いた評伝は(ヨイショの提灯持ちでなければ)、社会の側が彼をどう見ていたか、彼の判断がどのような結果をもたらしたかが分かり、もっと価値があると思います。
新聞社の政治部記者が、それを書くことに最も近い位置にいると思うのですが。

政治家で見る歴史

2017年12月24日   岡本全勝

塚田富治著『近代イギリス政治家列伝ーかれらは我らの同時代人』(2001年、みすず書房)を読みました。別の件を調べていて、たまたま見つけたのです。
16世紀末エリザベス女王の時代から、17世紀後半チャールズ2世の時代までの、国政を動かした政治家6人の簡単な伝記です。取り上げられた政治家は、クロムウェル以外は、知りませんでした。
エリザベス女王が子がなく死んだ後、平和裏にスコットランド王ジェームズを国王に迎えます。ピューリタン革命で、チャールズ1世が処刑され、クロムウェルが権力を握ります。しかし、彼の死後程なくして、王政復古になります。その歴史は、国王と国民の意識だけで動いたのではなく、政治家たちの活動が導いたものです。

歴史の教科書では、事件と王様の交代は学びましたが、その政治を動かした政治家たちの活躍までは学びません。しかし、時代は自動的に進むのではなく、経済の発展だけが社会を変えるものでもありません。王の意向、国民の意識、社会経済の変化の中で、政治家たちが舵取りをし、あるときは安定と発展をもたらし、あるときは停滞、凋落、さらには戦争や革命を招きます。

それぞれの政治家は、自らの野心や目指す政策をもって、政治に当たりますが、思うようにはいきません。国王の信頼、議会の同意、国民の支持、外国との関係、財源不足などが、彼の選択肢を狭めます。さらに、ライバルとの戦いなど、権力を維持することに時間と力をとられます。それらの人と思惑、勢力のせめぎ合いの結果が、政治なのです。歴史は、後世の人が歴史書で学ぶように、簡単には進みません。
大衆だけで政治が進むのではなく、また一人の政治家だけで進むのでもありません。複数の政治家がどのように権力を争い、政策を争い、国民や政党の支持を取り付けて進めていったか。そのような視点からの見方が重要です。
この項続く。

砂原庸介教授、国政と地方政治の関係

2017年12月19日   岡本全勝

昨日、砂原庸介教授の大佛次郎賞受賞を紹介しましたが、今朝(12月19日)の日経新聞経済教室「二大政党制を考える」で、「首長党の出現で競争激化」を論じておられました。
・・・民主党が衰退する一方で、10年代に存在感を増したのは地方自治体の首長が結成に深く関わる「首長党」ともいうべき地方政党だ。特に注目されたのが、橋下徹氏が率いて大阪府議会で過半数の議席を獲得した大阪維新の会、河村たかし氏が名古屋市議会のリコール(解散請求)の過程でつくりだし市議選で躍進した減税日本、そして小池百合子氏の下で東京都議選で大勝した都民ファーストの会だ。
これらの地方政党は日本維新の会、日本未来の党、希望の党という国政政党に関与する形で衆院選に候補者を立てた。だが野党第1党だった民主党・民進党に代わり、自民党に対抗する二大政党の一つになったわけではない。むしろ野党勢力を分裂させて、衆院選での自民党・公明党の大勝を助けたとの批判もある・・・

・・・現状を考えると、以前の民主党のように都市部で野党が育つのは難しい。乱立する地方政党は都市一般というよりも特定の自治体の利益を重視する傾向があるし、自民党が以前と異なり都市を重視する政策を打ち出していることもある。他方で、実績のない野党が安定して自民党を支持してきた農村部から支持を広げるのは困難が大きいだろう。
野党が分裂の困難を抱え自民党が大勝しやすい理由は、小選挙区比例代表並立制という選挙制度の効果だけではない。地方の政治制度が、都市部でのみ政党間競争を激化させ、農村部で自民党の優位を維持するように作用していることが大きい。自民党に対抗する野党が政党名で選挙を戦えず、それが可能な地域では首長党の参入が脅威になる。
現在の地方議員は当選に必要な得票数が少なく、それゆえに地域の個別的利益を志向しがちだ。個人ではなく、政党を単位として当選のためにより多くの有権者の支持を必要とする制度が求められる。政党が首長とは異なる地方の集合的利益を掲げ、それを軸に政党の名前で選挙を戦えれば、政党の支持基盤の安定に資するだけでなく、地方政治の活性化をもたらすだろう・・・

砂原庸介教授、大佛次郎賞受賞

2017年12月18日   岡本全勝

砂原庸介・神戸大学教授が、第17回大佛(おさらぎ)次郎論壇賞、を受賞されました。『分裂と統合の日本政治――統治機構改革と政党システムの変容』(千倉書房)です。
・・・二大政党制を目指した政治改革が行われたはずなのに、なぜ実現しないのか。本書はその原因を「地方」の政治ログイン前の続きや選挙のありようの中に探り、今の制度の中には有力な野党が育ちにくい構造があることを示した。与野党が公平に競争できる政治を目指し、改善の提言も行っている・・・
続きは、12月18日の朝日新聞をお読みください。