カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

政府の役割、峻厳さ

朝日新聞3月12日オピニオン欄「東日本大震災5年、私たちは変わったのか:5 公と私」、牧原出先生の「政治問う声、社会決める」から。
・・・「3・11」で、政府の行動に何よりも求められるのは峻厳さだと、国民は体感しました。巨大で深刻な問題に、時機を逸することなく、断固として的確に手を打たねばならないという国家の役割が国民にはっきり見えたのです。
冷戦終結後の1990年代には、物事は社会や市場で解決されるだろうという楽観的なガバナンス論が広がりました。その考えに立った最後の政権が民主党政権ともいえる。ところが2008年のリーマン・ショックでは、市場の暴走に国家がしっかり対峙すべきだという考えが浮上した。こうした考え方を、震災は押し広げました・・

政治の言葉の力

3月6日の読売新聞別刷り「皇室ダイアリー」から。
・・・(エリザベス)女王陛下の戴冠式に出席するため、陛下が初訪英した1953年当時、現地の対日感情は厳しかったが、〈チャーチル首相はじめ、知日英国人の尽力により、あからさまに感じることはなかった〉とつづられていた。
チャーチルは、陛下を歓迎する昼食会に新聞界の代表も招いた。「殿下は非常に幸福な青年だ。過去に生きず、明るい前途がある」と演説し、新時代の到来を印象づけ、かつての敵国への悪感情をあおる論調を巧みに抑えたという・・・

戦後イタリア政治

伊藤武著『イタリア現代史』(2016年、中公新書)が、勉強になりました。第2次大戦後のイタリア政治を、紹介した本です。日本と同じように、イタリアも第2次大戦で大きな被害を受け、ともに戦後復興に成功します。同じように、代議制民主主義でありながら、日本と似た点と、大きく違う点があります。内閣は短期間で交代を繰り返します。同じ首相が、何度も登板します。また、既成政党に反抗して、極右と極左がテロを繰り返します。代議政治が、国民の不満を吸収しきれないのです。
右のキリスト教民主党と左の共産党が2大勢力でしたが、ほかにも小党が乱立し、離合集散を繰り返します。社会の背景が違うと、政党や議会の機能が違うことが、よくわかります。制度を輸入しても、社会が違うと機能が違うのです。
奇跡とも言われる復興を成し遂げ、さらにファッションを中心としたブランドで繁栄します。しかし、マフィアとのつながり、南北問題(豊かな北部と貧しい南部)、腐敗した政党への批判が高まり、政治が大混乱します。その結果、キリスト教民主党と共産党が消滅します。選挙制度も変わり、1994年からは、第二共和政と呼ばれる時代に入ります。相変わらず、政権争いが続きます。政党の組み合わせだけでなく、政党内での主導権争いです。このあたりは、私たちにはわかりにくいところがあります。それでも、ベルルスコーニ首相は、通算10年も政権の座につきます。
イギリスやドイツが議院内閣制で日本に似ている、お手本だとも言われますが、案外似ているのは、イタリアです。たくさんの政治家が出てきて、日本人にはなじみのない名前も多く、その点を別にしても、参考になる本です。新書版の長所は、短い分量で、どれだけわかりやすく解説するかです。分厚い本を書くより、難しいのです。著者の力量が、問われます。

京極純一先生

京極純一先生がお亡くなりになりました。大学に入って受けた、先生の日本政治の授業は、驚きと目から鱗の連続でした。まだ、著書の『日本の政治』は刊行されておらず、その内容を授業で教えてもらっていたのです。「タテマエとホンネ」「へべれけ共同体」といった日本の政治文化は、わかりやすかったです。組織への過同調を「びっくり狸の芋姉ちゃん」を使って説明されたのを、覚えています。今なら、お叱りを受けるでしょうか。ご冥福をお祈りします。

異質な者を包み込む

朝日新聞オピニオン欄、1月13日、マーク・マゾワー(アメリカ・コロンビア大学教授)の発言「異なるものを包む欧州社会の強み、排外主義が脅かす」から。
「20世紀の欧州の歴史から、何を学ぶべきですか」という問に対して。
・・・民主主義のすばらしさよりも、その脆弱さでしょう。民主主義がもろくも崩壊し、独裁政治を許したのが、欧州の20世紀でした。だからナチス・ドイツが敗れた1945年以降、民主的な欧州をとても注意深く再建してきました。人権や自由を価値として強く意識し、人種差別をタブー視した・・
詳しくは、原文をお読みください。