カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

衆参のねじれ

参議院で野党が多数を取り、衆議院とのねじれが、新聞などで議論されています。衆議院と参議院とで、違う結論が出る。もっと端的に言えば、内閣と与党の意見である法律が通らない、ということです。
しかし、これは、憲法が想定していたことです。また、政治体制が異なりますが、アメリカでは、近年、大統領が属する政党と、上下両院の多数党が違ったときの方が多いのです。
そもそも、議院内閣制は、衆議院の多数党が内閣を組織するので、衆議院と内閣との間では、緊張関係は期待できません。最初から「談合」なのです。三権分立と言われますが、議院内閣制は不完全な分立です。
これに関して、大統領が強く、首相は弱いという説がありますが、制度的には逆です。首相は内閣とともに、衆議院を抑えているはずですから、大統領よりはるかに強いのです。あとは、運用と政党内での権力構造によります。
そうすると、内閣と衆議院(与党)を牽制するのは、参議院の役割になるのです。ここに、国会の議論が活性化します。これに対し、参議院でも与党が多数なら、政府与党案が必ず成立します。すると、国会審議より、与党内での意思決定が重要になるのです。
5日の産経新聞「正論」で、川本裕子早稲田大学大学院教授が、これに関して、次のように述べておられます。
・・こうした分裂国会の展開は、バブル崩壊以降の日本の企業経営がたどってきた道と類似する点がある。かつて日本企業の株主総会は、あらかじめ書かれたシナリオ通りに進むことが常態だったが、最近では株主が積極的に意見を表明したり、M&Aの是非や株主への利益還元を巡って投資家と経営陣が相互に論陣を張るなど、議論が活発化している。そこでは企業の真の利益とは何か、自らの考え方を理路整然と客観的な証拠で説明する能力が経営者に求められている。
また、取締役会も、以前は会社内部出身者だけで固め、上がってくる提案にラバースタンプを押している傾向が強かった。しかし、それでは組織の内向きの論理が優先されがちで、社会動向を見据えた抜本的な方針転換や、着実なコンプライアンス(法令遵守)が実際には期待できないという反省が強まった。幅広い視野から経営方針を提言する社外取締役の登用を増やし、役員のチェックアンドバランスや業績評価を強化するなど、企業ガバナンス(統治)改革により経営の説明責任を強化する動きは今後とも強まる・・
行政にあっても、いわゆる行政委員会の責任が、問われることになるでしょう。公安委員会、教育委員会、さらにはNHK経営委員会など。これまでは、教育委員長より教育長が、公安委員長より県警本部長が、前面に出ました。NHKでも、委員会から業務を委ねられている「会長」が前面に出ていました。委員会の責任は、問われなかったようです。国会審議でも、経営委員長が呼ばれることは少なく、会長が呼ばれます。このようなことも、変化が起きると思います。

過去の歴史に上書きをする

5日の読売新聞論点に、村井友秀防衛大学校教授が、「日中防衛交流の課題。軍事バランス、均衡必要」を書いておられます。本論もなるほどと思いましたが、次の主張が興味深かったです。
・・自衛隊を積極的に海外に展開すれば、平和国家日本のイメージを世界に広めることができる。冷戦後、ドイツは積極的に軍隊を海外に展開し、過去のナチス軍のイメージを「上書き」した。過去の日本軍による侵略のイメージを一掃する効果的な方法は、自衛隊の国際協力活動によって、過去の日本軍のイメージを「上書き」することである。カンボジアでは自衛隊の活動で、「日本帝国陸軍」の記憶は過去の歴史に退いた・・

公共政策の新地平

日経新聞「やさしい経済学」は、15日から、広井良典教授が「公共政策の新地平」を始められました。
・・従来の公共政策論は一般的・抽象的な政策決定プロセス論か、特定の政策領域のみに関心を向けた個別政策論のいずれかに二極化しがちであった。行政の縦割りがそれを助長してきたが、今後は政策の中身に踏み込むと同時に、異なる政策分野の関係やそれらの統合を主眼とした新しい公共政策論が求められる・・

参院選の評価

3日の日経新聞経済教室「07年参院選、何を残したか」は、飯尾潤教授の「政権選択可能な環境作れ」でした。
・・次の総選挙までに解決すべき問題が、少なくとも二つある。一つは、自民党と民主党の双方が、政権公約(マニフェスト)を改善することである・・もう一つの課題は、参院の役割の見直しである。採決になれば多数党の法案がそのまま成立することを前提に審議日程を窮屈にするとか、審議拒否をめぐる駆け引きを繰り広げる「国会日程」と呼ばれる従来型の国会運営では、物事は何も決まらない。多数決だけでなく、話し合いによる妥協といった要素を加味しなければ、衆参ねじれ時代に立法はできない・・

7月30日の東京新聞夕刊文化面は、山口二郎教授の「参院選を読む。シンボルから生活への回帰」でした。
・・今回の選挙は、自民党が陥っている深い矛盾を浮き彫りにした点でも、印象深い。一方で人々は古い自民党を解体してほしいという欲求を持っている。他方で、農家、地方の中小企業主など長年自民党を支えた人々は、地域社会や人間を顧みる温かい政治を取り戻して欲しいと願っている・・
自民党が危機を乗り越えて政権を持続するのか、それとも民主党が政権交代を実現するのかは、現在の自民党が陥っている矛盾を打開する政策を作り出せるかどうかにかかっている。透明性が高く、公正な政治手法を確立しつつ、政策内容としては地方や弱者に適切に配慮するという課題への答えを先に見いだすのはどの党であろうか。

政治の構想力

27日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」は、英国首相、権限移譲を議会に提案」でした。
・・英国のブラウン首相は7月初め、外国との改選決定権などの12の分野で、首相権限を縮小し議会の発言権を高める方針を示した。6月末に就任した新首相による議会初演説での提案で、国家のガバナンス(統治)改革に強い意気込みを示した・・
イギリスは成文憲法がなく、慣習法で憲法を構成しています。それを差し引いても、首相が議会と内閣との関係を再構築しようとするのは、たいしたものです。
「制度は人間がつくるのだ。それは政治家の仕事であり、首相の責任だ」ということです。日本では、制度を守ることが絶対善であるかのような言説もあります。それは公務員の務めであって、政治家の仕事は時代に合うように制度を作りかえることです。私はそう考えています。政治家も官僚も、構想力が勝負です。