カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

日銀、異次元緩和の評価

3月21日の朝日新聞に「異次元緩和11年目の転換1」「未達成、2%目標も好循環も」が載っていました。

・・・ 「輪転機をぐるぐる回して日銀に無制限にお札を刷ってもらう」
異次元緩和は12年末に政権復帰した安倍晋三首相(当時)の大号令で始まった。リフレ派と呼ばれる金融緩和論者たちの主張に沿った取り組みだ。しかしその構図は、日銀が国債を買い支えるという「財政ファイナンス」だった。
日銀や財務省の幹部たちは強い懸念を抱いていた。リフレで物価と賃金の好循環が生まれると、心から信ずる者はまずいなかった。むしろ、異常なマクロ政策を押し通せば、通貨円や日本国債の信認が失墜する恐れがあると案じていた。
「サイは投げられた。こうなったらやるしかない」。財務省幹部は悲壮な表情を浮かべた。

懸念はさまざまな形で現実となる。最近の輸入インフレをきっかけにした物価高や賃上げが起きるまで、異次元緩和を10年近く続けても2%インフレ目標は実現しなかった。「好循環」も起きなかった。
一方、日銀が保有する国債は発行残高の5割超まで膨れあがった。日銀の買い支えに甘え国債増発に頼り切った政権や与野党からは、財政健全化の機運が消え失せているように見える。
黒田日銀は「2年」という2%目標の達成時期を守れないだけでなく、総裁1期目の5年間でも異次元緩和を終えられず、異例の2期目も続けた。そして期限なしの長期戦へともつれこんだ・・・

大きな政策の進め方、各論優先の失敗

3月20日の日経新聞経済面コラム「大機小機」、「誤った人口減少対策の手順」から。

・・・この提言のおよそ1年前の2023年1月、岸田首相は「異次元の少子化対策」に取り組むと表明した。
この時に筆者は、政府がいよいよ人口減少問題に本格的に取り組むと期待した。ところが、その後の議論は児童手当拡充など子育て支援策とその財源手当てなどに集中し、外国人労働者を含めた労働力の確保や人口減に対応した経済・社会構造の改革という骨太の議論にならなかった。

その理由は、岸田政権が選挙をにらんで児童手当を人気取り政策のひとつとして考えていたためではないか。その結果、人口減への危機感の共有が十分に進まなかったと考えられる。
本来は今回の人口戦略会議で示しているように、まず問題意識の共有と国家ビジョンを策定してから児童手当拡充など各論に行くべきだったのに、国民にお金を配る児童手当に話が先に行ってしまった。手順があべこべなのだ・・・

自民党の派閥、その機能

3月9日の朝日新聞オピニオン欄「派閥という存在」、野中尚人・学習院大学教授の「政権まわす非公式の舞台」から。

・・・自民党でなぜ派閥が続いてきたのか。国会論戦をはじめ、ほぼあらゆる表舞台を避け、派閥を通じて政治を動かしてきたからです。自民党政治はインフォーマルな裏政治なのです。
その特徴は、意思決定のプロセスを隠そうとすることです。国会で質問されてもまともに答えない。政府内の議論も文書を残さず、文書があっても消してしまう。国会や閣議のような公式の場で議論をかわして記録を残すといった、説明責任の姿が見当たりません。

それでも政権をまわすために、もう一つの舞台が必要になります。それが派閥です。カネを配り、ポストを配分し、事前に調整して物事を決め、国会対策までやっている。まさに自民党政治の背骨であり、裏政治を支えています。本当に派閥がなくなれば、自民党は大混乱に陥るでしょう。
岸田文雄首相は、岸田派を解散すると表明しましたが、自分の言ったことが政治に何をもたらすか、意味がわかっていないのではないでしょうか。ただ、表面を取り繕っているだけのように見えます。
自民党リーダーの劣化も、派閥と無縁ではありません。有能さを厳しくチェックされることもなく、有力者に気に入られれば重要ポストを得てしまう。派閥の仕組みはわかっていて永田町ではうまく立ち回るけれど、まったく日本のためになっていない・・・

「政治家よ、言葉で人動かせ」

3月1日の朝日新聞オピニオン欄、増田達夫・開志専門職大学教授の「若者と国の未来のために 政治家よ、言葉で人動かせ」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・歴史をたどっても世界を見渡してみても、国の力の源泉は人にあり、天然資源の乏しい国はなおさらである。若者は良くも悪くも、上の世代を見て育つ。人の力は、おのずと世代から世代へと引き継がれていく。
日本の国力は落ち続けており、国の指導者たちには、このような事態の悪化を何としてでも食い止めようとする覚悟が求められる。そして、民主主義の原点に立ち、言葉の力で人を動かすことに徹しなければならない。しかし今、日本の政治家を見ると、「言葉で人を動かす」どころか、間違いを恐れるあまり原稿にしがみつく始末である。生きた言葉の魅力の前には、言い間違いなどささいなことなのに。国会の白眉といえる党首討論でさえ実に退屈な上、岸田政権では実施すらしていない。

私は、外務省と経済産業省の官僚だった時期、政治家との接点を数多く持つことができた。1970~80年代ごろまでは、自ら地位を勝ち取った一世議員も多く、大義に殉じる気概と迫力にあふれていた。パリの国際エネルギー機関に勤めていた時代や世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)参加の折にも、外国の有力政治家の立ち振る舞いを間近に見た。原稿なしで臨機応変に議論を繰り広げ、言葉の力で人を動かす姿に魅了されたものだった・・・

・・・言葉で人を動かす政治家が出てこないのは、育てるプロセスにも問題があるのだろう。この点、私が英ケンブリッジ大学在学中に経験したことは参考になるかもしれない。主要政党がわざわざキャンパスに来て、将来の候補となるべき人材を発掘する努力を粘り強く進めていた。私も保守党を支持するグループに入り、党が派遣する討論のプロの指導を受けた。仲間のうち何人かはその後、政治家の道を歩むこととなった・・・

内閣支持の理由

報道機関が、毎月、内閣支持率などの世論調査をします。例えばNHK。その際に継続的に調べられるのが、内閣支持率と各党の支持率です。

支持率の上下は気になるのですが、それとともに気になるのが、支持する理由と支持しない理由です。
NHKの3月の調査結果では、岸田内閣を「支持する」と答えた人は25%、「支持しない」と答えた人は57%です。そして支持する理由は、「他の内閣より良さそうだから」が47%、「支持する政党の内閣だから」が25%、「人柄が信頼できるから」が13%です。「実行力があるから」は6%、「政策に期待が持てるから」は5%しかありません。

政党や内閣は、政策を競い国民の支持を獲得するものと、政治学では習いましたが。この数字は、政策が置き去りになっているようです。