カテゴリー別アーカイブ: 官僚論

行政-官僚論

大部屋と雑然とした職場

月刊「論座」10月号に、林香里東大准教授が、整理整頓が行き届いた職場ほど、ワーク・ライフ・バランスの意識が高いという説を書いておられます。
日本のマスコミや官庁では、うずたかく書類が積み上げられ、その谷間で仕事をしている。一方、ドイツでは職場は整然としている。もちろん、ドイツ人にもだらしない人はたくさんいる。その理由として、ドイツでは、大臣でも記者でもパン屋さんでも、3週間の夏休みを取る。そのためには、「代理」が必要になる。すると、資料は整理する必要がある。また、代理を立てるためには、ジョブ・ディスクリプションが必要である。
日本では、大部屋で責任分担が明確でない。各人が私物化した資料が積み上がり、他者に対して立ち入り禁止宣言している状態になる。代理も立てられない。「他人をもって代え難い」が優秀さになる。
私なりに紹介すると、こうなります。我が意を得たりです。詳しくは、原文をお読みください。

給与

記者さんとの会話。
記者:先日、HPに、法学部生が官僚より外資系企業を選ぶと書いておられましたよね。
全:うん、新聞記事を基にね。
記:昨日の日経新聞に、主要企業の取締役報酬が一人当たり6,000万円、退職金除きで4,800万円と出てましたよ。今年の経済財政白書では、3,000万円を超えたと書いてありました。取締役って、官庁では審議官や局長でしょ。で、いくらくらいですか。
全:審議官で1,500万円くらい、次官で2,000万円くらいかな。
記:かなり、差がありますね。
全:新聞の数字は、大手企業だろ。公務員の給与は、民間の平均を基にしているからね。また、民間は好不況の波があるし、公務員は倒産がないという点もある。
記:でも、大学時代の友達って、みんな大企業に就職したんでしょ。
全:確かに。大学時代の友達と比べると、こんなに差があるとは知らなかった。就職時に、給与は低いとは思っていたけど、気にならなかった。国のために働くんだと。
記:こんな数字を見たら、学生は公務員になりませんよ。岡本さんが、いくら「お国のため」なんて言っても。それに、官民交流も、民間の人が公務員になろうなんて、思わないでしょうね。給料が半分になっても、公務員になろうという人は少ないでしょう。
全:そういう影響もあるか。でも、公務員の給与は民間に準じるから、民間が上がれば公務員も上がるよ。
記:まあ、そうですがね。こんな話は、HPに書かない方が良いですよ(笑い)。
全:それじゃあ、「真実を伝えない××新聞」じゃないか。ところで、おたくの社は、どうなんだい。
記:あ。今日は、これで失礼します。

外資系企業の魅力

23日の読売新聞1面「日本、揺れる経営」は、「霞ヶ関けり外資へ」でした。法学部の学生の就職希望先として、公務員の割合が低くなっているとのことです。代わって、外資系企業を選ぶ人が増えているそうです。
学生の希望先がさまざまになることは、良いことだと思います。しかし、対比するのが「外資系企業」というのは、何か変です。外資の「銀行」とか、外資の「製造業」ならわかりますが、「外資系企業」と言うだけでは、業種がわかりません。「外資系」というのはその企業の大株主が外国企業だということであって、業種ではないですよね。外資系の反対概念は、国内企業でしょう。
私が言いたいのは、外資ならどんな業種でも良いのかということです。国家公務員とトヨタと読売新聞と外資系企業(業種を問わず)を比べて、外資を選ぶというのは、いささか理解しがたい選択肢です。トヨタと日産自動車を比べて、外資系だから日産がいい、というのならわかりますが。
外資なら何でも良いというのは、日本は、外国をありがたがる発展途上国に戻ったのでしょうか。それほど日本の企業は、魅力のない職場なのでしょうか。あるいは、業種でなく外資かどうかを選択肢として記事を書く、新聞がおかしいのでしょうか。

西尾勝先生の公務員制度改革の道筋

東大出版会広報誌「UP」8月号に、西尾勝先生の「公務員制度改革の道筋」が載りました。
・・いま早急に国民的合意を形成しなければならないのは、まず民と官の異質性をどこまで是認するのかしないのか、である。公務員給与が高すぎるとする批判・・をみていると、この国の世論は民と官の異質性を認めようとはせず、むしろ両者間の徹底した同質化を求めているように感じられる。そうであれば、官の世界にのみ課してきた労働基本権の制限も政治活動の自由も撤廃すべきである。ついで「キャリア・システム」を公式に承認するのか、それともこれを廃止させるのか、である。これを廃止させるのであれば、これに代わる幹部公務員の選抜養成制度を再構築しなければならない。第三に、国家公務員の任用権者を各省大臣とし、国家公務員の採用を各省別にしている現行制度を維持するのか否かである。これこそ、省庁ごとの強固なセクショナリズムと外郭団体・関連企業との癒着構造とを支えてきた基盤だからである。要するに、まずは公務員制度改革の全体像を描き、ついで改革の工程表を慎重に設計し、その上で改革に着手して欲しかった・・
・・もう一つの問題は、「政治任用」の余地をどの程度まで拡大するのか、である・・私は、資格任用と自由任用と政治任用という三つの概念を明確に使い分けることを提案している・・各省庁の審議官級(または局長級)以上の職位の任用権者を各省大臣から内閣総理大臣に変えるとともに、これらの職位を自由任用職に変えるだけで十分に達成されるのではないかと思われる・・

民について行けない官

今日は夕方から、御手洗経団連会長に、ご説明。そのあと引き続き、キヤノン本社での夏祭りに、参加させてもらいました。それなら、フルートを持って行ったのに。「そんな、周りに迷惑な」と、おっしゃる方もおられるでしょう。でも、5,000人もおられるから、端っこで吹いていても目立たなかったでしょう(笑い)。
キヤノン本社伊藤忠本社(丹羽会長)に行くたびに、わが官庁の建物の貧弱さを痛感します。もちろん、向こうさんは世界で活躍する企業、業績を上げておられる企業です。当方は、その納めていただいた税金で食っている官庁です。しかし、世界第二位の経済大国の官庁が、こんなに天井が低く、執務室も狭く、廊下には資料が山積みされているの見ると、情けなくなります。歩いている職員はサンダル履きだし、雨の日は廊下に傘を干す人もいるのですよ。とほほ。
私ごときが説明に行っても、会長がエレベータまで送ってくださいます。もう恐縮して、恐縮して。翻ってみると、役所は、相手を呼びつける、廊下で待たせる、お見送りはしない。反省してます。