カテゴリー別アーカイブ: 官僚論

行政-官僚論

公務員制度改革

東京新聞10日の「時代を読む」は、佐々木毅先生の「公務員制度の眼目とは」でした。「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の最終報告」についてです。
・・・最大の注目点は、内閣人事庁の設置である。この組織は、国家公務員の人事制度の運用とその在り方について、国民に対して説明責任を負う国務大臣をトップに頂く組織である。これまで国家公務員の人事管理体制は、人事院や総務省、財務省などにその権限が分散し、結局のところ、誰が管理責任を負うのかがはっきりしない「顔のない」体制であった・・

民間企業の官僚制

17日の日経新聞夕刊「サラリーマン生態学」江波戸哲夫さんの「官僚主義」から。
・・名経営者たちの「自著」を集中的に読んでいたが、彼らの大半は社内にはびこる官僚主義にぶち当たっている。リー・アイアコッカは、クライスラーの社長になってすぐ経理部スタッフに訊ねたが、どうしても個々の業務の責任者を知ることができず「誰も責任を取るものがいない」と唖然としたという。
武田薬品の武田国男が課長になったとき、過去の事業の失敗の原因を調べようとしたら、スタッフは皆「当時の担当者は誰もいません」と知らぬ顔を決め込んだ。信越化学工業の社長となった金川千尋は、人事部門の官僚主義を叩き直すため、ルーズな前例に従い600人もの新規採用を提言してきたのを、ほとんどゼロにした・・・。
官僚主義についてユニクロの柳井正が簡潔な分析をしている。「会社組織は、その会社の事業目的を遂行するためにある。一旦、組織ができあがってしまうと、今度はその組織を維持するために仕事をしているようにみえる」・・

予言、批判、結果

13日の日経新聞連載「YEN漂流」「それでも為替は動く」から。
・・1971年7月。当時42歳だった東京大学教授小宮隆太郎は仲間の経済学者35人とともに、1ドル=360円で固定していた円相場を小刻みに切り上げる為替政策の抜本改革の提言をまとめた。
この提言は、政府・経済界から大きな批判を浴びる。大蔵省は「基礎的不均衡はなく、調整の必要はない」とする反論を発表・・その1か月後、米政府は金・ドルの交換の停止を発表、これを機に固定相場制度は崩れ、日本は「海図なき公開」に放り出される。
85年7月。東海銀行調査部長だった水谷研治は、行内で「要注意人物」に指定された。「1ドル=150年の世界」。当時の円相場は250円前後。水谷は調査リポートで、経済実態と乖離した相場に疑問を投げかけた。これに、主要取引先のトヨタ自動車が猛抗議した。頭取から呼び出された水谷は、「君は本当にこの相場が実現すると思っているのかね」と詰問された。その2か月後、プラザ合意で日米欧当局はドル高是正を打ち出し、円高・ドル安が急激に進行する。
小宮と水谷、いずれの予言も、すぐに現実になったり、現実がさらに先に行くのだが、最初は激しい批判にさらされる・・
時代が変わるときには、大胆な予測が実現します。私は、その予測を批判した人の責任が気になります。「思いもつかなかった」などという、反省の弁がでるのでしょうか。上に立つもの、自戒しなければなりません。

官僚制、無責任の体系

大連載「行政構造改革」で、官僚の欠点を考えています。思い出して、丸山真男先生の「軍国支配者の精神形態」(1949年、『増補版 現代政治の思想と行動』1964年、未来社所収)を、引っ張り出しました。
それは、官僚制の無責任です。丸山先生は、東京裁判(極東軍事裁判)で被告人(太平洋戦争の指導者)の発言を分析し、首相や大臣など戦争指導者の指導力と責任意識の欠如について、「無責任の体系」と名付けました。
それは、「既成事実への屈服」と「権限への逃避」によって、成り立っています。前者は、「既に始まってしまったことだから仕方ない」といって、既成事実に流されることです。これは、方向転換できない官僚制の欠点と、同じと言っていいでしょう。
後者は、「法規上の権限はありません」「法規上困難でした」といって、専門官僚に逃げ込むことです。官僚制あるいは官僚的行動が無責任に陥った、最大の実例です。
そこではまた、国策の最高方針を決定する御前会議や最高戦争指導会議などの、討議の空虚さも指摘されています。そこでの討議内容は、あらかじめ部下である軍人官僚によって、用意されているのです。
もっとも、この事例は官僚制の欠点ではなく、政治家と軍人が官僚的に行動したものです。

日本衰退の犯人

日経新聞経済教室は、3日から「08ニッポン再設計」を始めています。4日は、堺屋太一さんの「満足向上へうち弁慶排せ」でした。
・・そんな中で改革が進まないのが日本だ。官僚主導の規格化と計画化で発展した日本は、かつて「最も成功した社会主義国」と揶揄されたが、このままでは「もっとも後に滅ぶ社会主義国」になりかねない。
今世紀に入ってからの日本の相対的衰退は著しい。その原因の第一は、官僚倫理の退廃だろう。・・07年には官僚の失敗が噴出した。こららに共通しているのは、「省益あって国益なし」といわれる官僚機構の仲間共同体化、罰則反省なしの無責任体制、国民の手間と不便を何とも思わない効率思想の欠如、そして幹部官僚の政治家回遊癖だ。
日本の官僚制度は、規格大量生産の近代社会を創るためには有効に働いた。しかし、知価創造が必要な知価社会では機能しない・・