カテゴリー別アーカイブ: 官僚論

行政-官僚論

8月は休めない

職員との会話です。
職員A:夏休みを取って、良いですか?
全勝:もちろん。ところで、何日休むの?
職員A:3日です。
全:だめ。そんな短いのでは。1週間は、休みなさい。

全:あんたは、夏休みを取ったの?
職員B:いいえ、今は予算要求の時期ですから。統括官だって、休んでいないじゃないですか。
全:ごめん。

今は8月。世間では夏休みで、家族旅行なども多いと思います。ところが、霞ヶ関では、その世間の常識に反した(?)仕事のスケジュールが、永年続いています。
例年7月に、翌年度の予算要求の基準(いわゆるシーリング)が示されます。それを受けて、8月末に各省から予算要求書が、財務省に提出されます。今年は、8月17日に基準が示され、要求締め切りは9月7日です。
すなわち、要求する側の各省は、7月と8月は、来年に向かって予算要求書を作り・とりまとめる「真っ盛り」なのです。各課で原案を作り、局で調整し、さらに各省で調整します。そして、与党との調整も必要です。で、結局予算に関係する職員は、休めないのです。
代案は例えば、提出期限を9月末にしてもらって、予算査定は10月から。というようになれば、みんな休めるのですが。

民間から見た行政と官僚

今日は始業前に企業の方と、放課後にはNPOの方と、意見交換をしてきました。というか、外(民間)から見た、復興や官僚のあり方について、ご批判を頂く会でした(笑い)。それぞれ行政と関わりがあり、問題意識を持っておられる方からの「苦言」なので、きついですが、会話が成り立つのでその点では楽でした。
いくつかの指摘について、「それは私の責任ではありません」と言い訳したいところですが、この歳、この立場になると、そうもいかず。変な言い訳をするより、私が思っている「行政の悪い点」「官僚の欠点」を説明しました。
当然、向こうさんの反応は、「じゃあ、全勝さんはその欠点をどう変えるのですか」という突っ込みです。「復興に関しては、今まさに努力中」「官僚制については、時間ができたら論文を書いて、世に問います」としか答えられませんでした。
異業種の方との議論、そして中には初対面の方がおられ、これはいささか緊張する場面でした。どのように説明したら、理解していただけるか。初めての方は、その程度がわからないので。しかし、外からの批判は、勉強になります。

人事評価の季節

3月末。官庁では、人事評価の季節です。半年に一度、各人が目標を立て、申告する。半年後に、それを自己評価するとともに、上司が達成度を評価します。
私は、評価という行為とともに、部下と上司が、目標や何が欠けているか何を期待しているかを共有する、良い機会だと考えています。「2011年9月26日の記事」をお読みください。
私の経験でも、案外、意思疎通できないことがあり、驚きます。「言わなくてもわかるはずだ」とか、「ふだんからコミュニケーションをしているから、私は大丈夫。一緒に飲みにいっているし」は、通じませんよ。
優秀な部下と上司の場合は、問題ありません。部下が「私の上司は指示があいまいで、良くわからない」というような場合。上司が部下に対して「彼は期待通りの仕事をしてくれない」といった場合に、この「目標設定」「事後評価」そしてそのための「面談」が有用です。
期待する水準に達していない部下を導くこと。これが重要です。ボーナスに差を付けることだけが、主要な目的ではありません。
さらにその上の上司になると、もう一つの効用が付け加わります。例えば、課員AさんとBさんの評価を、課長Cさんがします。それを局長Dが見ているとします。C課長はA課員とB課員を評価しているのですが、その評価ぶりをD局長に評価されています。
D局長から見ると「C課長は、Aさんをこのように高く評価し、Bさんを低く評価している。Bさんの方が良く仕事ができるのに、相性が合わないのか、見る目がないのかなあ。一度探ってみる必要があるなあ」と。

民主主義の機能不全・日本の場合

日経新聞・経済教室は2月22日から「民主主義の機能不全」を連載していました。24日の、スティーヴン・ヴォーゲル教授の主張から。
・・日本の場合、筆者はさらに2つの処方箋を提案したい。両者は相矛盾するようにみえるかもしれないが、うまくいけば並行的に機能するはずだ。それは官僚の権威の回復と政党間競争の促進である。
日本の経済政策が90年代以降に一貫性を欠き効果を失った原因を問われたら、筆者は政党再編など政治の変動よりもむしろ、官僚の自信と正統性が失われたことを挙げたい。戦後期の巧みな経済政策を立案し実行してきたのは、結局のところ政治家ではなく官僚だった。かつての日本の官僚は公僕として強い職業倫理を持ち、短期的な政治の圧力からもある程度遮断されていた・・
その一方で日本は、政策論議に関しては、政党間の真剣な競争から得るものが大きいと考えられる・・
詳しくは、原文をお読みください。

私は、日本の官僚機構は、かつては効率的であったが、成熟国家においては、従来のままでは機能不全に陥り、変化しなければならないと考えています。よって、教授の説に全面的に賛成はしませんが、政治家と官僚がそれぞれ役割を果たすべきであるという点は、賛成です。もっとも、こう言ってしまえば、平板ですね。

政府に入った研究者からの苦言

1月28日の読売新聞「編集委員が迫る」は、知野恵子編集委員の「中村祐輔東大教授、医療推進室長辞任の理由」でした。2011年1月に内閣官房・医療イノベーション推進室長に就任した中村教授が、1年で辞任したことについてのインタビューです。

教授は日本の医療産業について、危機的状況だと指摘しておられます。
・・まず、新役作りが遅れている。例えば、ガン細胞だけを攻撃する「分子標的治療薬」という抗ガン剤がある。これまで世界で20種類以上開発されたが、日本製のものは一つもない。医薬品の輸入も急拡大しており、2011年度は1兆3600億円の赤字になった。日本の貿易赤字の半分以上に相当する。心臓ペースメーカーなどの治療用医療機器も外国製品ばかりだ。
大学などの研究水準は世界的に見ても高い。しかし、その成果を実用に結びつけ、産業として開花させる国家戦略がない。背景には、省庁間の縦割りがある・・

改革できなかったことについては。
・・未来につながる医療復興案を提案した・・しかし、霞ヶ関の役所からは無視された。
役所は全て根回しで動かしていく。落としどころを考えながら話し、少しずつ積み上げていく。私にとって最も不得手なことだ。それに霞ヶ関の発想は、予算の枠に縛られている。将来を見すえて、必要なものに優先度をつけることもしない。
・・官僚は視野が狭く、来年の予算を確保することしか考えない。10年後、20年後を見すえて政策を練るような人はまずいない。政治家も、政局が不安定な中、誰も責任を持って意思決定をしない。研究者も論文を書くことが目標で、時間と手間がかかる薬作りに本気で取り組もうとしない・・

研究者に政府に入ってもらうことについて、知野編集委員は、次のように述べています。
・・今回の原因を分析し、教訓を引き出さないと、同じことを繰り返す懸念がある・・
記事のごく一部だけを引用紹介したので、詳しくは原文をお読みください。