カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第168回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第168回「政府の役割の再定義ー日本の経済と働き方の特徴」が、発行されました。

行政機構の目標と評価について、官僚の説明責任を論じています。官僚ももっと自分たちの仕事を記録して、公表すべきだということです。私が素晴らしいと感じた著作を挙げました。一つは、黒江哲郎・元防衛事務次官の「防衛事務次官 冷や汗日記 失敗だらけの役人人生」です。この本については、このホームページでも紹介しました。
もう一つは、大村慎一・前総務省新型コロナ対策等地方連携総括官兼地域力創造審議官の執筆による「新型コロナウイルス感染症対策に関する地方連携推進の取組」です。これについては先月紹介したばかりです。

続いて、日本の経済発展と停滞の原因が日本型の職場慣行にあるとして、その説明をしています。日本の経済力、生産性の低さ、長時間労働を説明するために、図表も付けてあります。

連載「公共を創る」第167回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第167回「政府の役割の再定義ー組織における評価のあり方」が、発行されました。行政が国民の期待に応えるよう方向転換するために、行政組織にも目標設定と評価の仕組みを導入すべきであることについて議論しています。

各省が出す白書は、政策の動向と成果を整理したもので有用ですが、組織や政策の中長期評価には、1年単位ではなく、5年や10年での評価が必要でしょう。その際に、自己評価も価値がありますが、第三者による評価も重要です。

政策や組織の評価を行うのは、それらが与えられた目標を達成国民の期待に国民の期待に応えているかを判断するためです。そのような評価は、各政策と組織を単体として、かつ時系列で見て課題解決の状況を知ろうとするものです。
他方で評価には別の機能もあります。複数の政策を並べて評価し、資源(人と予算)をどのように配分するかを考えるというものです。もっとも、これは異なった政策目標間の比較であり、数値化による比較は不可能です。

組織の業績評価について、もう一つの評価があります。それは、何を達成したかでなく、何をしなかったかに注目するものです。「新しい社会の課題に答えていない」という官僚批判は、何を達成したかではなく、何に取り組んでいないかによるものだと考えられます。各省が「これをしました」「あれもやりました」と実績を誇っても、国民が期待している新しい課題への取り組みを行っていなければ評価は上がりません。これを防ぎ、是正するためには、どのようにすればよいのか。
まずは、各局長が所管範囲を見渡し、新しくどのような問題が生じているかを発見し、取り組むべき課題として俎上に載せることとでしょう。

連載「公共を創る」第166回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第166回「政府の役割の再定義ー組織の目標と評価ーそのあるべき姿を探る」が、発行されました。

各行政分野での方向転換を行うため、各省の局長による所管行政の課題と取り組み方針を公表してはどうかと提案しています。局長が発表した事例として、2つを紹介しました。
一つは、 藤井直樹・国土交通省自動車局長(当時。その後に国土交通省事務次官)が、季刊『運輸政策研究』(運輸総合研究所)2016年10月号に寄稿した「自動車を巡る課題―コンプライアンスと技術革新」です。そこには、自動車行政直面している新しい課題が取り上げられています。
もう一つは、吉川浩民・総務省自治行政局長の論文「協調と連携の国・地方関係へ~コロナ禍とデジタル化を踏まえて~」(月刊『地方自治』(ぎょうせい)2022年1月号)です。そこには、局長の体験を基に考えた、地方分権改革から20年間の成果と課題、喫緊の課題では新型コロナ対策で見えた地方行政の課題、自治体の大きな課題である電子化への取り組みが書かれています。

連載「公共を創る」第165回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第165回「政府の役割の再定義ー組織の目標と幹部の役割」が、発行されました。
行政組織において、どのようにしたら政策や業務の見直しが進むかを議論しています。今回は組織の目標という観点から考えてみます。
業務の見直しを進めるには、上司が部下にその目標を示すことが重要でした。それに対して、政策の見直しを進めるために、組織の目標はどのように設定されているかです。

各課の目標はどのようにして設定されるのでしょうか。その目標は、課長が部下に与える目標の出発点であるはずです。まず課の目標があり、それを分配したものが各職員の目標になっているはずです。
ところが現状では、国では府省の任務と各局・課の所掌事務は明示されているのですが、それらの組織が達成すべき目標、すなわち整理すべき課題と解決の方向は記されていません。

組織の目標には「所管している制度の運用」「所管行政に関する課題への対応」という二つの軸があるのだと思います。
一般化すれば、前者の既存制度の運営は、課長以下の職員が主に担うことであり、省の幹部である局長が細かいところまで関与する必要はないでしょう。
それよりも局長が力を割くべき主たる役割は、社会全体を見渡しながら、その中で自らの所管行政に関する課題を発見し、その解決を組織の目標の中に組み込むことです。
この点が、まだ十分に理解されていないようです。

社会の変化を表す「貧若同縁から豊熟異独へ」

産業の変化や消費者の嗜好の変化を「重厚長大から軽薄短小へ」と表現することがあります。
それにならって、社会の変化を表す言葉を考えてみました。昭和後期の経済成長期の日本社会と、平成・令和の成熟社会の変化を表そうと考えたのです。連載「公共を創る」執筆の一環です。

「貧若勢同縁」から「豊熟滞異独」を考えてみました。意味するところは、次の通り。
経済成長期=貧しかった、平均年齢が若かった、経済成長の勢いがあった、同調を求められ画一的だった、家族・地縁・社縁というつながりが強かった。
成熟期=豊かになった、高齢化した(成熟)、経済が停滞した、他者と異なっていること多様性が許されるようになった、自由になったが孤独になった。

5文字もあるし、こなれた言葉ではないので、覚えにくいですね。
4文字にして、「貧若同縁」から「豊熟異独」はどうでしょうか。
もっと良い案があれば、提案してください。