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社会

中間団体の重要性

5月9日の日経新聞「令和新時代」、猪木武徳・大阪大学名誉教授の「新技術 道徳と調和を」から。

・・・平成が始まった年は東西冷戦が終わった年でもあった。世界の体制変化と日本の経済力の相対的な低下が同時に進んだ。なかでも、中国の台頭は大きなファクターだ・・・

・・・中間組織に弱さ
経済でも、昭和は大企業が安定的に支配していたが、平成には野望を持つ新興企業が参入し市場を揺さぶった。一方で、国と個人の間にある中間組織が弱くなった。労働組合の組織率は低下、経営者団体もかつてのような発言力がない。民主的な精神が徹底したが、補完する装置は弱まった。
民主制を安定的に機能させるには、個人と国家が直接対峙するだけでなく、非営利法人(NPO)も含めた中間的な組織が大切だ。個人は弱いので団結して共同の利益を主張することも必要だ・・・

中間団体は、公共を考える際にも、重要な要素です。

外国人旅行者を呼び込むために

5月3日の日経新聞オピニオン欄、デービッド・アトキンソン(小西美術工芸社社長)の「貧弱な観光インフラでは稼げない」から。

・・・2018年は甚大な自然災害があったにもかかわらず、訪日外国人数は前年比8.7%増の3119万人となり、12年の836万人から大きく増えた。政府は20年に4000万人を誘致する目標を設定しているが、19年にラグビーワールドカップ、20年に東京五輪・パラリンピックがあるから、かなり現実的だろう。
それより重要なのは、17年の日本の観光収入が世界10位になったことだ。念願のトップテン入りで、18年は9位に上がっている可能性も高い。たった5年間でのトップテン入りは今まで世界的に例のないことだ。日本の観光立国の潜在能力の高さとこれまでの国などの実行能力、観光地の努力と評価してもいい。
だが、課題は当然ある・・・

・・・訪日外国人は日本人の何倍もの時間とお金を使って旅をするので、観光地と観光資源が整備されていないのは好まない。多言語対応、公衆Wi-Fi、トイレ、アクティビティー、文化財の解説案内板、博物館の解説、宿泊施設など、ハード、ソフト両面の整備が最大のポイントだ。
タイに112軒、バリ島だけで42軒の5つ星ホテルがあるのに、日本はたった32軒しかない。富裕層戦略を実行すると言っても成功しないに決まっている。それが十分理解されていないと感じる・・・
・・・全国の観光地経営組織(DMO)と都道府県の予算は1000億円を超えている。しかし、約7割は誰も読まないホームページ、ローマ字で書かれているがネーティブがチェックしていない謎の文章、瞬間的に消えてしまうSNS、誰にも届かない動画、自己満足的な海外トップセールスなどに使われていることが何より悲しい。整備されていない観光地をどんなにアピールしても、来た人は満足できず、口コミは良くならない・・・

そうなんですよね。5つ星のホテルは、あなたの地元にありますか?
4月30日の日経新聞「私見卓見」、松本百加里・リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンター研究員の「海外旅行の醍醐味はどこ」も参考になります。

・・・今年のゴールデンウイークは10連休となり旅行に出掛ける人も多いだろう。海外旅行に何を求めるかは国によってだいぶ違う。当社の「じゃらん海外旅行ニーズ調査」で見つけた面白い違いを紹介したい。
日本人は海外で「おいしいものを食べたい」と答える人が多い。米国人のトップ2は「冒険心を満たしたい」と「異文化の世界を味わいたい」・・・英国人は「パートナーと充実した時間を過ごしたい」「家族をもてなしたい」と答える人が多く、旅行を同行者と関係を深める手段と考えているようだ・・・中国人は「歴史や文化を知りたい」「友達と盛り上がりたい」と答えた人が他国より多かった。あとで人に自慢できるような壮大な景色や文化に触れたいのだろう・・・
・・訪日外国人が増える中、目の前の誘客ばかりに気を取られ、相手のニーズを理解しないと、国内でお金を使ってもらえない・・・

歩きスマホを禁止する

テレビとスマホ、低俗?の程度」の続きです。

テレビからスマホに道具が進化しただけで、人の時間つぶしとしては、変わらないのでしょう。内容が低俗かどうかは、問わないことにします。
しかし、問題は2つあります。
1 それを自宅や劇場のような場所で楽しんでいるなら、周囲への迷惑はかけません。歩きながら没頭すると、危険が生まれます。
2 提供される内容が、過激になることで、より低俗になる恐れがあります。そして、持ち運びが可能で、様々な内容を見ることができるという点で、中毒性は強いでしょう。
持ち運びができる、一人で楽しむことができるというスマホの便利さが、危険を生んでいるのです。

先日、ある商業ビルで、「この建物の中は歩きスマホは禁止です」という張り紙を見ました。
そうですね。歩きたばこが、建物の中や道路で禁止されました。その際に、張り紙をして禁止し、その後法令で制限されました。
これに習えば、歩きスマホも、歩きたばこと同じように禁止することになるのでしょう。期待します。

テレビとスマホ、低俗?の程度

街角で、歩きスマホをしている人が多いです。通行の邪魔になり、危険です。駅や道路で、しばしばそのような場面に遭遇します。
電車の中でスマホに熱中している人も。周囲に気配りができず、あまり上品な立ち居振る舞いではありません。公衆の面前で、大人がゲームに熱中し、漫画やドラマに没頭することは、みっともないです。

テレビが普及し始めた頃、社会評論家の大宅壮一さんが「一億総白痴化」と表現しました。ウィキペディアによると、「テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまう」との意味だそうです。1957年のことだそうです。

同じことが、スマートフォンにも言えます。大宅さんだったら、いまの状況をどのように表現されるでしょうか。
昔から「面白いことに流れる人たち」は、たくさんいたのです。その対象が、観劇であったり、テレビ、スマホ、場合によってはパチンコなのでしょう。
違いは、スマホは手軽に持って歩くことができることです。
この項続く

平成時代から引き継ぐもの4

平成時代から引き継ぐもの3」の続きです。

その他に、平成30年間の変化から、いくつか拾ってみましょう。朝日新聞「数字で平成の30年を振り返ると」など。
大学進学率が、25%から53%へ。もっとも、18歳人口が193万人から118万人に減って、大学生は207万人から291万人に増えたのです。
非正規労働者が、800万人から2100万人へ。高学歴が増えたのに、生活が不安定になりました。人生設計が、親の時代と大きく変わったのです。
農業の担い手は、324万人から145万人へ。しかも、65歳以上が7割で、40代以下は1割です。産業としては危機的状況です。それは、農村の風景をも変えていきます。
訪日外国人客が、283万人から3119万人へ。これは、京都に行くと実感できます。産業としては、期待できます。
交通事故死者は、11086人から3532人へ。シートベルトの義務づけ、飲酒運転の厳罰化などによります。
自殺者は、22436人から34427人を経て20840人へ。3万にを越えたときがありましたが、少し減っています。
数字では示すことができませんが、ボランティア活動が広がりました。阪神・淡路大震災で活躍し、ボランティア元年と呼ばれたのは、平成7年(1995年)です。東日本大震災でも、組織ボランティアであるNPOが大活躍しました。

こうしてみると、「失われた20年」と言われる割には、日本社会はその良さを維持し、改善している面もあります。それが、国民が、平成時代に良い感じを持っている理由でしょう。
問題は、経済です。ジャパン・アズ・ナンバーワンと有頂天になった経済界が、その後、長期にわたり停滞を止めることができなかった。罪深いと思います。
政治と行政への批判もあるでしょうが、平成は政治・行政改革の時代でもあったのです。「行政改革の現在位置~その進化と課題」。もちろん、まだ十分とは言えませんが。

さて、平成を振り返り、良い方向に変えることができたことと、悪い変化を止めることができなかったことを教訓に、変化・改革を続けなければなりません。