カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

左遷、日本の会社の場合は、横滑り。その3

相原孝夫さんの発言から(続き)。
・・そもそも、人事は、短期的な業績に対する上司の「評価」よりも、同僚や部下からの意見や人物評も加味された長期的な「評判」で決まります。評判の悪い人ほど自己評価が過大な傾向がありますから、自分の人事を左遷だと思い込みやすい。結果、不信感を募らせて孤立し、ますます自分を客観視できなくなる。完全な悪循環です。
これを避けるには、つらくても周囲の声に対して聞く耳を持ち、それに基づいて自己評価を修正していくしかありません。仕事帰りの一杯は、その貴重な機会です。お互い口も軽くなり、ふだんは言えないきつい一言も出る。それに腹を立てるか、大切なアドバイスと受け止めるかは、自分次第です。
仲間を持つことも大切です。私が働いていた外資系企業は人の入れ替わりが激しかったが、社内のスポーツ活動に参加していた人の離職率は、そうでない人の3分の1程度でした。仕事を離れて本音で付き合える人々が社内にいれば孤立しない。社外人脈よりも社内のネットワークづくりに力を入れる方が、会社人生はずっと幸せになります・・
人事をする立場から、この指摘に同感です。誰しも、自分のことは客観的に見ることは困難です。抜擢すると、本人は「私の実力だ」と思います。反対に昇進が遅れると、「上司は私のことを正当に評価していない」と考えます。
後者の人にその事情を説明するのは、かなり困難を伴います。ふだん、飲んだときとか、友人など周囲の人がそれとなくアドバイスできると、少しは防止できるのですが。『明るい係長講座』でも、友人など相談できる人が少ない人が、仕事に悩むことを取り上げました。

左遷、日本の会社の場合は、横滑り。その2

相原孝夫さんの発言から(続き)。
・・一方で、会社にとって困った社員はやはり存在し、そうした人は異動で不遇感を味わいやすいことも事実です。自分の実力を誤認しているナルシスト、自分をさておき他人をとやかく言いたがる評論家、自分の立場を理解せず、関係ないことに口をはさむ分不相応な人。彼らに共通するのは、自分を客観視できず「自分が思っている自分」と「周囲から見られている自分」との間に、大きなギャップが生じていることです。
会社から求められている役割を理解し、期待通りに演じられるのが優秀な人ですが、自分を客観視できない人にはこれが難しい。思い込みで突き進めば、当然周囲の評判は下がります・・
この項、続く。

左遷、日本の会社の場合は、横滑り

4月13日朝日新聞オピニオン欄「左遷?上等だ!」、相原孝夫さん(人事・組織コンサルタント)の発言から。
・・日本の会社では、本人が「左遷」だと思い込んでいるだけで、実際には左遷ではないケースが大半です。例えば、本社の企画管理部門で働いてきた人が、営業の第一線に出されただけで「左遷」と思い込む。だが、会社が幹部育成をめざし、あえてそういう人事をするのも珍しくありません。本人には事実を告げず、腐らずやれるかどうかを見ているのです。
左遷とは本来、降格を伴うものですが、そうした例はほとんどない。現実は「横滑り」であり、相対的に思わしくない部署に行く程度のことでしかない。それを本人が「左遷」と悲観する背景には、会社への過剰な期待があります。日本の企業は社員に優しい。何度もチャンスを与えるし、一度や二度の失敗は大目に見る。だから社員も「会社は自分にとって望ましいキャリアを考えてくれる」と思い込み、異動先が期待と少々異なっただけでショックを受ける・・
この項、続く。

言葉で伝わること


今日は、岡本真一郎著『言語の社会心理学―伝えたいことは伝わるのか』(2013年、中公新書)を紹介します。既に読んであったのですが、このホームページに書くのをサボっていました。先月、「目は口よりも、ものを言う」(1月17日)を書きました。その延長で見つけたのが、この本です。内容は、題名の通りです。次のような例が、紹介されています。あなたは、どのような場面の会話かわかりますか。

しおり:あなたはブタね。
めぐみ:そうよ、わたしはブタ。ブタは最高だよ。

高橋:うちの娘は男ですよ。
松村:そうですか。うちの娘も前は男だったんですが、今度は女です。

高橋:うちの孫は、おじいさんですよ。
松村:うちの孫は、おばあさんですよ。

種明かしはしません。本をお読みください。読むとわかりますが、これらの会話は、十分な日本語の会話です。きっと、「な~んだ」と思われるでしょう。
この本では、これらの「変な会話」から始まって、しゃべっていないのになぜ伝わるか、対人関係の基本、誤解はなぜ生まれるかなどが詳しく解説されています。素人にはやや冗長な部分もありますが、新書ですからすぐ読めます。そして、「普段、こんなことがあるよな」と納得されるでしょう。
でも、学者が専門的に分析するまでもなく、私たちって学校で習わなくても、これらのコミュニケーションを子どもの時から実践しているのです。すごいですね

危ないと子をしかるより手を引こう

交通安全標語に、「危ないと子をしかるより手を引こう」というのがあります。昭和51年の最優秀作品だそうです。これは子ども(親)向けの標語としてだけでなく、職場の上司にとって有効な標語だと気づきました。
部下が失敗を犯した場合、あるいは期待しただけのことを達成しなかった場合に、しかることは良くないです。詳しくは、『明るい係長講座』をお読みください。
まだ経験不足の部下や、少し荷が重いかなという仕事を命じた場合、目標を達成できなかったなら、それはほぼ上司の責任です。失敗してからしかるより、事前に適切な助言をすべきでしょう。「やっぱり、ダメだったか」は、部下が悪いのではなく、上司が悪い。できないことを期待した、あなたが悪いのです。
初めて、我が子をお使いに行かせる場合。あなたは、どうしますか。じっくりと教えて、場合によっては後ろから隠れてついて行きますよね。