カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

作る技術と閉じる技術

新しい課題に対応するため、法律を作ったり、新しい政策を作ったりします。それを実現するには、いくつかの技術が必要です。発想し企画書にする。組織内で了解を得て、外部の関係者に同意を取るなどなど。公務員も会社員も、そのような部署にいると、先輩たちを見たり前例を見て技術を身に付けます。

他方で、使命を終えた政策や優先順位が落ちた政策を閉じる必要も出てきます。ところが、これがなかなかやっかいな仕事なのです。時限にしておけば、期限が来ると終了しますが、その場合でも関係者からは「延期を」との要望が出る場合があります。

この閉じる技術は、時に作る場合より難しいことがあります。関係者の反対です。
この閉じる技術については、これまであまり取り上げられてきませんでした。新たに作ることは、担当者の自慢になりますし、周囲も取り上げてくれます。しかし、閉じることについては、周囲はあまり関心がありません。作って後世に残った場合は記録も書かれますが、閉じてしまった場合は記録も残されない場合が多いです。語り継ぐ後継者もいないのです。
戦闘においても、先駆け、先鋒は高く評価されますが、負け戦のしんがりは大変な負担なのに、あまり取り上げられません。

成熟社会になり、新しい課題への対応とともに、それらに予算や人を回すために、既存事業の廃止が必要になりました。これからは、閉じる技術を教える必要があるのでしょう。

人づてに人を褒める術

12月1日の日経新聞文化欄に、道尾秀介さんの「伊集院静さんを悼む、人の気持ちを変える言葉」が載っていました。先日亡くなられた伊集院静さんの追悼文です。次のような話が載っています。

道尾さんにとって伊集院さんは、25歳年上の尊敬すべき先輩だったようです。ある小さなバーでボトルをキープしたら、隣に伊集院さんのボトルがあったそうです。
後に伊集院さんがその店に行き、ボトルの名前を見て、「道尾秀介のものか」と尋ねたそうです。ママさんが「そうですよ」と答えると、伊集院さんは「私は彼の小説のファンでしてね」と言ってくれたそうです。それを聞いた道尾さんの喜びは想像できます。

私が筋だけを紹介しても、深さを表現できません。ぜひ、道尾さんの原文をお読みください。この話以外にも興味深い話が、小説家の筆で書かれています。

同じ仕事をしていてはC評価

11月21日の読売新聞「LEADERS」は、藤本昌義・双日社長でした。
日商岩井がニチメンと統合する際に、情報が漏れないようにある場所に「監禁」されて統合計画を作った話、ベネズエラで工場乗っ取り克服し正常化した話など、興味深い話が載っています。それは原文を読んでいただくとして、次のような話が載っています。

<17年に社長に就任し、まず手をつけたのは人事評価の見直しだった>
人事評価を見たら、全体の約7割が真ん中にあたるB評価でした。
例えばトレード(貿易仲介)は、毎日こなしていると、きょうも仕事をしたと充実感を感じられる。でもそれでB評価ではだめだと思いました。
ビジネスには旬があります。新しいことに挑んでいかないと次がなくなる。そうした危機感から、毎日同じ仕事をしているだけの社員の評価は一番下にあたるC評価だと言い続けました。新しいことに取り組もうと、社員の意識は変わってきたと思います。

社長候補には厳しい分野を経験させる

11月9日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、小川啓之・コマツ社長の「父に学んだ社長の覚悟」でした。表題とは異なりますが、次のような話が載っています。
一般的に本社でいわゆる「王道」を歩んできた幹部は、会社が難しい局面になったときに、的確な判断ができないようです。

――社長就任前にインドネシアに赴任しています。
「14年からインドネシアの総代表を務めました。今思えば、社長になる前に前任の社長の大橋徹二さんの計らいでこれまでできなかった経験を積めたのだと考えています。当時インドネシアでは鉱山機械の需要が最低で、全く売れませんでした。直前の11〜12年に鉱山機械が売れるピークがあり、その反動で14〜15年は1台も売れない月もありました」
「コマツでは市場を伝統市場(日本、北米、欧州)と戦略市場(アジア、中南米、アフリカなど)に大別しています。これまでの社長は伝統市場しか経験していませんでしたが、今は戦略市場の重要性が高まっています。私も次期社長には伝統市場と戦略市場の両方を経験している人を据える考えです」
「その需要がボトムの時期にインドネシアに行ったことが私にとって良かったと感じています。代理店との関係性強化などに取り組みました。悪い時に良い時のことを考え、良い時に悪い時のことを考えるのは経営の要諦だと思っています」

日立製作所を立て直した、川村隆さんと中西宏明の話を思い出します。「外から組織を見る、純粋培養の時代は終わった

山崎和之国連大使

山崎和之・在ジュネーブ日本政府代表部大使が、国際連合日本政府代表部大使に任命されました。おめでとうございます。というか、昨今の国連安全保障理事会の混迷ぶりを見ると、「ご苦労様」と言わずにおられません。

麻生太郎総理に、一緒に秘書官として仕えました。
山崎君も、いろいろと仕事を呼び込む男です(失礼な表現です)。中国の公使では、大使と乗っていた車を襲われました。彼は抗議や抵抗をせず、冷静にその状況を写真に撮って中国当局に示しました。そうされると、相手当局もうやむやにはできませんよね。素晴らしい判断です。「事件に巻き込まれたときの判断

2018年の第44回先進国首脳会議(右下の写真)では、ごねるトランプ大統領をメルケル首相が説得した場にいました。山崎君が安倍首相とその場を「動かしている」ようにも見えます。BBCニュースでは、登場人物の3番目に紹介されています。