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兵庫県宍粟市「三位一体改革と地方自治体の生き方」

3月4日は、兵庫県宍粟市に講演会に行ってきました。土曜の夜7時から9時という時間帯なのに、おおぜいの議員や職員が集まってくださいました。宍粟市は、去年に合併で誕生した新しい市です。司馬遼太郎さんの「街道をゆく9」(朝日文庫)の「播州揖保川・室津みち」に、山崎、一宮伊和神社として出てくるところです。かつては、たたら製鉄と林業で栄えました。市と言ってもほとんどを山林が占め、林業衰退・人口減少などで地域の将来を悩んでおられます。その上に、交付税の減少が乗っかり・・。
日本の多くの地域が、同じような悩みを抱えておられます。威勢の良いお話はできず、「今後も交付税は減りますよ」とさらに暗くなる話しかできないのですが。
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2006.03.03

先日の地方制度調査会の道州制答申は、「自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある」と指摘されています。私は、さらに日本社会の変更だと考えています。
(東京一極集中打破)
これまで、東京一極集中の弊害が指摘されてきました。しかし、いっこうに良くなりません。47都道府県が競っても、東京には勝てないのがわかりました。この際、47県を8くらいの州にして、州都で東京と戦うことで、少しは勝ち目が出てくるのではないでしょうか。
九州で、オランダくらいの経済力があります。これなら、東京に勝てないとしても、かなり一極集中は是正できると思います。また、戦う相手は東京でなく、アジアの各国になります。どのような産業で競うか、観光客を呼び寄せるか。日本国内でパイの奪い合いをしていても、ゼロサムゲームです。目を海外に向けましょう。それが、結果として東京との戦いに勝つことになるのです。
(霞ヶ関分割)
日本の政治行政の問題点として、官僚支配・中央集権が指摘されています。しかし、分権もなかなか進まないことが分かりました。この際、道州制を導入し、霞ヶ関を分割することが、官僚支配・中央集権打破の良い方法です。すなわち、道州制によって、内政の多くは中央政府(霞ヶ関)から、各州に移譲されます(移譲しないで決定権を霞ヶ関が持ったままでは、単なる県の合併でしかありません)。その権限移譲に合わせて、霞ヶ関官僚も各州に分配するのです。そうすれば、もう優秀な若者が、みんな東京を目指さなくても良いのです。
「岡本君、官僚は東京を離れるのはいやがるよ」と指摘する人がいます。そういう官僚もいるでしょう。でも、国鉄の分割を想像してください。あれが成功したように、うまくいくと思います。
(発展途上国を超えて)
アメリカやドイツでは、一極集中が起きていません。首都への一極集中が起きるのは、発展途上国です。ソウル、メキシコシティー、マニラ・・。先進国に追いつくため、先進国から得た情報を首都から全国に配分します。また資源を首都に集中し、中央から再配分するからです。その点で、日本は世界で一番、追いつき型の経済社会発展に成功しました。それは、世界で一番、中央集権であったということです。
経済は、経済の論理で動きます。経済面での東京一極集中は、止まらないでしょう。製造業から情報産業に主役が移行した今、工場の分散政策では、産業の地方分散はできません。経済の論理を政治で無理にゆがめると、非効率が生じ、国際競争力もなくなるでしょう。
政治と行政を分散することが、東京一極集中を是正し、豊かな社会をつくる方策なのです。

道州制

2月28日に総理の諮問機関である地方制度調査会が、道州制の答申を総理に提出しました。詳細は、原文や新聞報道を読んでください。今回の道州制は、地方制度のあり方を超え、日本の政治行政のあり方の改革です。
1日の朝日新聞社説は、「国の事務を『できる限り道州に移譲する』という姿勢は評価したい。道州制は自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある」「地方制度調査会にすれば、90年代からの分権改革の集大成として道州制の基本設計を示したということだろう。道州制になれば、各省庁は解体にも等しいような圧縮を迫られる」「一方の各省庁は、権限と人員が削られるのを警戒して論議に背を向けたままだ」。
日経新聞社説は「道州制の狙いは統治構造の変革にある。国は外交・防衛など国でしかできないことに専念し、内政の大半は地方に委ねようというものだ。目指すのは分権と効率化である」「もし国の出先機関が原則廃止され、都道府県とともに道州に吸収されれば、両者の業務の重複は解消し、大規模なリストラも可能になろう。国・地方を通じた小さな政府の実現には有力な改革になる」。
読売新聞解説欄では、青山彰久記者が次のように書いておられました。「もし、国がこれまで通りに政策立案の権限を握ったまま、出先機関の仕事の執行権限を移すだけの道州制ならば、道州は、国が決めた仕事を行うだけの『巨大な国の総合出先機関』にしかならない」「都道府県を競わせて『国土の均衡ある発展』を図るのではなく、『国際競争力のある地域の個性ある発展』を目指す時代だろう。だが、大規模な権限移譲を実現できるような強力な政権の力と、都道府県行政の広域化の実績が合流しなければ、絵に描いた餅にしかならない」

ホームページの整理

「日本の政治」が27ページにもなったので、3分類に整理しました。内閣・国会・省庁のあり方については「政と官9に、社会と政治のかかわり方については「社会と政治5」に、そのほか政治のあり方については「政治の役割10」というようにです。もっとも、截然とは分類できませんが。

組織論

(上からの割付方式)
私の研究テーマの一つに、組織論があります。日々の仕事のなかで、次々と考えさせられる問題が生じます。今日は、「下からの積み上げ方式」と「上からの割付方式」について述べましょう。
どの役所でもあると思いますが、国会(議会)答弁をどの課が書くかで、もめることがあるでしょう。これまでにない質問や複数の課にまたがる質問だと、関係課同士で、譲り合い(押し付け合い)をするのです。これを、下からの積み上げ方式でやっていては、いつまでたってもけりがつきません。早く結論を出すためには、上からの割付方式(より上位のものが担当課、担当者を決めること)が良いのです。
割付方式の場合には、最も良い答弁を早く書ける課に、答弁作成を割り付ければいいのです。このことは、明るい係長講座中級編に、体験談を交えて書きました。
役所としては回答しなければならないけれど、担当する適当な部署がないことも、まま生じます。それは、各課の編成(所掌事務の割付)が時代に合っていないか、あるいはこれまでにない問題が生じたからです。それをこれまでの各課で議論していても、引き受けるところがないのは当たり前です。このような場合に、「積み上げ方式」は役に立たないのです。役所の縦割り組織(各課の編成)は、既存テーマについては積み上げ方式で機能を発揮しますが、これまでにないテーマの場合はそれでは機能しないのです。割付方式で、ある課に割り付けてあげないといけないのです。
組織内での意志決定方法として、「ボトムアップ方式とトップダウン方式」の対比があります。これはあるテーマについての意志決定の方法についてですが、私の言う「積み上げ方式と割付方式」は、同じことを組織論として述べています。
(上司の仕事)
これに関連してもう一つ、「誰が書くか」という問題があります。各課が答弁作成を拒否するのは、担当者が今までに書いたことがない質問だったり、回答が難しい質問だからです。すると、それ以上課員に対し書くことを強要しても、良い答えが出るとは思えません。その場合は、誰か上司のしかるべき人が書くべきでしょう。
ここには、二つの課題が含まれています。これまでにない問題である場合は、下位の職員が書くと良い答えにならない。その場合は、上司が筆を取るべきであること。もう一つは、各課にまたがる課題なら、それぞれの課が書いても良い答えにならない。その場合は、その両課を所管する上司が書けば良い答えになるということです。課長になったら、自分ではペンを持たず部下の書類にノーを言うだけ、というのは間違った考えだと私は思います。
(何でも屋が必要)
もう一つ、そのような運用改善だけでは、解決できない問題もあります。どうしても、引き受け手のない問題の場合です。そのような場合には、誰も引き受けない問題を引き受ける部署を作っておく必要があります。総務課とか企画部は、そのようなときに機能を発揮します。
上司の立場から見ると、早く良い答弁を書いてくれることが良い結論であり、それが良い組織なのです。これは、関係職員にとっても同じです。みんな早く帰って寝たいのですから。「上からの割付方式」とは、そのような観点から見た組織論です。