岡本全勝 のすべての投稿

国際社会での位置と自覚

この1年間、いろいろなことを、考えることができました。あまりに幅広くだったので、うまく整理できていません。それは、世界の中の日本、これからの日本の在り方、政府と社会の関係、政府と市場の関わり方などです。どのような切り口で、分類するのがよいのか。少しずつ書くことで、整理したいと思います。
日本が、世界第2位の経済大国になったのは、1968年(昭和43年)でした。西ドイツを抜いて、アメリカに次ぐ規模になったのです。もっとも、東側ではソ連がいたので、西側で第2位と言った方が正確でしょう。
今年で41年。半世紀とは言いませんが、結構な長さです。この事実を、改めて考えさせられました。
その間、日本人は、世界第2位の経済大国であるということを、自覚していたでしょうか。もちろん、経済の規模で国のありようが決まる。そのようなものでは、ありません。しかし、各国が集まって構成している国際社会では、その「からだ」の大きさにふさわしい立ち居振る舞いが、期待されるのでしょう。
「国際連合への負担金を、たくさん納めていればよい」というものでは、ありません。私が言いたいのは、国際社会での議論、ルールづくり、秩序維持にどれだけ貢献したかです。
日本は、自国の経済発展にのみ専念し、世界への貢献を怠っていたのではないでしょうか。家庭にたとえると、町内会費を納めるが、会合では発言しない、共同作業には出ていかない、といったところでしょうか。少し極端な言い方をしています(この項、続く)。
なお、連載していた「行政構造改革」では、第3章三2「日本の政治は何をしたか、何をしなかったか」(2)「決断する」(2008年10月号)で、国際貢献を取り上げました。今日の議論は、その延長になります。

消防研究センター

私の勤めている消防大学校に、消防研究センターという、研究組織があります。
火災が起きた際の原因調査は、各消防署が行います。火事のニュースで、「××が火元と見られています」と流れる、あれです。「たばこの火の不始末が、原因と見られています」と聞けば、なるほどと思います。しかし、現場でそれを断定するのは、難しいのです。
考えても見てください、家具や柱が焼け落ちた焼け跡から、どのようにして、たばこを探し出すのか。仏壇のローソクと、どうしてわかるのか。さらには、電気器具からなぜ出火したと、わかるのか。私も、まだ聞きかじっただけなので・・・。
このセンターでは、難しい原因の調査をします。このほかに、難しい災害が発生した場合に、消火や拡大防止方法の助言、支援をしています。興味深い研究を、しています。これについても、追々とご紹介しましょう。

京都議定書に見る日本の政治

29日の朝日新聞変転経済は、京都議定書でした。1997年12月に京都で、地球温暖化防止京都会議が開かれました。議長は、日本の環境庁長官です。議定書が徹夜の交渉でまとまり、午後に採択される段取りにかかわらず、主役の議長がその日の朝に辞任し、東京に向かうことになりました。内閣不信任案が採決される予定なので、首相指示で国会に出席するためです。
各国の代表や報道機関はあ然とした、と書かれています。ただしその後、官邸と国会の了解を得て、長官は議長に戻ります。また記事では、議定書をまとめる過程で、関係省庁の妥協により、日本として戦略なき外交をした事実も解説されています。
この連載は経済をテーマとしていますが、今回は経済と言うより日本の政治の問題でした。

日本の技術の売り込み

テレビの地上デジタル放送で、日本の方式が、南アメリカの各国で普及しつつあります(28日の日経新聞ほか)。世界には、ヨーロッパ方式、アメリカ方式などが、あります。かつて、携帯電話で、日本の方式が優れていながら、世界の主流になれなかったことは、有名です。
今回のデジタル方式売り込みについては、総務大臣などの「営業」があったと、報道は伝えています。また、ブラジルなどでの、新幹線の売り込みも、報道されています。
私は、連載「行政構造改革」第3章三1(1)「政府の役割」の一つとして、国際競争の中での「自国の売り込み」を取り上げました(2008年9月号、資料3-12)。この仕事は、政府の必須の仕事とは位置付けられないでしょうが、自国が世界の中で発展していくためには、重要なことだと思います。