岡本全勝 のすべての投稿

後期5か年事業、地方負担

今日3日、復興大臣が「平成28年度以降の復興事業にかかる自治体負担の対象事業及び水準等」を発表しました
負担水準は、通常の地方負担額の5%としました。例えば、国直轄の道路事業では、国が事業費の3分の2を負担するので、通常の地方自治体負担は3分の1(33%)です。その5%にするので、実質負担は33%×5%=1.7%となります。通常の場合に比べ、はるかに(20分の1に)小さくなっています。これは、自治体や与党からの「自治体が負担できる範囲で」との申し入れを反映し、最低限の水準にしたものです。ちなみに、災害復旧事業は、通常、自治体の負担が5%です(ただし今回は、災害復旧事業は地方負担無しで行います)。
なお、5月12日公表したように、災害復旧事業、復興事業(元に戻すだけでなく新しくつくる事業など)で高台移転などの基幹的事業、原発事故由来の事業などは、今後とも全額国費(地方負担無し)で行います。規模が大きく予算がかかる事業はほとんどがここに入るので、地方負担を求める事業は範囲が小さいです。地方負担対象事業の範囲も、負担率も、かなり小さくなっています。
地方負担対象とするのは、これら基幹的事業以外で、全国的に他の地域でも行われる地域振興事業などです。被災地から離れた内陸部での、道路改良事業(地震で壊れたのでないもの)もあります。これらを、他の地域との公平性の観点から、地方負担を求めたのです(ただし通常の20分の1)。他の地域で同じ事業を行う場合、上に述べたように通常の負担割合になります。

北岡伸一先生、戦後70年談話懇談会。2

朝日新聞5月30日オピニオン欄、北岡伸一先生のインタビュー「戦後70年談話」から、続き。
「21世紀懇の議論をもとに首相談話が書かれるとすれば、有識者の役割は極めて大きいと思います」との問に。
・・・誤解されては困りますが、議論を踏まえて我々がどんな報告を上げるのかと、首相が最終的にどんな首相談話を出すのかは別の話です。懇談会の議論がすべて無視されるとは思いませんが、いずれにせよ首相談話そのものには直接関与していません・・
「談話を出す際に、首相は「幅広い意見に耳を傾けた」と言うのではないでしょうか。21世紀懇の存在が、首相の「免罪符」に使われる恐れはありませんか」との問に。
・・・では、為政者が誰にも相談せず、自分の頭だけで考えて談話を出す方が良いと言うのでしょうか。歴史は事実に基づいており、研究として蓄積がある学者は客観的な材料を提供することができます。一方、首相の談話は外交問題も絡む極めて高度な政治的行為です。談話が歴史を無視したものになっては困りますが、政治的なメッセージは主として政治家が判断すべきではないでしょうか。
有識者会議の役割ですが、例えば政治家が何かを発言する時、官僚はなかなか「ノー」とは言えない。かなり一方通行的な関係である政治家と官僚に比べ、我々は嫌われることを恐れず自由に発言できます。官僚のセクショナリズムに陥ることもありませんから、さまざまな意見を総合する効果はあるのではないでしょうか・・・

広辞苑、還暦

広辞苑が、刊行以来60年になるのだそうです。すなわち、1955年生まれで、私と同い年です。戦前からあるのだと思っていました。
私が使い出したのは、中学生の時です。田舎の中学生にとって、広辞苑は権威であり、あこがれでした。一つの単語を引いては、近くの単語を読みと、知識の源でした。小学生や中学生の時は、百科事典を読むのが楽しみでした。知らないことばかりでしたから。また、教科書のほかに適当な本もありませんでした。
国語辞典の話に戻ると、社会人になってからは、職場では「岩波国語辞典」を使っています。こちらは1,800ページでコンパクトです。もっとも、パソコンで調べることも多くなりました。一つの単語を調べるには、インターネットが便利でしょう。しかし、学生が勉強するなら、印刷物の辞書をお薦めします。知識が横に広がります。

社会科学による大震災の分析、2

日本学術振興会(村松岐夫先生ほか)による東日本大震災学術調査プロジェクト「大震災に学ぶ社会科学」の第2回配本、第7巻『大震災・原発危機下の国際関係』が刊行されました。
内容は目次を見ていただくとして、今回の大災害では外国との関係、特にコミュニケーションが問題になりました。今後の危機管理には、国際関係的視点が不可欠なのです。被災者支援本部でも、国際班をつくりました。

第2章 外国支援の受け入れ
第3章 自衛隊と米軍の共同作戦の成果と教訓
第4章 日米協力の国内外への影響
第5章 対外的な危機時コミュニケーション
第6章 外国メディアの大震災・原発危機報道
第7章 外国人と外国政府の避難行動
第8章 放射能汚染の対外関係への影響
第9章 国際機関との関係
第10章 世界の原発政策への影響
第11章 結論:大震災・原発危機の対外関係への影響

このような観点からの分析は、このようなシリーズでなければ行われなかったでしょう。ありがとうございます。
シリーズ全体は、「社会科学による大震災の分析」(2015年5月6日)で紹介しました。

復興事業のコスト意識

6月1日の日経新聞地域面「時流地流」は、山本朗生記者の「新・復興事業コスト精査を」でした。
・・・被災地にも一部負担を求める国と、全額国費の継続を求める地元自治体が対立するが、どんな結論になるにせよ、事業採算を高めるという点では、しっかり共同歩調を取る必要がある。
国が「集中復興期間」と定めた11~15年度は、いち早く被災地の生活インフラを立て直すために、適正なコストをじっくり精査できないのもやむなしという面があった・・・
として、次のような例を紹介しています。
宮城県多賀城市で建設中の工業団地。当初計画47億円が54億円に膨らみました。増加分7億円は国費で支援していますが、この多くを市が負担するのであったら、規模を縮小したかもしれないこと。
宮城県南三陸町の下水処理場。かつては370世帯の下水を処理していました。大半の世帯が津波被害で移転したのを機に稼働をやめ、町内の移転先では個別の浄化槽で処理してもらうことになりました。全額国費で再建する手もありましたが、佐藤仁町長が「下水管敷設や維持にコストがかかりすぎる」と断念した例。
原文をお読みください。