連載「公共を創る」第173回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第173回「政府の役割の再定義ー成熟社会において官僚に求められる能力とは」が、発行されました。
第171回から、これまでの官僚に求められた能力を解説しています。その中で、「変な能力」についても説明しています。「理不尽なことに耐える能力」「滅私奉公」などです。

次に、官僚を支えた心理を説明します。給料が驚くほど高かったわけでもないのに、私生活を犠牲にして長時間労働に耐えたのです。志を持ってこの職業を選んでいますが、志だけで長い職業人生を続けることはできません。彼らを支えたのは、やりがいだったと思います。社会をよくすることが目に見えたことであり、それに伴う社会的評価です。

次に、これから必要とされる能力について解説します。

休みの日 仕事の電話出る?

12月12日の読売新聞に「休みの日 仕事の電話出る?」が載っていました(すみません、去年のことを取り上げています。この記事のほかにも、しばらく続きます)。

・・・スマートフォンの普及でいつでも手軽に連絡を取れるようになった結果、働く人々が業務時間外の連絡を拒む「つながらない権利」が注目されるようになった。通信環境の変化に合わせ、労働者の健康を守る働き方改革が求められている。

24時間戦えますか——。バブル経済に沸いた1989年、栄養ドリンクのCMで登場したフレーズが話題を集めた。猛烈に働く企業戦士を鼓舞し、その年の流行語になった。
もっとも、当時の主な通信手段は固定電話。会社の外に出れば、良くも悪くも連絡を取ることには限界があった。
それから30年余りがたち、通信環境は劇的に進化した。2000年に携帯電話とPHSの契約者数が固定電話を上回った。ノートパソコンも身近なものとなり、10年頃からはスマホや通信アプリが浸透。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、20年代には、在宅勤務やオンライン会議が広がった。

仕事の効率性が向上した一方で、業務時間外でも連絡がつきやすくなり、「つながらない権利」の重要性が高まった。
パーソル総合研究所が今年7月、正社員3000人を対象に調査したところ、1295人が業務時間外の連絡があると回答。そのうち、過去1か月以内にすぐに対応を求められた人は58%に上った。メールの確認など「業務時間外でつながる時間」は月平均約40時間と推計された。
つながる時間が長いほど燃え尽き症候群になる傾向がうかがわれた一方、業務時間外の連絡に関する社内規則があるとした企業は31%だった。

欧州では「つながらない権利」を法制化する動きが広がっている。青山学院大の細川良教授(労働法)によると、フランスでは、労働者の過労が社会問題になり、16年に世界で初めて法制化された。通信機器の使用規制など、権利を実現する方法を労使交渉のテーマに入れることが義務づけられた。
同年のフランスの世論調査では、管理職の77%がバカンス中でも通信機器に接続したと回答。このうち、82%は「通信がストレスになる」と答えた。
細川教授は「休暇を重視するフランスでさえ、スマホがもたらした利便性の波にのまれた。休息の質と量をいかに確保するかが問われる時代になっている」と話す。スペインやベルギー、イタリアでも「つながらない権利」が法制化されている・・・

市町村アカデミー機関誌第148号

市町村アカデミーの機関誌「アカデミア」第148号(令和6年冬号)が発刊されました。
来年度の研修計画のお知らせのほか、次のような講義・講演の概要が載っています。これらは、インターネットでも読むことができます。

「超高齢・人口減少社会における自治経営」辻琢也・一橋大学大学院法学研究科教授
「ローカル鉄道を上手に使って地域活性化」鳥塚亮・えちごトキめき鉄道株式会社代表取締役社長
「行政デジタル化の意義と課題」小林隆・東海大学政治経済学部教授
「なぜ日本の働き方は変わらないのか~他国との比較において考える~」海老原嗣生・雇用ジャーナリスト、厚生労働省政策審議会人材開発分科会 委員、大正大学特命教授、中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授
「職場のコンプライアンスとリスクマネジメント」中村葉志生・株式会社ハリーアンドカンパニー 代表取締役

研修生が書いた優秀レポート3本も載っていますが、これはインターネットでは読めません。
また、研修生の体験談も載っています。参考にしてください。

5人に1人が「ひとり死」

NHKニュースウェブには「「絶対に“無縁仏”にしてはいけない」その時、友人たちは…」(2023年12月21日)が載っています。
12月25日の日経新聞「1億人の未来図」に「5人に1人が「ひとり死」後顧の憂い、なくせる社会に」が載っていました。新しい社会の課題です。

・・・未婚率が上昇し、2050年には30万人を超す人が生涯結婚しないまま亡くなる見通しだ。ほぼ5人に1人が「ひとり死」を迎えることになる。後顧の憂いをなくそうと、血縁によらない埋葬や、第三者に遺品処理を委ねるケースが増える。誰しも同じ状況に置かれる可能性はあり、社会が向き合う必要がある・・・
・・・みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、未婚で亡くなる65歳以上の人は50年で約32万人となる。20年に比べ4.1倍に増える。高齢者の総死亡数に占める割合は18.1%と3倍弱の水準となる。
背景には未婚率の上昇がある。国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳時点での男女の未婚率は1990年で4〜5%台。20年には男性で28.3%、女性で17.8%に高まった。経済力や子育てへの不安、女性の社会進出、生活の利便性向上など様々な要因から「結婚して当然」の意識が薄れた。
5人に1人が「ひとり死」に至れば、社会や慣習への影響は小さくない。
身寄りなく暮らす人の異変をどう察知するか。孤立は認知症や孤独死のリスクを高める。
同研究所の22年の調査では、一人暮らしの高齢男性の15%は2週間内の会話が1回以下にとどまった。女性の3倍、高齢夫婦世帯の5倍。みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「男性は地域との接触が少ない」とみる・・・

地方自治体「人材育成・確保基本方針策定指針」

12月22日に、総務省公務員部長から「人材育成基本方針策定指針の改正について」が自治体に示されました。「人材育成・確保基本方針策定指針」(本文は20枚)、「概要」(1枚)

各地方公共団体における人材の育成に関しては、平成9年に「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」が示され、各地方公共団体で基本方針が策定されてきました。しかしその後の変化は激しく、人材育成と確保が大きな課題になったのです。
今回の指針の基となった「ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会」による「人材育成・確保基本方針策定指針に係る報告書」(令和5年9月)の目次のⅠが、この間の状況の変化を示しています。人材育成だけでなく、人材確保、職場環境の整備が課題になりました。

I 現行指針の改正の必要性
1 社会情勢の変化による人材確保への影響
(1)人材獲得競争の激化
(2)多様な人材確保の必要性
2 行政に求められる能力の変化
(1)行政課題の複雑・多様化を踏まえた新たな職員の役割
(2)専門人材の重要性と不足
(3)定年引上げに伴う計画的な人材育成
3 働き手の意識変化
(1)やりがい・キャリアを通じた成長の実感
(2)働き方に対する新しい価値観

また、報告書の参考資料(34ページ以下)についている事例が参考になります。