目標の設定されていない予算

11月29日の朝日新聞「膨張予算」は、「ずさんな目標「民間なら通らない」 水ぶくれの基金、見直し迫られる国」でした。

・・・水ぶくれする国の基金で、約190の事業のうち少なくとも43事業で、成果の数値目標がない実態が明らかになった。目標が明確でなければ、事業が失敗しても、見直されずに無駄遣いが続くことになる。有識者から改善を求める声が相次いでおり、国も見直しを迫られている。

10月のデジタル行財政改革会議で、家計簿アプリを運営するマネーフォワードグループの瀧俊雄執行役員は苦言を呈した。「民間であれば経営会議を通らない。血税をあてはめていいのか」
瀧氏が問題視したのは、「失敗を許容する」として、文部科学省が「ムーンショット型研究開発プログラム」の目標を設定していないことだ。ほかにも、不合理な理由を並べて、目標を設定しない事業が相次いでいる。
目立つのが「グリーンイノベーション基金」や「中小企業イノベーション創出推進基金」など、コロナ禍以降に新設されたもの。担当する経済産業省は「支援対象の採択が完了していないため」などとし、支援する案件を決めてから目標を設定する構えだ。
ただ、先に事業で何を目指すかを決め、達成するのに必要な予算を確保するのが本来あるべき順序だ・・・

予算を編成する担当者からすると、基金は予算規模を膨らますには、都合のよい手法です。そしてそれが使われないと、後に不用額となって歳入として使えます。これも、都合はよいのですが。必要なところに、必要なときに、必要な予算を配分するという原則とは異なる思想です。

お寺で子ども食堂

全国で広がっている子ども食堂。支援している「むすびえ」によると、全国で7千か所を超えたそうで、今年はさらに増えているとのことです。

お寺でやっている事例の動画「こども食堂 多様なカタチ 〜宗教施設とこども食堂(お寺編)」を紹介します。13分の動画です。
そうですよね。お寺は、困っている人を救ってくれる場所でした(死後の世界も面倒見てくれますが)。また、地域の人が集まる場所であり、お寺と神社の境内は子どもの遊び場でした。近年は、葬式と法事で行くこともなくなり、お墓があるとお参りくらいでしょうか。

子ども食堂は、人が集まるきっかけになっているようです。子どもにとっても、一度行けば行きやすい場所です。お寺にとっても、良いことですよね。街や村には必ずあり、目立つ場所ですから。
ソーシャルテンプル」も、ご覧ください。

地域の看護師、コミュニティナース2

地域の看護師、コミュニティナース」の続き、矢田さんの発言です。「教科書に書いてあることは、「過去のこと」が多い。教科書通りだけのことをしていては、時代に乗り遅れます。ですので教科書に載る前の「実験」を続けています」は、耳が痛いです。

――行動力がすごいですね。
看護は実践学という思いが強いのです。看護に限らず、知は実践に生かさないと意味がない、と考えています。誤解を恐れずに言えば、教科書に書いてあることは、「過去のこと」が多い。教科書通りだけのことをしていては、時代に乗り遅れます。ですので教科書に載る前の「実験」を続けています。

――民間企業とのコラボレーションも進んでいます。
瞬間瞬間で出会った人と、考え方や感性が合えば、ご一緒しています。「コミュニティナースがいる日本をつくりたい」という計画を企てていこうという方たちです。1億総コミュニティナース化が目標。元気なうちからコミュニティナース的にかかわる、という共通目標をもっています。
日本列島を人体に見立て、そこに考え方が合った自治体や企業という「良い血液」を流し、いい細胞をつくるイメージです。これまで鉄道会社やコンサルティング会社、ガス会社や製薬会社などと連携を進めてきました。具体的には、コミュニティナースを派遣したり、社員を受け入れたりしてきました。これらの会社は、社会的な意義を感じ、トップ自ら経営マターとして取り組んでくれています。

――医療・介護の枠をはみ出ていますね。
自分では、社会システムの変革者、ゲームチェンジャーだと思っています。この国にまだない健康インフラをつくろうとしています。コミュニティナーシングというマインドやふるまいを、全国民が享受できる世の中にしていきたいと思います。

作る技術と閉じる技術

新しい課題に対応するため、法律を作ったり、新しい政策を作ったりします。それを実現するには、いくつかの技術が必要です。発想し企画書にする。組織内で了解を得て、外部の関係者に同意を取るなどなど。公務員も会社員も、そのような部署にいると、先輩たちを見たり前例を見て技術を身に付けます。

他方で、使命を終えた政策や優先順位が落ちた政策を閉じる必要も出てきます。ところが、これがなかなかやっかいな仕事なのです。時限にしておけば、期限が来ると終了しますが、その場合でも関係者からは「延期を」との要望が出る場合があります。

この閉じる技術は、時に作る場合より難しいことがあります。関係者の反対です。
この閉じる技術については、これまであまり取り上げられてきませんでした。新たに作ることは、担当者の自慢になりますし、周囲も取り上げてくれます。しかし、閉じることについては、周囲はあまり関心がありません。作って後世に残った場合は記録も書かれますが、閉じてしまった場合は記録も残されない場合が多いです。語り継ぐ後継者もいないのです。
戦闘においても、先駆け、先鋒は高く評価されますが、負け戦のしんがりは大変な負担なのに、あまり取り上げられません。

成熟社会になり、新しい課題への対応とともに、それらに予算や人を回すために、既存事業の廃止が必要になりました。これからは、閉じる技術を教える必要があるのでしょう。

フードバンク、行政の役割

11月24日の朝日新聞「フードバンクの今:下」「持続可能な活動へ、行政の役割とは」から。
・・・困窮している人たちへの食料支援で大きな役割を担うフードバンクだが、企業や個人の寄付で運営しており、多くの団体はぎりぎりの状況で活動を続けています。支援を持続可能なものにするには何が必要なのでしょうか。
徳島県は昨年12月、フードバンクなどの困窮者支援団体や子ども食堂に、無償で食品を提供する事業を全国に先駆けてスタートした。
カップ麺などの県産食品セットや県産米、菓子パンなどの食品の提供費用として、補正予算で5億円を計上した。1団体あたりの上限は月200人分を目安とした。
県によれば、7月末までに、県内約130団体に県産米約118トン、県産食品セットは約2・6万人分を提供、9月末でいったん受け付けを終了した。その後、9月の補正予算で新たに予算を確保、来年1月末まで食品の無償提供を続ける予定という。
急きょ事業を立ち上げたきっかけは、福祉団体や社会福祉協議会などを通じて困窮者に食料を提供するNPO法人フードバンクとくしま(徳島市)が食料不足に陥っているという情報が届いたことだった。
県国保・地域共生課の加藤貴弘課長は「物価高騰で生活困窮者の暮らしはより深刻になっている。フードバンクに十分な食料が集まらなくなれば、そこから食品を受け取る様々な団体も活動継続が難しくなる恐れがある」と説明する・・・

・・・物価高騰やSDGsへの意識の中で減っているとされる企業の食品ロスだが、さらに食品ロス削減を進めるため、消費者庁は、関係省庁と連携しフードバンクを「重要なパーツ」(自見英子消費者相)として捉え、年内に施策パッケージをとりまとめようとしている。
企業にとって、食中毒などの事故が起きた場合に法的責任を追及されることや、寄付した食品が転売されて企業の評価低下につながることなどへのおそれは、食品寄付のハードルを高くしている。そこで、一定の基準を設けて、損害賠償などの責任を軽減する仕組みを検討している。
また、農林水産省ではこれまでは主に食品ロス削減の観点から捉えていたフードバンク活動を、十分な食料が得られない経済弱者を支える役割として捉え、支援することを検討している。24年度予算の概算要求では、新たに約10億円を盛り込み、フードバンクや子ども食堂などが食品取扱量を増やすために必要な倉庫費などを補助することを予定している・・・

12月9日の朝日新聞別刷りbeには、「行政による食料支援 民間と連携、生鮮食品含め提供」が載っていました。
・・・物価高騰のなかで値上げが相次ぐ食品類。家計が苦しく、日々の食べ物を手に入れるのに苦労する人が増えています。こうしたなか、生活に困窮した人に対する緊急の食料支援に本格的に乗り出す自治体が出てきました。民間の取り組みが先行する食料支援に、行政はどう関わっているのでしょうか。全国に先駆けて取り組む長野県と東京都板橋区の実践を報告します・・・
原文をお読みください。