連載「公共を創る」第121回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第121回「行政・官僚への不信ーその内実」が、発行されました。

国民の政治への信頼感、今回は行政への信頼について議論します。かつて高い評価を得ていた行政と官僚が、近年評判を落としました。
現在の官僚への信頼低下の原因には三つの次元があると、私は説明しています。

その1は、倫理違反の問題です。破廉恥行為や汚職などです。特に幹部公務員の不祥事は目立ち、国民の信頼を損ねます。清廉といわれた官僚なのに、一部とはいえ汚職をしたり常識を超えた接待を受けたりしていることが明らかになり、信頼を下げました。「官僚バッシング」「公務員たたき」という現象も生みました。セクハラや勤務外の醜聞も報道され、官僚全体への信頼は低下しました。
これは個人の規律の問題です。

その2は、事務処理の失敗と政策の失敗です。前者は統計偽装や決裁文書の書き換えなど、求められた品質を満たす仕事をしていないことが次々と判明したことです。後者はうまくいかなかった産業振興や、無駄といわれる建設事業などが批判されたことです。安全と主張していた原発が大事故を起こしたことも、その一つでしょう。これは職場の問題と言えるでしょう。

その3は、国民の期待に応えていないことです。日本経済の停滞、社会の不安という現代日本の大きな課題を解決できていません。これまで通りに公共サービスやインフラ整備を進めても、個別の産業を振興しても、国民の不満に応えられないのです。それは、新しい社会の課題を拾い上げていないこととともに、新しい社会像を提示できず、政策・予算・人員をそれらに再配置できていないことです。社会の変化についていけず、自ら変化できないのです。これは官僚機構全体の機能不全の問題です。
その1とその2も大きな問題ですが、ここではその3について取り上げます。