アメリカ外交に見る官僚の重要性

12月2日の日経新聞オピニオン欄、ジャナン・ガネシュ(ファイナンシャルタイムズ・USポリティカル・コメンテーター)の「米の官僚「不在」、対中冷戦に影」から。

・・・米国が旧ソ連との冷戦に勝利するのにブルージーンズやロック音楽、ベルリンの壁の撤去を呼びかけたレーガン大統領の演説などが効いたと思うと喜ばしい。
もっとも冷戦で「封じ込め」政策を提唱したのは国務省のジョージ・ケナンだった。それを軍事的戦略に仕立てたのも同じ国務省のポール・ニッツェだ。中国をソ連から引き離す取り組みは1972年のニクソン大統領の中国訪問より何年も前から水面下で続けられていた。

政権交代に影響されない官僚が舞台裏にいなければ、米国がソ連を制することはできなかっただろう。裏方の努力で大局的な見地や揺るぎない方向性といった民主主義国家が独裁国家に対抗するうえで重要なものがもたらされた。
米国が今度は中国と向こう数十年、覇権を競うというなら「ディープステート(闇の政府)」が再び必要になる。ホワイトハウスの元ロシア担当フィオナ・ヒル氏や在ウクライナ大使館の参事官デービッド・ホルムズ氏など、トランプ大統領の弾劾調査で議会証言したような官僚たちだ・・・

・・・米国人でない筆者にはディープステート、つまり行政府は米国の宝のように思える。行政府は誰にでも開かれた民主主義を支える。先日、議会証言した人々のように勤勉で公共心が強く、専門的な資格を持つ官僚が大勢働いている・・・

公務員倫理法

国家公務員倫理法ができて、20年になるそうです。もう20年も経つのですね。
若い公務員は、なぜこの法律ができたか、その経緯を知らないでしょう。あなたたちの先輩(の一部)が、とんでもないことをしていたのです。それを防ぐために、こんな法律ができました。

去年、毎日新聞の取材に応じました。2018年5月23日「論点 国家公務員の不祥事」。そこでは、官僚不信を、3つに分類しました。一つは官僚機構の構造的問題、二つ目は官僚たちの仕事の仕方の問題、三つ目は個人の立ち居振る舞いです。倫理法はこの3番目に当たります。

国家公務員は毎年この時期に、インターネットで自習するとともに、自分で試験をしてその結果を、担当者に報告することになっています。
文字で読むとなかなか難しいのですが、わかりやすい「漫画の教本」ができました。

立派な新国立競技場、でもその周囲は

2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新しい国立競技場が完成しました。当初の案が変更になり、代案が採用されました。なかなか立派な施設のようです。例えば「読売新聞」。

ところで、写真を見て残念なことがあります。競技場は立派なのですが、すぐ隣にビルが建っているのです。このような巨大な記念碑的施設は、周りの景観も重要ですよね。
観客が写真を撮るときに、よけいな建物が入ってしまいます。それは、総理官邸も同様です。

「木と緑にあふれた杜のスタジアム」と言うようですが、周囲に木は少ないようです。
面積が二倍になったとのこと。その影響もあったのかもしれません。

ストレスを数字化する

12月3日の日経新聞、「強気デスク、上司に緊張  取材班、「心見える化」試す」から。あなたなら、どのような数字が出ますかね。

・・・テクノロジーで人間の心や精神の動きを浮き彫りにする「新しき理解者」が登場し始めた。個人の内面までをも数字で表すデータ化の波に、私たちはどう向き合っていくべきか。取材班は実際に最先端技術を試してみた・・・
・・・10月下旬、取材班は繊維メーカーのミツフジ(京都府精華町)から「ストレス値を計測できるシャツ」を貸してもらった。社内でも「気性が荒い」と評判の男性デスク(44)が真っ先に手を挙げ、そのままオフィス内で着用し始めてしまった。
シャツは胸部の裏地に「電極」となる銀繊維が縫い込まれている。これで心拍や心電データなどを測り、シャツに付けた小型送信機でスマートフォンにデータを送る。「ストレス値」は100点満点で見える化され、アプリでリアルタイムに確認できる・・・

・・・我らがデスクはどうか。計測し始めた途端、ストレス値は95と出た。会社が嫌いなのだろう。彼は気持ちを落ち着けるため、後輩記者と冗談を交わし始める。数値は38まで急降下した。
だがその10分後。直属の上司に声をかけられ、デスクのストレス値は再び89に急上昇した。上司がよほど苦手なのか、こわもてなのに案外かわいい。
デスクは「ストレスは自分では意識したことがなかった。数字で見えるのは面白い」とのこと・・・

・・・デスクの実験は1週間続いた。当初「家族といる時に数値が上がったらどうしよう」と心配していたが、休日は20~30台で安定。彼にとっても家は安息の場とわかりほっとした。
ただ実感と食い違うこともあったようだ。デスクが深夜、気分転換にマージャンゲームをやり始めると数値は95に跳ね上がった。勝負事に臨む緊張感がストレスと分析されたのだろう・・・

犯罪被害者基本法15年

12月1日の読売新聞が、犯罪被害者基本法15年として「事件の傷ケア 早く長く」を大きく取り上げていました。。犯罪被害者給付金支給法ができたのは、その前の1980年でした。
・・・犯罪に巻き込まれた人や遺族ら犯罪被害者の「権利」を明記した犯罪被害者基本法は1日、成立から15年を迎えた。深く傷ついた心身のケアに、加害者側に賠償を請求するための方策……。被害者を取り巻く環境は改善されてきたが、いまだ十分といえない。被害者の現状と課題を考える。
死傷者が年間2万5000人を超える犯罪被害者への支援は、事件直後に始まり、裁判後も続く。その流れと実態とは・・・

まだ、できて15年です。多くの方は、詳しくは知らないと思います。また、この法律の適用がない方がよいのですが。記事と共に図で、支援制度が解説されています。
・まず必要になるのが、心身の傷の治療です。
・事件現場が自宅だと、ホテルなどに一時避難したり、転居する必要があります。
・家事や育児ができなくなることもあり、その際は生活支援が必要です。
・裁判になると、弁護士の支援が必要です。

かつての刑事事件は、加害者を罰することで終わりました。しかし、加害者の社会復帰を支援し、再犯防止をすることが必要です(刑期を終えても、また起こす人がいます。自立できない人も多いのです)。
そして、被害者は、加害者からの賠償以外は、何の手当もありませんでした。
いまから考えると、冷たい社会でした。たぶん、以前は、親族や地域社会で助けることと理解されていたのでしょう。
これらの制度は、前進です。もちろん、このような支援を受けても傷は治りませんが。