復興状況視察、宮城県

10月10日、11日と、宮城県沿岸部に、復興状況視察に行ってきました。気仙沼市、南三陸町、女川町、石巻市、東松島市、仙台市、名取市です。昨年も秋に、宮城県と岩手県の被災地に復興状況を見に行きました。「1年に1度は来ます」と首長さんたちに約束しているので、今年もまず宮城県を訪ねました。

復興は急速に進んでいます。石巻市では、40か所を超える場所で、高台移転など宅地造成を計画していましたが、すべて完成しました。40か所と言えば簡単ですが、それはそれは大変な作業だったのです。当初は、か所数の多さに、「本当にできるのだろうか」と市の幹部と話していたことを、思い出しました。
ほかの市町村でも、高台移転の宅地造成と公営住宅の建設が終わりつつあります。まずは、住宅を優先したのです。
場所と規模を決め計画を作ります。あわせて住民の合意を取り付け、設計し、山を切り開いたり、土盛りをしたり。それから基礎工事です。ここまで来れば、後は早いのです。それで、この1年間に、次々と完成しているのです。

南三陸町と女川町では、町の中心部に土を盛って、かさ上げをしました。この工事も、ほとんどできています。かつて、高台にあった病院が、すぐそこの高さにあります。そこまで、周囲の土地がかさ上げされたと言うことです。初めて行った人は、その土地が元からの高さだと間違うでしょうね。
コンパクトできれいな町並みができています。仮設の商店も本設に移行し、予想以上にお客さんが来ているとのことです。町のにぎわいが戻りつつあります。もっとも、人口減少は続いていて、決して楽ではありません。

住宅やインフラ復旧が進むと、次の課題は産業となりわいの再開、コミュニティ再建です。そこで今回は、各地で民間の方にお話を聞いてきました。旧知の首長さんたちや新しく就任された首長さんとも、話をしてきました。仙台では、郡和子市長に。市長は、初期の頃に復興政務官などを勤めてくださいました。
現場は、行くとかならず勉強になります。それについては、改めて書きます。
今回も、宮城復興局の諸君が、現在の課題に沿った視察先を入れてくれました。そして、いつものようにびっしりと盛りだくさんに。ありがとう、皆さんも疲れたでしょう。

3連休

この3連休、皆さんはどのように過ごされたでしょうか。一部で雨の日もありましたが、多くの地域で天候も良かったようです。運動会や観光など、外出された人も多かったでしょう。サービス業など休みを取らずに働いている人たちに、感謝しなければなりません。
私は、久しぶりに展覧会のはしごをしたり、孫の相手をしたり。近くの児童公園も、私同様に、おじいさんおばあさんが大活躍。子育てに疲れている両親に代わって、孫の相手をさせられているのでしょうね。

知人から、「余裕があるのは、原稿が進んでいるのですか」との指摘がありました。はい。
連載「明るい公務員講座・中級編」は、右筆の助けも借りて、10月30日付け第40号(16日締めきり)まで出稿しました。中級編は昨年の10月から始めたので、1年続いたということです。
当初は、これだけも続けるつもりではなかったのですが。書き始めると、次々と書いておきたいことが思い浮かびます。38年間の公務員生活で経験したことや、思ったことで、後輩たちに伝えたいことが、連想ゲームのように出てきます。そして、断片的に考えていたことが、原稿にすることで整理できます。「ああ、こういうことだったんだ」とです。
まだ書くことはあるのですが、あと数回で、中級編はひとまず完結させる予定です。毎週締めきりが来るというのは、結構しんどいです。休日がほぼつぶれるのです。もちろん、締めきりがないと書けません。
大学授業の準備も、それなりに進んでいます。これも、1週間ずつの尺取り虫です。

政策から見た原発事故復興の方向

10月8日朝日新聞1面「問う2017衆院選」、大月規義・編集委員の「原発事故6年 直視されぬ教訓」から。
・・・政権は復興にあたる上で、福島を「沖縄にしない」「チェルノブイリにしない」という意図で進めた。米軍基地問題のような地元との対立は避ける。旧ソ連の事故処理のように原発を「石棺」にしない。福島原発の周辺にはいずれ人が住めると説き伏せた。除染や復興の予算、賠償金の上積みは惜しまなかった・・・

長谷川貴彦著『イギリス現代史』

長谷川貴彦著『イギリス現代史』(2017年、岩波新書)が、勉強になりました。
かつて、近藤康史著『分解するイギリス―民主主義モデルの漂流』(2017年、ちくま新書)を紹介しました(2017年7月2日)。後者は、民主主義の母国イギリス政治の変容を分析した本です。前者は、第2次大戦後のイギリスを、首相と政党・その政策の変化によって説明した本です。
ただし、狭い政党政治の世界だけでなく、それを生みだした社会の変化、あるいはその政策が変えた社会を説明しています。戦後の福祉国家とケインズ政策から、サッチャー首相に代表される新自由主義、そしてその延長としてのブレア首相の「第三の道」。二大政党制の機能不全。

社会は、経済成長を続けつつも、アメリカの台頭と帝国の解体による栄光の低下、ポンドの価値の低下が続きます。イギリス病とサッチャリズム。製造業から金融情報業への転換。リーマン・ショック。上流階級と労働者という階級区分が、中間層の増加で薄くなり、他方でアンダークラスと呼ばれる漏れ落ちた白人層が生じ、製造業の衰退は活力のない地域を生みます。移民の増加も、社会を変えていきます。既成秩序に異議を申し立てる若者、パンクロック。スコットランド独立運動、北アイルランド問題。
社会の亀裂、地域の分裂。それを、政治がどのように扱っていくのか。やはり、イギリスは一つのお手本です。

イギリス社会の変化を分析した本としては、アンドリュー・ローゼン著「現代イギリス社会史、1950-2000」(2005年6月、岩波書店)を紹介しました。これも、伝統と秩序の国が大きく変化したことを、様々な分野から分析しています。

本書は、新書という制約の中で、というか新書という形の故に、わかりやすい時代区分と、鮮やかな切り口で、イギリス社会と政治の変化を説明してます。分厚い本より、この方がわかりやすいですよね。もちろん、大胆に特徴づけ分析するのは難しいことです。
戦後の日本社会、あるいはもう少し時期を絞って高度成長期以降の日本社会の変化を、簡潔に分析した本はありませんかね。社会がどのように変わったか、その際に経済や政治がどのように関与したかです。そこを、どのような角度から切り取るか。そこに、筆者の力量が示されます。

運慶展

上野の東京国立博物館に、「運慶展」を見に行ってきました。良かったです。
800年前(1200年頃)に、これだけすばらしい彫刻があったのです。奈良や京都の仏さんは、現地のお寺で見ているのですが、解説付きの美術品としてみると、また違いますね。照明を落としてあるとは言え、博物館ではお寺より間近でよく見えます。お勧めです。

四天王像の手や足の躍動感は、すばらしいです。仏様はお顔は穏やかで、体は衣をまとっておられるので、仏師の勝負は顔つきになります。しかし、四天王像になると、甲(よろい)は技巧としても、筋肉や指先がでてきます。しかも、剣闘士ですから、武器を持ったり力を入れているのです。仏様の静に対して、これらは動です。
あり得ない話ですが、運慶が、西欧の女神像やダビテ像のように裸体の像を造ったら、すばらしいものができたでしょうね。ミケランジェロと勝負して欲しかったです。ミケランジェロも、運慶の作品を見たら、お手本としたでしょう。
最も大きな作品である、東大寺南大門の仁王像は、運んでこられていません。ちょと無理ですかね。

無著、世親像は、数年前興福寺北円堂で見てきました(。天灯鬼と竜灯鬼は、好きなので、仕事場にミニチュアを飾っています()。
四天王の足に踏みつけられている餓鬼たちも、興味があります。子どもの頃、友達と「おまえにそっくりだ」と言って、からかっていました(笑い)。でも、多くの場合、餓鬼たちはかなり手抜きをされています。上に立っている四天王像に比べ、リアル感が少ないのです。多分、お弟子さんが作ったのでしょうね。

もう一つ勉強になりました。1186年を鎌倉時代と表示してあります。1192年が鎌倉幕府が開かれた年(いいくにつくろう)と覚えていたのですが、近年は1185年頃を鎌倉時代の初めとしているのですね。