笛吹中年

トップページの絵「笛吹き中年」に関してお答えします。

画は棚瀬佳明画伯、画像技術は荻布彦技師(富山県庁)です。
39歳にして、フルートを始めました。40の手習いです。富山では、厳しい部下のもと(アンサンブルでは私が一番下)、毎週「放課後」の練習、月に2回の老人ホーム慰問演奏で、少し吹けるようになりました。

その他、お茶(藪内)とお花(池坊)も教えてもらいました。現在は休眠中です。藪内のお茶は、武家点前の豪快なお茶です。NHK教育テレビ「趣味悠々」平成16年6月(月曜日)は、「心の旅へのいざない」という題で、「藪内家」の茶の湯です。恥ずかしながら、私も藪内流です。でも最近は機会もなく、すっかり作法を忘れてしまいました。ふくさなどは、職場においてあるのですが・・。お師匠さん、申し訳ありません。頭を下げることは、日々「実践の場があり、技を磨いて」います。そのほかにも、ときどき部屋でお香をたいて、来た人に不審に思われています。(2004年6月5日)
藪内家のお茶は、NHK教育TV「趣味DO楽」2014年8月「茶の湯 藪内家“織部も親しんだ茶の魅力”」、Eテレ「趣味どきっ」2018年3月「茶の湯 藪内家」でも放送されました。

トランプ現象を支えるもの

10月9日の読売新聞、フランシス・フクヤマさんの「トランプ氏”善戦” 中間層根強い不公平感」から。
・・・彼のような大衆扇動型候補の台頭は、英国が国民投票で欧州連合(EU)脱退を決めたのと同様、決して驚くべきことではないからだ。
過去10年以上にわたり、米国でも欧州でも、政治エリートたちは大きな間違いを重ねてきた。米国の場合、イラクとアフガニスタンという二つの不人気な戦争に突入し、大恐慌以来最大の金融危機の下地を作り、庶民を傷つける一方で、自分たちは利益を得た。欧州では、共通通貨ユーロと域内移動を自由化したシェンゲン協定という、課題が多い二つの制度が、米国と似たレベルの大混乱を引き起こしている。
これらの経済的動揺の深刻さを見れば、2008年の金融危機を契機に、もっと早くポピュリズム(大衆迎合)が主要政治勢力となってもおかしくなかった。むしろ驚くべきは、これほど長い時間がかかったことである・・・

10月7日の読売新聞、竹森俊平・慶應大学教授の「米大統領選 自由貿易に影。決められない政治 怒りの矛先」から。
・・・トランプ氏は無知をさらけ出しているのだが、無知を恥じて勉強する代わりに、「知識を持った専門家が米国をダメにしている」という論理を振り回す。
それが彼の一番の問題だ。しかし、「白人、高齢者、低学歴」の国民層にはかえって受けるのだ。これほど米国社会の分裂を深刻にした大統領候補はいない・・・
・・・米国民の不満が今回の選挙を動かしていると言われる。しかし、米国経済は、政治が安定している日本と比べても、はるかに良好で、さらに改善しつつある。不満の原因は「経済」ではなく、何も決められない米国の「政治」だろう・・・(2016年10月15日)

原発事故と心の健康、2

昨日、(原発事故と心の健康)を書きました。読売新聞10月6日「医療ルネサンス。福島 回復する力」に載っている、前田正治教授のインタビューを書くのを忘れていました。
・・・全体としては回復に向かっているいるものの、過去の自然災害と比べると、その歩みは遅い。中には悪化している人もいます・・・
・・・回復を阻害する二つの要因も、最新の研究で見えてきました。放射能に対する不安が強い人、高齢な人ほど抑うつ傾向が高くなる傾向があります。不安を持つのは当然なこと。ただし、心身の健康を損なうほど自分を追いつめないでほしい。また、家族や友人、近所づきあい、支援者との関わりなどが乏しい人ほど回復が遅いことも明白です・・・(2016年10月14日)

保守とは何か、2

朝日新聞10月7日、佐伯啓思・京大名誉教授の「保守とは何か 奇っ怪、米重視で色分け」の続きです。
・・・ところが話が混沌としてくるのは、アメリカが現代世界の中心に躍り出てきたからである。いうまでもなく、アメリカは王制というイギリスの政治構造や伝統的価値を否定して革命国家を作り出した。「独立宣言」にもあるように、その建国の理念は、個人の自由や平等や幸福の追求の権利をうたっている。
その結果、もしもアメリカの建国の精神という「伝統」に戻るなら、そこには、個人の自由、平等、民主主義など「リベラル」な価値が見いだされることになる。かりに伝統への回帰を「保守」というならば、アメリカの「保守」とは、自律した個人、自由主義、民主主義、立憲主義などへ立ち戻ることである。ここに宗教的・道徳的価値を付け加えればよい。これに対して、「リベラル」は、20世紀の多様な移民社会化のなかで、文化的多様性と少数派の権利を実現するようなひとつの共同社会としてのアメリカを構想する。ここに、イギリスなどとは異なったアメリカ型の「保守」と「リベラル」の対立が生まれたのである。
ということは、本来のヨーロッパの「保守」からすれば、アメリカは自由、民主主義という普遍的理念の実現を目指す「進歩主義」の国というほかない。伝統を破棄して革新的な実験に挑むことが「進歩」だとする意識がアメリカには強い。こうした進歩主義を警戒するのが「保守」だというなら、アメリカには本来の意味での「保守」はきわめて希薄なのである。
さて、それでは日本はどうなのか。われわれは、アメリカとの同盟を重視し価値観を共有する者を「保守派」だという。安倍首相が「保守」なのは、まさしくアメリカとの同盟重視だからだ。するとどうなるか。アメリカと協調して自由や民主主義の世界化を進め、たえざる技術革新によって社会構造を変革することが「保守」ということになる。
これはまったく奇怪な話であろう。構造改革にせよ、第4次産業革命にせよ、急進的改革を説くのが「保守」だというのだ。もともと既成秩序の破壊、習慣や伝統的な価値の破壊を説き、合理的な実験によって社会を進歩させるという革新主義は「リベラル」の側から始まったはずなのである。それが「保守」へと移ってしまい、リベラルは保守に吸収されてしまった。
私は、「保守」の本質は、近代社会が陥りがちな、急激な変革や合理主義への抵抗にある、と思う。それは、社会秩序を、抽象的な普遍的価値に合わせて急激に変革するのではなく、われわれの慣れ親しんだ生活への愛着を大事にし、育ってきた文化や国の在り方を急激には変えない、という精神的態度だと思う。そして、この「本来の保守」の姿が今の日本ではみあたらないのである・・・(2016年10月14日)

原発事故と心の健康

10月13日の朝日新聞オピニオン欄は、前田正治・福島県立医科大学教授へのインタビュー「福島、5年後のこころ」です。
原発事故では、放射線を浴びることで亡くなった方は、おられないようです。また、放射線が原因で身体的病気になられた住民も、おられないようです。しかし、放射線に対する心配で健康を害された方、避難生活で健康を害された方がたくさんおられます。
「震災から5年半がたちました。原発事故被災者の心の健康はどんな状態ですか」という問に。
・・・ゆっくりとした回復を示すデータと同時に、深刻な事態を示すような相反するデータもあり、二極化の様相を示しています。県内で避難指示が出た市町村に住んでいた21万人の健康調査を毎年行っていますが、うつ病の可能性がある人の割合は、2012年から4年間で14・6%から7・8%に下がりました。全国平均は約3%ですからまだまだ高いですが、減る傾向にはあります。ただ、岩手、宮城では急減した震災関連自殺は、福島では依然として多く、累計で80人を超えました。アルコール摂取に問題を抱える男性も2割前後で横ばいが続いています・・・
「原発事故は、心の健康にどう影響しているのでしょう」という問に。
・・・放射線への不安が広く深い負の影響を与えています。一つは、直接的な恐怖体験からくるストレス障害です・・・より深刻なのは、放射線被曝の遺伝的な影響を心配する被災者が、減ったとはいえ今なお4割近くいることです・・・
断片的な報道はありますが、この記事のように、詳しく取り上げた記事は少ないようです。ぜひ、原文をお読みください。(2016年10月13日)