有名銘柄と無名の商品。質とブランド

滝田洋一著「世界経済大乱」(2016年、日経プレミアシリーズ新書)に載っているエピソードをもう一つ。
バレンタインのチョコレートを2枚もらったトヨタ自動車の豊田章男社長。ブランド名を伏せて、味を試してと言われました。1枚は日本製、もう1枚はベルギー製。豊田社長は日本製の方がおいしく感じます。ところが値段は10分の1だったそうです(p226)。
目隠しテストをして、有名な銘柄と無名の商品の評価が反対になることは、しばしばありますよね。そこが有名ブランドの「価値」なのでしょう。いずれ、後発の良い商品に負けるでしょう。あるいは、後発の良い商品も販売戦略を考えて、市場での価値を高める必要があります。

経済の動きを測る、構造変化への対応

滝田洋一著「世界経済大乱」(2016年、日経プレミアシリーズ新書)から。
企業が投資として認識している範囲と、政府のGDP統計での投資の範囲がずれているのです(p234)。GDPでの投資は、建物や機械などの有形固定資産(約58兆円)とソフトウエアなど(約11兆円)の合計68兆円です。無形資産の多くが、こぼれ落ちています。例えば、研究開発投資(15兆円)、ブランド力や技術力など「経済的競争能力」が7兆円です。そこでも紹介されていますが、グーグルやアマゾンの価値は、コンピュータとその施設設備ではありませんよね。このほか、海外の子会社の株式取得や企業買収も、企業にすれば投資ですが、政府の統計からは落ちています。この話は、既に新聞に書かれているので、読まれた方もおられるでしょう。「設備投資とは何か 食い違う政府と企業の認識」(日経電子版、2016年1月4日)。新聞記事には、範囲のズレが図になっているので、記事本文と一緒にそれをご覧ください。
少し話はずれますが、産業の3分類も今や機能を発揮しません。習いましたよね。第1次産業=農業、林業、水産業など。第2次産業=製造業、建設業など。第3次産業=情報通信業、金融業、運輸業、販売業、対人サービス業など。わかりやすいです。
しかし、近年の産業別のGDP構成比は、第1次産業が1.2%、第2次産業が23.9%、第3次産業が74.9%です。1.2%と75%を比べても、有意な結論は出ないでしょう。もっと違った分類基準が必要です。それぞれの指標は、考案されたときは威力があるのですが、構造が変化すると、新しい物差しが必要です。

アメリカ人の意識調査、日本は謝罪したか

先日紹介した、滝田洋一著「世界経済大乱」(2016年、日経プレミアシリーズ新書)から、興味深かった点を紹介します。
アメリカの有力シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが、2015年2月に実施したアメリカ人への意識調査結果です(p176)。アジア太平洋地域の主要4か国について、信頼できるかの問です。オーストラリアが80%、次いで日本が68%、韓国は49%、中国は30%です。
興味深いのは、第2次世界大戦の謝罪についての問です。三者択一で、日本は「十分に謝罪した」が37%程度、「謝罪は不要」が24%程度、あわせて61%です。他方、「不十分」が28%程度です。ドイツにも同じ質問をしています。「十分に謝罪した」と「謝罪は不要」をあわせて、54%です。「謝罪が不十分」は、37%程度あります。
日本では、「ドイツはよく謝罪したのに、日本は不十分だ」との意見をマスコミで聞きますが、この調査に関する限り、そうではないのですね。その後「改心」して、アメリカの言うことを聞く「優等生」日本と、必ずしも言うことを聞かないドイツとの差でしょうか。

熊本地方の地震

熊本県で、引き続き大きな地震による被害が出ています。一刻も早い救出が行われ、避難者への支援が行われることを期待しています。近年の大きな地震や津波の経験から、初動、救助、支援のノウハウが蓄積されました。とはいえ、現場の被災者と自治体にとっては、初めてのことが多いでしょう。インフラ復旧とともに、いえそれ以上に、被災者の生活支援が重要なのです。特に、災害弱者といわれる人たち、高齢者、乳幼児、障害を持った人、入院中の人、持病を持った人などへのきめ細かい対応、それも継続した対応が必要です。