明るい公務員講座、第19回

連載「明るい公務員講座」の第19回が発行されました。今回は「やってみよ―職場の技能を磨く」の第2回目で、「話す技術」その1です。
しゃべることは、子どもの時からやっていますから、特段の訓練を受けなくてもできます。それが、間違いの元です。しゃべることと、考えを伝えることは、別のことなのです。親しい者の会話は、親密さの確認です。主語は必要ありません。「私はあなたが好きです」とは、言いませんよね。「好きです」でしょう。それに対し、仕事場での対話は、事実を正確に伝えることが必要で、主語と述語と目的語が必要です。「私は、第2案に賛成です」とか。あなたが思っているほど、意思は通じていません。あなたも夫や妻に、「そんなこと言っているんじゃないわ」と、叱られたことはあるでしょう。今回の内容は、次の通り。
話してみよう書いてみよう、話すことは難しい、会話と対話の違い、何を伝えたいのか、「雄弁は銀、沈黙は金」ではない。
ところで、先日お会いしたある町長が、「連載を読んでますよ。カーネギーは、私も大学の時に、恩師に勧められて読んだんです」と言ってくださいました。私は、「へえ、私は役人になってからです」と答えたら、「全勝さん、それは遅い」と、笑われました。

検証なき国は廃れる

4月24日の日経新聞政治コラム「風見鶏」秋田裕之編集委員の「検証なき国は廃れる」から。
イギリスのブレア首相は2003年、イラク戦争に参加します。しかし、参戦する理由だった大量破壊兵器は、見つかりませんでした。イギリスでは、2009年に独立調査委員会が作られ、8年かけて検証を終えました。尋問に応じた要人は、ブレア首相を含め100人を超えます。
一方のアメリカは、イラク戦争だけでなく2001年の同時テロの教訓も、独立調査委委員会で洗い出し、それぞれ600ページの報告書を10年前に出しています。日本は戦争には参加しませんでしたが、支持しました。
・・・日本はなぜか、失敗を深く分析し、次につなげるのが苦手だ・・・元幹部を含めた複数の外務省幹部によると、これらを正式に調べ、総括したことはないという。多くの人が原因にあげるのが次の2点だ。
*日本人の性格上、失敗の責任者を特定し、批判することを好まない。
*これからも同じ組織で働く上司や同僚の責任を追及し、恨まれたくないという心理がみなに働く。
同省にかぎらない。日本の組織には多かれ少なかれ、こうした「ムラ的」な風土がある。ならば、ときには第三者が必要な検証をしていくしかない。国家の場合、その役割をになうべきなのは立法府である・・
太平洋戦争中の日本陸海軍が、検証と責任追及を怠ったことは、有名です。例えば、「失敗の本質」。
論旨の展開を無視して、ごく一部を引用したので、原文をお読みください。

木寺准教授、政治学入門書

木寺元・明治大学准教授が、『政治学入門』(2016年、弘文堂)を出版されました。若手研究者による共著です。編者の狙いは、次のようなものです。
・・・「政治現象と政治学を結びつける」というコンセプトのもと、政治現象を考える上での道具として、政治学のものの見方を届けます。
今の政治現象に関する具体例を用いながら、政治の仕組みの説明と、政治学の分析の基本的な方法の解説を融合させることで、政治学を使うと政治現象がどう見えるかを、わかりやすく説明します・・・
このような本は、重要ですね。政治学者向けに、世界の最先端の学問状況を知らせることも必要ですが、多くの有権者と有権者予備軍は、そんな「最先端のこと」は必要ありません(知りたい人は、それらを読めば良いのです)。
それよりは、今の日本の政治をどう学問的に分析するのか。そちらの方が、現在日本の政治に関心を持ってもらうために有用です。そして、政治を「本業としない」大学生たちに興味を持ってもらうこと。この狙いは、なかなか難しいです。各分野の最先端の研究を並べて、「政治学入門」とする方が、簡単ですから。
ところで、しばしば雑誌も新聞も、「日本の政治はダメだ」と書き募ります。それを毎日聞かされたら、国民も「日本の政治はダメなんだ」と思い込みます。戦後70年間、メディアや学界が「国民を教育した」結果がこれです。
すべてを肯定することも、すべてを否定することも、ともに正しくありません。良いところはよしとし、悪いところを指摘して代案を出す。そろそろ、成熟した言論の世界に入って欲しいです。そうしないと、進歩はありません。
すべてを否定することは、楽なんですよね(脱線。そのような論調を書いている人は、子どもたちをどのように教育しているのでしょうか。良いところを誉めなければ、子どもは育ちません)。

資料整理

今日日曜日は職場へ行って、書類の整理。引っ越しが、28日に迫っています。平日は集中できないので、意を決して取りかかりました。同僚の中にも、同じ考えの職員がいて、書類を捨てていました。休日は職員が入ってこないので、はかどりますわ。発災の年から数年は、休日でも職員の攻撃に遭っていました(苦笑。懐かしいです)。
5年間の間に、たくさんの半封筒に入った書類がたまっています。「明るい公務員講座」で、「不要な資料は、捨てましょう」とお教えしているのに、これではダメですね(反省)。棚の中にあるので、測ると合計で2メートルほどでした。段ボール箱に4箱ほどでしょうか、たいしたことないですね。
まずは、分類です。先日も書きましたが、仕事そのもの書類は、多くないのです。いくつか手元に置きたい書類(といってもコピーです)を除いて、基本的に部下に返すことにしています。私しか持っていない書類はありません。行政文書ではない、私の考えを整理するメモや資料です。すべて捨てても良いものです。大きく分類すると、次のようなものでした。
1 仕事の進め方。その時々に、課題を整理して、今後の進め方を考えたメモが残っています。「すること」「当面の課題」「中長期の課題」といった表題がついた半封筒です。済んだものばかりですし、その結果は仕事としてできているのですから、捨ててかまいません。
私の5年間の仕事は、一つにはこれだったのですね。課題を整理し、進め方を考えることです。これは、半封筒の中身を見ると、回想にふける恐れがあるので、今日はひとまずそのままに。
2 次は、仕事関係A。例えば、企業やNPOとどのように連携するか。これを、5年間試行錯誤してきました。また、具体の実践の場である、産業再生やコミュニティ再建関係もあります。「民間との連携」「新しい行政手法」と書かれた半封筒です。これまでにない行政をどう進めるか、その考え方や具体例の資料です。
行政としての資料は担当者が持っていて、公表資料は復興庁のホームページに載せてあります。私の考えは拙著『復興が日本を変える』に書きました。そして、成果は現場で出ています。また、関係者もこの連携手法を学んでくれました。
私の試行錯誤の過程です。「こんなことをしていたんだ」と思い返しつつ、廃棄。
3 次に、講演資料。まあ、あるわあるわ。良くこれだけもしゃべりに行ったんだなと、自分で感心するほどです。英語やアラビア語のものも。一つの半封筒に、1~4か所のレジュメと資料が入っています。最近半年分を残して、廃棄。
いくつかの基本的なものは、職場で(デジタルで)保管してもらってありますし。
4 さらに、仕事関係B。Aよりは仕事と離れますが、行政のあり方を考える資料です。新聞切り抜きや、その時々に書いたメモ。これも、様々なものがたまっています。これは、自宅へ。
5 仕事関係で買った本や頂き物の本。う~ん、これも結構たまるのですよね。
だいたい分類できました。残すものだけ、箱に入れて運んでもらいましょう。

美術展巡り

先週は、上野の西洋美術館「カラバッジョ展」へ。すごい表現力ですね。なかなか血の気の多い画家だったようです。今日は、山種美術館の「奥村土牛展」と、出光美術館の「伴大納言絵巻」をはしご。
カラバッジョにしろ絵巻物にしろ、良く保存されましたねえ。宗教関係の書画や巻物は、寺社で伝世するでしょう。源氏物語絵巻などは、上流階級のお姫様たちに大切扱われるのでしょうね。でも、伴大納言絵巻は、誰がなんのために書いて、どのように観賞したのでしょうか。