グローバル化と国家の役割、2

(政府の役割)
その際に、国家(政府)は何をするべきか。私は連載「行政構造改革」以来、「政府(中央政府と地方政府そして官僚)の役割は何か」を考えていて、その一環として、この本を読みました。
これまでは、日本の課題や政府の機能をどうするかを考えていたのですが、日本が抱える課題は国内だけで生じるのではなく、国際環境によるものも大きくなりました。例えば、地域産業を考える際に、国内の条件だけを考えていても解決になりません。国内で企業誘致をしておれば良い時代では、なくなりました。企業は世界で勝負し、工場はアジアにそして世界に出て行きます。
経済などが国際化したことによって、国家が対応できる範囲や、国家が打てる有効な手段が狭まりました。国内の課題を解決することは、国家(中央政府)の任務でしたが、一国の政府だけでは解決しないのです。
他方で、世界政府は、まだ視野に入ってきません。EUが、その実験を進めていますが。もし遠い将来に世界政府ができたとしても、地球規模の人口と面積、そして異なった経済段階の区域を抱えて、有効な政策は打てそうにもありません。
(政府間の競争)
国家(主権国家体制、Nation State System)を前提として、国家(政府)が、国際問題と国内問題を解決していくしかありません。市場経済だけに任せておいてはうまく行かないことが、国内経済でも国際経済でも明白になりました。もちろん、経済界に求められることも、変わってきました。
世界規模の経済合理性だけで、行動することが果たして良いことか。これが、東西冷戦終結後の20年間で、わかったことです。バブル崩壊後の日本が直面したデフレや「失われた10年」という言葉は、この状態に重なっていました。ある意味で、先進諸国のさらに先端を行っていたのです。
日本政府にも官僚にも経済界にも、新たな大きな課題が出現しています。私が繰り返し主張しているように、「日本国家と国民が、明治以来の追いつけ追い越せ路線に成功し、次の課題設定に迷っている」という大課題は、より大きな規模で「世界規模での文明の曲がり角」とシンクロしつつ、私たちに対応を迫っています。
もちろん、このような課題なので、世界各国が、条件は違いつつ同じ課題と取り組んでいます。どの国が、この競争に勝つのか。経済についての新しいモデルを提示することと、国民と社会へ新しい政策を打つことの競争です。

朝も土砂降り

東京は最近、夕立がひどくてと、書きました。今朝は、朝からすごい通り雨でした。家を出たときは晴れていたのですが、地下鉄が四谷の駅(ホームが地上にあります)に着いたら、土砂降りです。困ったなと思いつつ、溜池山王駅まで来て、地上に出たら、雨はやんでいました。出勤していた職員に聞いたら、えらい目に遭ったそうです。傘を差しても、ずぶ濡れになったそうで。
アメダスの雨雲情報が、わかりやすいです。雨雲が雨の強さで、青、黄色、赤で表示されます。10分ごとに更新され、また2時間分の動きが、さかのぼれるのです。優れものです。

物作り以外の日本の売り物

8月3日の読売新聞経済欄連載「コンビニ新時代」が、「日本流、アジアに拡張」と、日本のコンビニがアジアに進出していることを解説していました。セブン・イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社で、アジアには4万店を展開し、さらに拡張しようとしています。
日本というブランド、日本流の丁寧なサービス、そして品揃えなどのノウハウが、強みなのでしょう。もっとも、記事では、他国企業との比較が載っていないので、どの程度日本が勝っているのか、わかりません。
日本は、これから国際競争において、何で勝ち抜くか。既に、電気製品や半導体などは、中国と韓国に追いつかれ、追い抜かれつつあります。40年前に、日本がアメリカや西欧各国の工業製品に追いつき勝ったことが、繰り返されています。
製造業では、諸外国のさらに先を行くこと。自動車や工作機械などは、これで勝ち残っています。これからも、頑張ってもらいたいです。例えば、伊丹敬之著『日本企業は何で食っていくのか』(2013年、日本経済新聞出版社)。
ところで、製品の競争というと、「安くて良い製品」で勝負しますが、そのような発想でなく、もう1つ次元を上乗せした「強み」があると思います。製造業の世界で同じ土俵(安くて良い)では、勝負しないのです。
それは、日本が持つブランド、安全と安心、ノウハウです。今回紹介したコンビニも、ものの輸出ではありません。ノウハウです。インドネシアなどで、ヤクルトレディが活躍していますが、これもノウハウでしょう。日本のミネラルウオーターが、中国やアジアに輸出されているとのこと。これは安全でしょう。
日本でも同等以上のモノを作ることができるのに、日本人があこがれる西洋のブランドもの。時計、鞄、ウイスキーなどなど。アメリカは、製造業の多くが空洞化しても、航空機産業などの先端的物作り、インターネットを使った商売、ハリウッド、医薬品などで、他国を寄せ付けない強さを作り続けています。製造業の分野で日本に負けた西欧各国が、生き残りをかけた道です。
安くて良い商品で競争するだけでなく、高くても買ってもらえるもの。それは、日本ブランド、安全と安心、ノウハウです。クール・ジャパンも、そうです。漫画、アニメなど。製造業が産業の核であることは違いないでしょうか、物作りだけが産業ではないのです。
私が指摘する以前に、識者は主張し、挑戦しておられると思いますが。

グローバル化と国家の役割

木村雅昭著『グローバリズムの歴史社会学ーフラット化しない世界』(2013年、ミネルヴァ書房)を、先週ようやく読み終えました。寝転がりながら読むには、ふさわしくない本と思いつつ。
(グローバル化は失業者も作る)
インターネットの急速な普及と、東西冷戦の終結に続いた金融・経済・産業の国際化(グローバル化)によって、情報、お金(金融)、モノ(製品)、産業(物作り)が、国境をものともせず行き来することになりました。国際化とかフラット化と呼ばれています。しかし、それが国民みんなを豊かにし、幸せにするか。どうやら、そうではないようです。成長を続ける国や産業と、そうでない国や産業とに分化しています。国民にあっても、それを利用して豊かになる一部の人と、他方で失業したりより貧しくなる人に分かれます。
(急速な変化に対応できない。格差を拡大する)
情報、カネ、モノが国境を越えるとき、地域の産業や人が、世界規模の市場経済と直接対面することは、大企業や一部のエリートを除いて困難なことです。それは、これまでの国内経済にあっても同様です。全ての地場産業が、国内市場と向き合っていたのではありません。大手の取引先を通じて国内市場とつきあい、あるいは地域経済の中で頑張っていたのです。突然、「国際市場で競争せよ」と言われても、無理です。アマゾンで、世界中から品物を輸入できることは、消費者にとっては便利ですが、地元の本屋や商店を寂れさせます。
一方に冷徹な経済合理性の市場があり、他方で生身の人間の暮らしがあります。地域の産業や人は、そう簡単に海外に移住することは、できないのです。また、労働者はそう簡単に転職できません。農家も、すぐには栽培する作物を、変えることはできません。
国際競争に負ける地場産業、それによる大量の失業者、国内での好調な産業・地域とそうでない産業・地域、貧富の格差の拡大・・。世界各国で生じている事態です。
この項、続く

法学部を重用する会社と社会

朝日新聞8月4日、「日曜に想う」山中季広記者の「強さ・速さ・美しさ、囲碁が映す三国志」から。かつて日本が圧倒的に強かった囲碁が、今や中国、韓国、台湾に追い抜かれたことを紹介した後に、次のように書かれています。
・・わずか四半世紀ほどの間に、勢力が日韓中→韓日中→中韓日と移ったわけだが、この興亡順は多くの産業でも見られた。とりわけ製鉄や半導体など、日本がかつて優位を誇った業種が、同じ経過をたどっている。
たとえば造船業界をみると、日本は50年代半ばから完工トン数で世界一を保った。後発国に技術を教える立場だったが、その韓国が2000年に日本を抜く。11年後、中国国営企業群が韓国から首位を奪いとる。
「囲碁も造船も同じ。日本が100年以上かけて築いた高みを、韓国は20年ではい上がる。中国はわずか10年で抜き去るのです」と話すのは、海外職業訓練協会アドバイザーの小川真一さん(67)。造船マンで、工業技術の海外転職に詳しい。囲碁ファンでもある。
ソウルやロンドンに駐在した経験から、痛感したことが一つあると言う。「中韓に比べると、日本は理工学部卒のエンジニアを大切にしない。会社でも政治でも、日本は法学部卒を重用しすぎる。ものづくり業界が学生に不人気なままでは、政財界の中枢にエンジニアが多い中韓に対抗できません」
言われて、法学部卒の私は答えに窮したが、日韓中→中韓日の荒波をかぶった世代ならではの気迫を感じた・・
私も法学部卒ですが、思い当たる節があるので紹介します。