日本料理職人の養成

読売新聞「時代の証言者」は、美濃吉の佐竹力総(さたけ りきふさ)社長です。8月27日に、調理人の養成について書かれています。
和食店では、厳しい徒弟制度のイメージがあります。また、何年修行して、どのくらいの技術を身につけたら一人前になるのかわからないことも、不安材料です。美濃吉では、独自のカリキュラム制度を設けて、従来の約半分の8年間で、調理長を育てるのだそうです。
・・調理人を目指して入社した社員にはまず、「調理社員課業一覧表」というノートが渡されます。衛生管理、漬物の処理、炊飯、魚の下準備、揚げ物、焼き物、煮物、食器の盛りつけ、原価計算、献立の作成、部下の管理・指導など、簡単なものから順に17項目の課題と、課題を何年目に習得すればいいかの目安が記されています。
1人で悩まないように、新入社員には、料理長による個別カウンセリングや集合研修の場を作ったので、退職者が減りました。
すべて終了すれば、晴れて美濃吉の料理長に。高級業態の本店竹茂楼と東京の新宿店は別格ですが、その他18店舗のどこかを任されます。20代で抜擢された社員もおります・・

この世界にも、このような「近代化」「見える化」を、導入しておられるのですね。しかも、調理の各分野だけでなく、衛生管理や原価計算、さらに献立の作成、部下の管理・指導まで。確かに、料理長になるには、それらも必要ですね。調理の腕が良いだけでは、良い料理長になれません。私は別の世界にいますが、勉強になります(参照『明るい係長講座』中級編p20「口伝よりマニュアル」)。
「企業秘密」でしょうが、一度そのノートを、見せてもらいたいものです。もちろん、もっとも肝心な「調理の腕前」は、マニュアルだけでは教えられない、身につかないのでしょうが。
また、料亭では、派遣業者から職人を派遣してもらう形態が多いと、かつて聞いたことがあります。その点については、次のように話しておられます。
・・調理人の自社育成を始めたのは父です。1960年代後半、京料理界では前代未聞の大改革でした。
といいますのも、当時、「入れ方」という調理人派遣業者から、2、3年単位で派遣してもらうのが一般的でした。「包丁一本さらに巻いて」を地でいく職人の頭が、弟子数人を率いてチームでやって来ます。宴会の途中でお客様から料理に文句がついて、調理場に伝えたとしましょう。腹を立てて、「なら、上がらせてもらいます」と、仕事を放棄し、チームごと引き揚げてしまうことがありました。「総上がり」といって、本当に困りものでした・・