富永茂樹著『トクヴィル-現代へのまなざし』(2010年、岩波新書)を読みました。近年、トクヴィルがよく取り上げられます。極端に簡略化すると、自由と平等が進んだ社会がどのような病理を生むか、という視点からでしょう。19世紀前半に生きたトクヴィルが、現代を予測していたという視点です。宇野重規先生の著作も、かつて紹介しました(2010年5月5日の記事)。
富永先生のこの本も、鋭い切り口から、トクヴィルの著作と思想を分析しておられます。学生時代に、『アンシャンレジームと大革命』と『アメリカのデモクラシー』を読みましたが、こんなに深く考えが及びませんでした。前者はフランス語と英語で読み、後者は私にとって読みづらい翻訳だったというのが、言い訳です。その後、両方とも、読みやすい訳が文庫本で出たので、言い訳ができなくなりました(苦笑)。
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規制改革の経済効果
2010.10.06
今日は、慶応大学授業の2回目。100人あまりの学生が、聞いてくれました。授業の内容も、本格的な部分に入り、だんだん調子が出てきました。学生の目を見ていると、「ここは興味を持って聞いているな」ということが、良くわかります。大事な話なのに反応が今一つの場合は、例を入れ替えたりして、もう一度話すようにしています。
学生とも、歯車がかみ合ってきました。笑ってほしいところで、笑ってもらえましたから。もっとも、40歳前後の自治大の研修生を相手にしゃべるのと、20歳の学生さんを相手にしゃべるのでは、勝手が違います。小話をしながらも、「これは20歳の人には受けないなあ・・」と、反省したり。
私にとって人前でしゃべることは、毎回、これまでに得た知識と経験を総動員し、全身全霊を尽くして行う、真剣勝負です。観客の反応を探りつつです。「あれもお話ししたい」「これも教えておきたい」ということが、次々と頭に浮かびます。必要なことはレジュメに書いておきますが、それは市販されている教科書を読んでもらえばよいことです。書かれていないこと、授業ではそれも重要なのです。
今の学生さんは、まじめです。ほとんどの人が居眠りもせず、聞いてくれます。
残念ながら、来週(10月13日)は、本務が外せず、休講にします。今日配った資料は、20日に使うので、持ってきてください。
止まらない公共事業
15日の朝日新聞社説は、「何のための半世紀だった」として、徳山ダム建設について次のように指摘しています。
・・多目的ダムというのに、発電の施設もなければ、水道水や工業用水を取り込む設備もないままだ。「洪水対策に役立つ」というが、それだけならもっと小さなダムでよかった。
なぜ、こんなことになったのか。時代が移り、電力や水の需要が予想ほどには増えなくなったのに、引き返すことなく、過去の計画をそのまま進めたからだ。費用と効果のバランスを考えず、役所の都合ばかりを優先した日本型公共事業の典型といえる。
発電、利水、洪水対策、さらには渇水対策。そんなふうに看板を次々にかけ替えて公共事業を守るのは、もうやめてもらいたい。そして、こんなお役所仕事が半世紀もの間、なぜ許されてきたのか。そのことも突きつめて考えたい。
アメリカ、政策の成果と世論
10月3日の朝日新聞国際面「2010アメリカ中間選挙」、立野純二記者の「縮志向の米国」から。
・・「私たちは昨年来、数々の目標を達成した。なのに、なぜ、未完の課題ばかりをあげつらう? なぜ、成功したことに目を向けないのか」。オバマ氏は8月初め、ホワイトハウスに与党上院議員を招いた昼食会で、珍しく語気を強めて敗色ムードを戒めた。
そのいらだちの矛先は、11月の中間選挙を前に議員らが神経を注ぐ世論の動向にも向けられている。歴代大統領ができなかった国民皆保険、未曾有の経済危機を起こしたウォール街への規制強化、8千億ドル(約66兆9千億円)に及ぶ景気刺激予算枠の導入など、政権が任期前半で積み上げた実績は確かに異例の規模だ。
問題は、グローバル化した経済は、米大統領にも制御が利かないことだ・・