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行政-社会

日本のブランド力、その2。自虐趣味は止めよう

・・日本では、国内総生産(GDP)で中国に抜かれたことも意気消沈の一因のようだが、「革新経済学」の著者ロバート・アトキンソンさんはGDP神話に異を唱える。国の生活水準を決めるのはGDPの規模ではなく、働く1人あたりの生産力と所得の伸びであり、その点では日本は10年以上、米国より成績がよい。
「日本経済に問題が多いのは確かだが、日本は悲観的で、米国は楽天的というのは理不尽な感情論」と語る・・
ブランド力を磨く道とは何か。ロゼントレイターさんは、その第一歩は「実現できる最も高い理想の自画像を描くこと」と言う。企業で言えば、IBMがコンピューター会社から地球規模の総合技術革新グループに脱皮したように、高い目標を定め、努力を積むこと。国の場合は、「どんな国になりたいのか」だ。
GfKの上級副社長シャオヤン・チャオさんは、日本は「生活様式」大国を目指せるのに、とかねて考えていたそうだ。省エネで環境を守り、先端技術で生活水準を保ち、世界がうらやむ和食を食べ、米英の競争型とは違う助け合いの長寿社会を営む。北欧とアジアのいいとこ取りの社会文化を伸ばし、そして世界に提言できる潜在力がある。
世界が今でも一目置く黄金の国ジパングの不思議さは、その持ち余す力を自己評価せず、発信も不熱心なことだ。おごる理由はないが、落ち込んでばかりいる理由もない。日本流の技術と伝統の調和社会の高みを目指し、惜しみなく世界と分かつ「生活文化大国」になれたら・・・

日本が世界に誇るべき「生活文化」については、原研哉さんの主張をたびたび紹介しています(日本が提示する生活文化。2009年10月15日の記事など)。

そして、沈黙または自虐について。謙遜は美徳ですが、自虐は罪です。周囲はそれを事実だと思い、日本(あなた)を貶めます。国際社会や市場競争の場で、謙遜はプラスになりません。また、本人たちも、自分の実力よりも低く感じてしまいます。そして、さらに元気をなくす。
少なくともリーダーたる者は、国民や住民、部下を鼓舞するために、その努力をほめるべきです。自虐ではなく、自慢すべきです。そして足らない部分について、挑戦すべきです。評論家も記者も、そうあるべきでしょう。
「全く進んでいない」「遅れている」と言われて、関係者は元気が出るでしょうか。嘘をついてまで、誇大表示をする必要はありませんが、できていることは正当に評価して元気を出させ、できていないところを指摘した方が、生産的です。
批判ばかりの記事を読むと、「この記者さんは、子どもにも、しかってばかりいるのかなあ。よいところはほめてやらないと、子どもは育たないのに」と心配します

日本のブランド力

1月14日の朝日新聞オピニオン欄に、立野純二アメリカ総局長が、次のような記事を書いておられました。
・・今の世界は、「ブランド」であふれている。数々の有名ブランドは、モノやサービスの品質のあかしであり、市場が決める価値でもあろう。
企業10傑では、アップルやグーグル、コカ・コーラ、マクドナルドが常連。落日の日本勢はトヨタだけ・・といえば聞き飽きた話だが、意外に知られていない別の国際ブランドがある。それは「国」だ。
国際コンサル会社「フューチャーブランド」が昨年11月に発表した最新ランキングによると、日本は、スイス、カナダに次ぐ第3位。ブランド王国フランス(13位)や英国(11位)、米国(8位)よりも上とは本当か?・・
国家ブランドは他に「GfKローパー広報&メディア社」も毎年発表しており、そちらも昨年日本は6位。どちらも、世界の人々に国の分野ごとのイメージを聞き取りした調査という。日本は政治の自由度や外国人に厳しい雇用などが弱点だが、テクノロジーと観光、伝統文化で高得点を稼ぎ、総合上位につけた。
産業技術が世界一とは、買いかぶりでは? 特許の世界動向の専門家パトリック・トマスさんによると、確かに特許数は中国が今や世界一だが、技術の価値を考慮した指標では「米国と日本が今でも世界で抜きんでた巨人だ」という・・。
この項続く。

飛行機を飛ばせる仕組み、モノの後ろにある仕組み

「飛行機はなぜ飛ぶか」という問に対する答えは、航空工学の範囲です。しかし、「飛行機を飛ばせる」となると、どれだけの分野が関係してくるか。先日、本屋で航空工学の棚を見ていて、東京大学航空イノベーション研究会著『現代航空論―技術から産業・政策まで』(2012年、東大出版会)を手に取りました。
目次を見てもらうと、飛行機が飛ぶためにどれだけの仕組みが関係しているかが、わかります。
第1章、航空機の技術と製造。第2章、航空輸送とその安全。第3章、空港政策の変遷と今後。第4章、航空交通システム。第5章、航空機ファイナンス。
飛行機の機体を作るだけでなく、運行するためには、空港、客室乗務員、地上の職員(整備、給油、機内食)、予約と発券と料金徴収の仕組み、航空管制、会社の経営など、様々な仕組みが必要です。そして、それら民間会社だけでなく、安全のための規制、さらには乗り入れの国際交渉など、政府も関わってきます。
飛行機の機体の周りに、目に見えるサービス関係者と、目に見えない仕組みがたくさん張り巡らされています。
私は、『新地方自治入門』で地域の財産を分類して、公共施設の他に、制度資本を取り上げました(そのほかに、関係資本と文化資本も)。例として、水道の蛇口を示しました。蛇口だけを持って帰っても、水は出てきません。その後ろに、膨大な仕組みがあるのです。取水、濾過殺菌、配水、料金徴収と。航空機関連産業も水道関係組織も、もの作りと運営のために、組織があります。そしてその組織を効率よく動かすために、職員の採用、育成、給料支払い、福利厚生と、職員管理組織が必要になります。また各組織を管理運営するための、管理組織が必要になります。
目に見えるモノの後ろには、目に見えない膨大な仕組みがしかも複雑につながって、支えています。

流行語が作る時代の雰囲気


流行語やキャッチフレーズは、時代の雰囲気を反映したものですが、その言葉が逆に、時代の雰囲気を作る場合があります。
例えば「失われた10年」という言葉がありました。1990年代に、日本が改革に遅れ、国力を低下させたことを指し示していました。ところが、この言葉を繰り返し聞いていると、あるいは自分でも発言していると、それが正しいことであり、当たり前のことと思えてしまうのです。国民の間の共通認識になってしまいます。
この言葉に反発をして、「では改革をやろう」となれば良いのですが、この言葉に納得してしまうと、引き続き「失われた20年」「失われた30年」になってしまいます。時代がラベルを生み、ラベルが時代を作ってしまうのです。キャッチフレーズの、意図しない効果です。
「日本の産業が空洞化した」という「空洞化論」が実際に空洞化を呼ぶ危険性を、藤本隆宏先生が1月7日の日経新聞経済教室で論じておられます。

そして、次のようなこともあります。流行語やキャッチフレーズは、短い言葉で時代を映し出すので、便利です。しかし、それは現実の多様性を隠してしまいます。「1億総中流」という言葉も、実際はそうではなく、1つの理想でした。しかし、多くの人が「自分も中流になった」「働けば中流になることができる」と信じたのです。これは、日本人を勤勉にし、また社会の安定をもたらしました。
ところが、1990年代以降、その言葉の陰で格差は広がっていたのです。あるときは国民を元気づける言葉であったものが、あるときから現実を覆い隠す言葉に転化していました。

進歩は、多くの失敗の上に成り立つ

400トンの金属の塊が、時速1,000キロメートルの早さで、空を飛ぶ(ジャンボジェット機の場合)。私には、理解しがたいことです。
加藤寛一郎著『飛ぶ力学』(2012年、東大出版会)が数式なしで解説してあるとのことで、本屋に行ったら、関連する書籍がたくさん並んでいました。ふだんは立ち寄ることのないコーナーです。悪い癖で、何冊か買いました。
その中で、鈴木真二著『飛行機物語 航空技術の歴史』(2012年、ちくま学芸文庫。2003年中公新書を収録したもの)を、先に読みました。
リリエンタールのグライダー、ライト兄弟の初飛行、エンジンや翼の改良、ジェットエンジンの開発、ジェット旅客機と、この100年あまりの歴史が、テーマごとに易しく述べられています。ライト兄弟の初飛行は、1903年、たった110年前です。
これだけだと、一直線に開発改良が進んだと思えます。でも、この本を読むと、失敗の連続ですね。ここに至るまでに、どれだけの失敗や事故が重ねられたか。驚きます。それと同時に、不可能と思われたことに挑戦した先人たちの努力に、頭が下がります。鈴木先生も、あとがきで、次のように書かれています。
・・空を自由に飛びたいとする人類のロマンが、飛行機として結晶するまで、技術と科学の長い発展があったことを改めて知った。それは、段階を追った積み上げと、突然の飛躍が繰り返されることで達成されたが、いずれも人間のドラマがそこにはあった。過去の因習にとらわれることなく、空の飛行を成し遂げようとする人間のロマンが原動力になっていた。
近代の科学技術がいきなり導入されたわが国では、それらが簡単に手に入ってしまったために、新しい科学や技術が長い歴史の流れのなかで、人間の意志によってなかば必然的に作り出されてきたという認識が欠けているのではないかと思ってしまう・・