カテゴリーアーカイブ:行政

民主主義の機能不全・日本の場合

2012年2月25日   岡本全勝

日経新聞・経済教室は2月22日から「民主主義の機能不全」を連載していました。24日の、スティーヴン・ヴォーゲル教授の主張から。
・・日本の場合、筆者はさらに2つの処方箋を提案したい。両者は相矛盾するようにみえるかもしれないが、うまくいけば並行的に機能するはずだ。それは官僚の権威の回復と政党間競争の促進である。
日本の経済政策が90年代以降に一貫性を欠き効果を失った原因を問われたら、筆者は政党再編など政治の変動よりもむしろ、官僚の自信と正統性が失われたことを挙げたい。戦後期の巧みな経済政策を立案し実行してきたのは、結局のところ政治家ではなく官僚だった。かつての日本の官僚は公僕として強い職業倫理を持ち、短期的な政治の圧力からもある程度遮断されていた・・
その一方で日本は、政策論議に関しては、政党間の真剣な競争から得るものが大きいと考えられる・・
詳しくは、原文をお読みください。

私は、日本の官僚機構は、かつては効率的であったが、成熟国家においては、従来のままでは機能不全に陥り、変化しなければならないと考えています。よって、教授の説に全面的に賛成はしませんが、政治家と官僚がそれぞれ役割を果たすべきであるという点は、賛成です。もっとも、こう言ってしまえば、平板ですね。

政治の理想と現実

2012年2月5日   岡本全勝

ようやく、E.H.カー著『危機の二十年』(邦訳2011年、岩波文庫)を、読み終えました。布団の中で読むには、難しい本ですが、文庫本なので挑戦しました。とはいえ、500ページを超えます。読みやすい訳ですが、寝転がって読む本ではありません。
原著は、1939年に出版されました。国際政治学の基本文献です。第1次大戦と第2次大戦の戦間期の国際政治(ヨーロッパ政治)を対象としつつ、ユートピアニズム(アイデアリズム、理想主義)とリアリズム(現実主義)のせめぎ合いを分析したものです。国際連盟などの理想主義の限界を指摘した本として有名です。
私の本棚には、1952年に岩波書店から出た、井上茂訳が並んでいます。久しぶりに取り出したら、変色したパラフィン紙(グラシン紙。若い人は知らないでしょうね。かつて岩波新書をはじめ、多くの本に被さっていました)がかかり、箱に入っています。買った日付が奥書に、1975年10月と記入されています。定価は、800円です。20歳の時に買ったのですね。内容は、ほぼ忘れていました(反省)。
ところで、新訳では、解説にもあとがきにも、旧訳について言及がありません。どうしてでしょうね。

今回読んでみて、改めてその分析の鋭さに、感心しました。訳者による解説もわかりやすいです。世間を知らない学生時代に読むのと、官僚として政治と付き合ってみてから読むのとでは、得るところが違いますね。
カーは、イギリスの政治学者で、『歴史とは何か』(岩波新書)が、有名です。

政府に入った研究者からの苦言

2012年1月29日   岡本全勝

1月28日の読売新聞「編集委員が迫る」は、知野恵子編集委員の「中村祐輔東大教授、医療推進室長辞任の理由」でした。2011年1月に内閣官房・医療イノベーション推進室長に就任した中村教授が、1年で辞任したことについてのインタビューです。

教授は日本の医療産業について、危機的状況だと指摘しておられます。
・・まず、新役作りが遅れている。例えば、ガン細胞だけを攻撃する「分子標的治療薬」という抗ガン剤がある。これまで世界で20種類以上開発されたが、日本製のものは一つもない。医薬品の輸入も急拡大しており、2011年度は1兆3600億円の赤字になった。日本の貿易赤字の半分以上に相当する。心臓ペースメーカーなどの治療用医療機器も外国製品ばかりだ。
大学などの研究水準は世界的に見ても高い。しかし、その成果を実用に結びつけ、産業として開花させる国家戦略がない。背景には、省庁間の縦割りがある・・

改革できなかったことについては。
・・未来につながる医療復興案を提案した・・しかし、霞ヶ関の役所からは無視された。
役所は全て根回しで動かしていく。落としどころを考えながら話し、少しずつ積み上げていく。私にとって最も不得手なことだ。それに霞ヶ関の発想は、予算の枠に縛られている。将来を見すえて、必要なものに優先度をつけることもしない。
・・官僚は視野が狭く、来年の予算を確保することしか考えない。10年後、20年後を見すえて政策を練るような人はまずいない。政治家も、政局が不安定な中、誰も責任を持って意思決定をしない。研究者も論文を書くことが目標で、時間と手間がかかる薬作りに本気で取り組もうとしない・・

研究者に政府に入ってもらうことについて、知野編集委員は、次のように述べています。
・・今回の原因を分析し、教訓を引き出さないと、同じことを繰り返す懸念がある・・
記事のごく一部だけを引用紹介したので、詳しくは原文をお読みください。

ブレア首相の指摘する現代の官僚機構の欠点

2012年1月13日   岡本全勝

イギリスのブレア元首相が、日経新聞に「私の履歴書」を連載しておられます。ブレア元首相の回想録は、英語版が出た時にすぐに買い求め、先月に邦訳が出たのでこれも買ったのですが、未だ読めず。なにせ分厚いので、布団の中で読めないのです(反省)。
1月12日の文章から。
・・国家を能率的に機能させる能力は、20世紀半ばに必要とされたものとは違う。それは実行とプロジェクト管理を扱う民間部門のものに似ている。近代政治のペースは速く、メディアも徹底追求するので、政策の意思決定、戦略の策定は圧倒的な早さで進めなければならない。
官僚が作った政策文書を、首相が議長を務める閣議で討議し決めるという従来の方法では、急速に変化する政治環境に対応できない。
官僚制度の問題は、物事を妨害することではなく、惰性で続けることだ。官僚は既得権に屈服し、現状維持か、物事管理するのに一番安全な方法に逃げ込む傾向があった。
官僚組織は、うまく指揮すれば強力な機構になる。官僚たちは知的で勤勉で公共への奉仕に献身している。ただ、大きな課題に対し小さな思考しかできず、組織が跳躍を求められるときに、少しずつしか動かなかった・・

日本の官僚機構の問題点を、大学で講義し、連載したことがあります。そこで採り上げた課題の多くが、イギリスと共通していることに、改めて驚きました。我が意を得たりです。もっとも、それを解決していないという問題と、共通課題の上に日本独自の課題があることを、反省しなければなりません。
その後、総理官邸などで、さらに行政機構と官僚制の問題点を考えました。いずれ、中断した連載に、片を付けなければなりませんね(決意表明)。

内閣官房の年始の挨拶

2012年1月5日   岡本全勝

今日、官邸大会議室で、内閣官房職員に対して、官房長官から年始の挨拶(訓示)がありました。このホームページで何度か紹介しているように、内閣官房には、たくさんの組織があります。この図のうち、3人の副長官補の下にある各種の事務局や室を数えると、今日現在では25あります。これらをご存じの方は、そう多くないでしょう。
内閣官房は独立して職員を採用していないので、各省からの出向者からなっています。何人いるのかは、私は知りません。今日集まった職員だけでも、大変な人数でした。
また、内閣に直接属する組織は、このよう(行政機構図、内閣の機関)になっています。内閣法制局、人事院、各種本部です。復興対策本部は内閣直属の組織であり、事務局はこの表に出てくるとともに、事務局職員は官房副長官補の下にある「東日本大震災復興対策室」に属しています。
官房長官は、別に内閣府を統括しておられるので、例年、内閣府職員へも年始のご挨拶があります。さらに内閣府には担当大臣がおられるので、その方々も挨拶されます。なお、行政機構図は、こちら