カテゴリーアーカイブ:政治の役割

真山仁さん「怖いものはみたくない」

2018年1月10日   岡本全勝

1月3日の朝日新聞経済面、作家の真山仁さんの発言「財政破綻 誰も言わないなら、私が言う」から
・・・怖いものはみたくない。できたら通り過ぎてほしい。「見ざる」「聞かざる」「言わざる」の3ザルですよね。お上に、よきに計らってもらえばって思っている表れでしょう。でも、そうしていたらろくなことがなかったのが、この20年ですよね。
特に東日本大震災の後、官僚やメディア、大学教授といったインテリに対して国民が嫌悪感をもってしまっていて、福島第一原発事故などに関して「だまされた」という感情がある。「もっと一生懸命言ってくれたら、気にしたのに」と思っている。本当は、スリーマイルもチェルノブイリの事故も隠されてはいないのに。
政治家も、財務省をたたいていれば自分たちの責任が転嫁される、と考えているふしがある。官僚主導が嫌ならば、政治家がもっと勉強して官僚を使いこなせばいいのに、それもできず、警鐘がきちんと鳴らされていない・・・

民主政を機能させる指導者がいるかどうか

2018年1月2日   岡本全勝

12月23日の読売新聞解説欄、塩野七生さんの「民主政 アテネの教訓。指導者 衆愚の分かれ目」から。
・・・アテネの全盛期を築いて民主政を完成させたペリクレスは、人々が発する不安の声を冷静に説き鎮め、長期的な視野に立った政治をした。しかし彼の後の指導者は、逆に人々の不安や怒りをあおり立て、戦略を欠いていく。ペリクレス後のアテネが後世、衆愚政と呼ばれることになった。
衆愚政のアテネは、政治の仕組みや有権者のレベルが以前と変わったわけではない。民主政を機能させる指導者がいたかどうかの違い。民主、民主と唱えていれば民主政が実現するわけではないの。民主政を妄信してはいけない・・・

塩野さんは、12月26日の日経新聞オピニオン欄にも、出ておられました。「失望が生むポピュリズム」。坂本英二・編集委員 の解説から。
・・・塩野七生さんは紀元前からルネサンスまで2500年に及ぶ欧州の歴史を約50年かけて書き上げた。登場する国家の盛衰や政治リーダーの栄光と失敗は、21世紀の国際社会とも共通する多くの教訓を含んでいる。
塩野さんの歴史長編はたいてい静かに始まる。民族や文化が生まれた時代背景を丁寧に紹介。だが外敵などに対抗するため個性的な指導者が現れた瞬間から、歴史が一気に走り出す。「ローマ人の物語」ではスキピオ、スッラ、カエサルら適時に適切な男たちが現れて困難を克服する。どんなに強大な帝国も、優秀な指導者を選べなければ一気に坂を転げ落ちる・・・

玉木林太郎さん、政策を議論する場

2017年12月30日   岡本全勝

12月28日の日経新聞「私見卓見」、玉木林太郎・国際金融情報センター理事長(前OECD事務次長)の「政策を議論する「場」を東京に 」から。

・・・もう一つ東京にほしいものがある。政策を議論するための開かれた「場」である。経済、社会、外交、環境、文化など広く公共政策と呼ばれるものについて考えを提示し、質問や反論を受ける常設のフォーラムだ。ジェンダーやサスティナビリティなど今の日本でもっと取り上げられるべきテーマはいくつもある。
政策の決定には国会をはじめ別の仕組みが用意されているが、その周辺にあって普段に識者の「卓見」を聞き、考える機会を人々に与えるような場がほしいのだ・・・
・・・全国にコンベンションセンターや会議場はたくさんあるが、必要なのは建物ではない。テーマと問題点をうまく設定し、研究者と関心ある聴衆を集めるコンビーニング・パワー(召集力)である。
あえて海外の例を挙げると、米国の外交問題評議会、ロンドンの王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)、ブリュッセルのブリューゲル研究所などだろうか。高等教育機関に付属するものでもいいが、国の関与は必要なく、非営利でなるべく党派性の薄いものがよい。OECD自体も、国際機関という形で似たような機能を果たしているのかもしれない・・・

全文をお読みください。これは、ソフトパワーの代表ですね。

田中拓道教授、これからの政策を考える視点

2017年12月29日   岡本全勝

12月27日の日経新聞「経済教室・社会保障の未来図」は、田中拓道・ 一橋大学教授の「政策 財政・雇用と横断的に」でした。全文を読んでいただくとして、これからの日本を考える視点として、一部を紹介します。

・・・評価のポイントとして、大きく2点が挙げられる。
第1は、財政・雇用・社会保障を横断する「パッケージ」となっているか否かである。先進国はいま、複数の領域にわたる政策転換を迫られている。グローバル化のもとで税や保険料を引き上げることは難しく、財政均衡も共通の課題となっている。
他方、労働市場と家族の変化は「新しいリスク」をもたらしている。先進国の産業が製造業から情報・金融・サービスなどの第3次産業へと移行すると、一時的な失業、短期や非正規などの不安定雇用が増大する。不安定な立場に置かれた人への支援がなければ格差は拡大する。さらに女性の就労が進むと、家庭と仕事の両立に苦しむ女性も増えていく。男性稼ぎ主型家族からの転換が進まなければ少子化のリスクが高まる・・・
・・・第2は、日本の「三重苦」への対応である。他国と比べて日本では、労働市場と家族の変化への対応が遅れた。20年にわたって政界内部で離合集散が繰り返され、場当たり的な対応が積み重ねられた結果、国の借金は国内総生産(GDP)比200%超と先進国最大の水準になった。長時間労働の是正や子育て支援も進まず、男性稼ぎ主型家族からの転換が遅れた。その結果、合計特殊出生率は20年にわたって1.5を下回るなど、少子化と高齢化に直面している。正規労働者と非正規労働者、男性と女性の格差が固定化され、不安定な暮らしに直面する若者が増えている。
少子高齢化、財政赤字、格差固定化という三重苦は、政治の不作為によってもたらされた側面が大きい。はたして今回の改革案は、こうした行き詰まりを打開するきっかけとなるだろうか・・・

・・・現政権は「安倍一強」と言われるほど強い基盤を持っている。にもかかわらず、不人気政策を含めた中長期的なパッケージを提示できないのはなぜだろうか。最後に2点を指摘したい。
第1は、将来どのような社会を目指すのかというビジョンがはっきりしない点である。安倍政権は当初、アベノミクスで3本の矢を掲げ、その1つに規制緩和を軸とした成長戦略を挙げていた。しかし規制緩和があまり進まないまま、15年以降は一億総活躍社会へと看板を変え、分配政策を重視するようになった。
税負担や財政支出を抑え、規制緩和と労働市場の流動化によって市場を活性化し、経済成長を目指すのか。それとも国民に広く税負担を求めつつ、国が中心となって子育てや就労を支援するのか。基本的な将来ビジョンが依然として不明確である。
第2に、より深刻なのは与野党間の競争の不在という問題である。10月の衆院総選挙でも、野党勢力は国内政策を軽視した合従連衡を繰り返し、消費増税凍結などの現実性の乏しい公約を掲げるにとどまった。与党の側は不人気政策を含めた政策パッケージを競う必要に迫られず、耳当たりのよい分配策を並べることで有権者の支持を獲得しようとする傾向が強まった。
社会保障とは、市民一人ひとりの生活に密着した政策であり、単なるトップダウンだけで決められるものではない。中長期的な社会のビジョンに基づく政策のパッケージが複数示され、有権者の選択を経て決定がなされるという民主主義的プロセスが機能しなければ、大胆な意思決定を行えない。今後、こうした政党間競争を実現できるかどうかが問われている・・・

政治家で見る歴史2

2017年12月26日   岡本全勝

政治家で見る歴史」の続きです。
イギリスは、伝記が重要視される国です。最近の日本は、伝記、特に政治家の伝記はあまり見かけません。児童向けの偉人伝も、かつてほどは作られないとのこと。
もちろん、政治家や偉人だけで社会の歴史が作られるわけではありませんが、彼らの行動が社会や歴史を変えることは事実です。
民主主義の時代、政党の時代になった現代では、政治家個人の判断で国政が動くことは狭まったでしょう。しかし、その制約があるが故に、選挙民を動かし、政党を導くことも合わせて、政治家の力量が問われます。

欧米では首相や大統領は、やめた後に大部の回顧録を出版します。日本語にも翻訳されています。日本では、首相経験者の回顧録も、多くはありません。
本人の回顧録も、どのような考えでそのような判断をしたのかを知るために、価値があります。本人にインタビューする、オーラルヒストリーが、それに近いのでしょう。

しかし、第三者が書いた評伝は(ヨイショの提灯持ちでなければ)、社会の側が彼をどう見ていたか、彼の判断がどのような結果をもたらしたかが分かり、もっと価値があると思います。
新聞社の政治部記者が、それを書くことに最も近い位置にいると思うのですが。