カテゴリーアーカイブ:政治の役割

ヨーロッパ統合、成功の次に来た危機

2019年1月3日   岡本全勝

2018年12月20日の日経新聞オピニオン欄、刀祢館 久雄・上級論説委員の「欧州統合、問われる耐久力」から。

・・・悲劇をこれ以上繰り返さない不戦の枠組みとして第2次大戦後に立ち上がったのが、いまのEUへと発展する欧州の地域統合だ。
ドイツとフランスの和解と協力を軸に平和を不動のものにし、豊かで米国と競える経済力を築く。2つの目標は達成できた。20世紀の欧州統合は大成功だったといえる。
問題はそのあとだ。08年のリーマン・ショックが契機かのようにユーロ危機から難民問題、英国のEU離脱決定、ポピュリズムの大波と、欧州は激動に見舞われ続ける・・・
・・・東北大名誉教授の田中素香氏は「20世紀の欧州統合モデルでは21世紀の危機に対応できなくなっている」と指摘する・・・

そうですね。2度にわたる世界大戦。それを防ぎ、ドイツの暴走を抑えること。また、ヨーロッパの衰退を食い止めること。西欧は、その二つに成功しました。ECからEUになり、統一通貨ユーロも導入され、統合はさらに進むと考えられていました。
ところが、難民問題、格差問題、若者の失業、そしてポピュリズム・・。これまでの課題とは違う、新しい課題が出てきました。
これらの問題に、どのように対応するか。これまでは、代議制民主主義と自由主義・市場経済で問題を解決してきました。しかし今回の問題は、この2つの哲学と手法を揺さぶっています。これまでとは、違った次元の課題です。新しい次元の問題には、新しい考えと新しい手法が必要なのでしょうか。

天皇陛下、お誕生日記者会見

2019年1月2日   岡本全勝

12月23日の、天皇陛下のお誕生日記者会見についてです。ご譲位を前に、平成の30年間を振り返るものとなっています。

第一に取り上げられているのが、災害です。次に、戦争と平和です。
「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに,心から安堵しています。」
私たちは、この平和な日常を当然のものと考えていますが、この平和のありがたさをあらためて国民に思い起こされました。歴史としては、昭和という戦争の時代を引き継がれ、国の内外に慰霊を続けられたことも、忘れてはなりません。あわせて、海外の紛争にも言及されています。

その後、障害者について語られました。さらに、次のようなことを話されています。
「日系の人たちが各国で助けを受けながら,それぞれの社会の一員として活躍していることに思いを致しつつ,各国から我が国に来て仕事をする人々を,社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています。また,外国からの訪問者も年々増えています。この訪問者が我が国を自らの目で見て理解を深め,各国との親善友好関係が進むことを願っています。」
これからの外国人の受け入れ、内なる国際化について言及されました。このことも、重要なことだと思います。

短い文章の中に、日本の政治と社会が考えなければならない要素が含まれています。

中国改革開放政策40年その2

2018年12月25日   岡本全勝

中国改革開放政策40年」の続きです。
共産主義政治体制でありながら、市場経済に踏み切る。よく、こんな大胆なことができたものです。
毛沢東の下、大躍進政策で、膨大な数の餓死者を出しました。また、文化大革命では、大きな社会混乱を招きました。中国指導部にとって、社会を安定させ、共産党支配を維持するためにも、経済発展は不可欠だったのでしょう。
鄧小平の指導力と、経済発展を求めた共産党幹部や国民の支持があったからこそ、成功したのだと思います。隣に、日本という見本がありました。

鄧小平の政策転換は大成功でした。日本の10倍の人口があり、広大な面積を持つ国でです。しかも、共産主義に慣れ親しんだ国民に、市場経済に転換させたのですから。

私は、国有企業をどのように処理するのかが、気になっていました。1990年代に、国有企業の工場が閉鎖され、大量の失業者が出ました。しかし、なんとか次の職に就けたようです(国有企業改革)。ソ連などの共産主義廃止の際に、混乱があり、民営化に乗じて儲ける人とそうでない人が出ました。同じようなことが、起きたのでしょうね。

経済発展が続くと、民主化の要求が強くなるという説は、天安門事件で挫折しました。胡耀邦、趙紫陽の二人の総書記が失脚しなければ、違った道を歩んだでしょう。
経済活動の自由が認められたことは、日本の明治維新に似ています。しかし、明治維新は、制限付きですが政治的自由も認めました。
いまの中国は、戦前の日本より政治的自由は制限され、国民の行動もITの発達で監視されているようです。このような体制が、長く続くのか。そして、経済発展が今後とも続くのか。日本の経験は、ある程度のところで頭打ちになることを教えています。
この項続く

国防長官、国民と理念を守る

2018年12月24日   岡本全勝

マティス国防長官の書簡の続きです。
長官は、書簡の冒頭で「国防長官として、職員とともに、我が民と理念を守る仕事を担ってきた」と書いています。国民を守ることとともに、理念を守ることを任務に挙げています。
"I have been privileged to serve as our country’s 26th Secretary of Defense which has allowed me to serve alongside our men and women of the Department in defense of our citizens and our ideals."
By The New York Times

国土と国民そして独立を守るのではなく、国民と理念( our citizens and our ideals)を守るのです。ここに、アメリカという国のなり立ちを、読み取ることができます。
独立宣言や憲法に掲げられた理念は「自由と民主主義、人民主権」です。イギリスの植民地から独立する際の「大義名分」だったのです。フランス革命と並んで、アメリカ独立革命でした。(それぞれの国のかたち

国防長官は、書簡の中で次のように述べています。
「中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです」

戦前日本は戦争の際に、「国体の護持」を主張しました。この主張は日本にしか通用しませんが、アメリカの理念は普遍的(他国にも成り立つもの)です。
すると、アメリカの理念は「輸出」することが可能であり、時に輸出されます。すなわち、他国にその理念を押しつけます。
そのアメリカの理念を受け入れる用意のある国は問題ありません。日本も戦争に負けて、その理念を受け入れました。他方、その気がない国、それを受け入れる社会的素地のない国では、紛争が起きます。
12月25日加筆

方向性と詳細設計

2018年12月21日   岡本全勝

先の国会では、入国管理法の改正(外国人労働者の受け入れ)が、大きな議論になりました。この課題には様々な論点がありますが、今日は、方向性と詳細設計という観点から、解説します。

17日の読売新聞によると、全国世論調査の結果、外国人労働者の受け入れを単純労働に拡大することに「賛成」の意見は46%、「反対」は39%です。その一方、外国人の受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法が、臨時国会で成立したことを「評価する」人は37%で、「評価しない」48%の方が多かったのです。
同様に、18日の朝日新聞によると、全国世論調査の結果、外国人労働者の受け入れ拡大には46%が賛成し、反対40%を上回っています。ただし、改正法の成立を「評価する」は39%で、「評価しない」48%の方が多いのです。

どちらも、受け入れには賛成が多く、改正法成立は反対が多いのです。このねじれを、どのように理解するか。国会審議の評価については、ここでは触れないこととします。
大きな方向では国民は受け入れには賛成で、その詳細設計を十分にすることを望んでいるようです。すると、その点を議論すべきでしょう。あるいは、方向としては拡大することとして、運営過程で課題を順次解決することが考えられます。

保守と言われる自民党が受け入れ拡大賛成になのに対し、民主・革新をうたっている(と思われる)野党の多くが拡大反対のような行動を取ったことも、国民には不可解でした。さらに、「家族帯同は認めない」は、常識に反するように思えます。日本人の海外駐在者が、「家族を連れてくるな」といわれたら、困りますよね。