カテゴリーアーカイブ:政治の役割

新しい政治の対立軸は

2022年10月24日   岡本全勝

国政と中間集団」の続きになります。
政党や政治団体の機能について、長い間考えているのですが。政党は、日本社会の意見の違いを拾い上げているのか。また、労働組合は、なぜかつてほどの力を失ったか。知識人は、なぜかつてほどの影響力を失ったのか。新しく政党が対立するとしたら、どのような軸で対立するのかです。すると、日本社会には、どのような対立があるかを考えなければなりません。

戦後の日本では、「55年体制」といわれた、自民党と社会党の対立が政治の対立軸でした。保守と革新、右翼と左翼、親米と親ソ(ソビエト)とも言われました。しかし、冷戦が終わって、東西対立が消滅しました。資本主義対社会主義は対立軸でなくなりました。社会党が、存立基盤をなくしました。労働組合も、経済成長もあって、存在理由が希薄になりました。経営者対労働者も、対立軸にならなくなりました。

では、次の対立軸は何か。政治理論、目指す社会、政治勢力、政党を分かつ基準です。
私は、地方対都市が一つの対立軸だと考えていました。地方行政を仕事としていたことも、その理由にあります。もう一つは、借金を続ける現世代と、その借金を払わされるこれからの世代もあると思いました。でも、これらは主たる対立軸になりませんでした。

しかし、だんだんと社会内の対立が見えてきたようです。それは、これまでの政治理論とは、全く異なった次元のようです。その中の2つを取り上げましょう。
一つは、保守と革新です。といっても、かつてのような右翼対左翼、資本主義対社会主義ではありません。
極めて単純化すると、これまでの男社会、企業社会を続ける人たちが保守で、それを壊す志向が革新です。日本社会の行き詰まりは、これまでこの国を支えてきた男中心の社会、会社につくす生活態度に大きな原因があります。これを壊すことが、革新なのです。

もう一つは、社会にうまく適応できた人と、できていない人の対立です。正規対非正規に典型的に現れています。一億総中流は過去のこととなり、格差社会になりつつあります。その格差は、かつてのような単純な貧富の差ではありません。
引きこもり、不登校やいじめに遭った子どもも、入るかもしれません。このような、社会にうまく適応できなかった人たちは、政治勢力になっていません、なりません。この人たちの声をどう拾うか。労働組合はそれに失敗し、これらの課題はNPOが拾っているようです。野党には、その役割が期待されています。また、与党も政権を維持し、支持を広げるために、そのような新しい課題を拾うべきです。

このように見ると、日本社会と政治の停滞は、どのような未来をつくるのかについての合意や対立がないこと、そして現在社会の問題や対立を分析できていないことによるのでしょう。

国政と中間集団

2022年10月23日   岡本全勝

日本国憲法では、国民が国会議員を選挙で選びます。そこでは、途中に介在するものは書かれていません。しかし、「公共を創る」でも主張しているように、国民は直接国家と対峙するのではなく、いろいろな中間集団に属し、その支援と保護の下で暮らすとともに、集団としての意見を表明しています。

有権者の意見を集約する機能は、現在では主に政党が担っていますが、政党も日本国憲法には出てきません。
保守と革新、有産階級と労働者といった対立が明確で、それが社会の勢力を代表していたような場合では、政党が多くの中間集団を束ねて代表する機能を持っていたのでしょう。ところが社会が成熟化し、そのような二分論が不明確になると、2大政党制は成り立たなくなります。

労働組合や同業団体が力をなくし、他方で中間集団に属する人が少なくなると、どのようにして個人を政治に結びつけるかが課題になります。政治家や政党にとっても、支持母体や支援団体がなくなるのです。地域社会でのつながり(町内会)も希薄なりました。中間集団に属さない個人は、政治とのつながりをなくし、浮動する大衆となります。
国会は、国内の対立、意見の違いを集約する機能です。どのような対立を議論するのか。それが不明確になっているようです。

大島理森先生の回顧談

2022年10月17日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」、10月14日から、大島理森・前衆議院議長の「政の舞台回し」が始まりました。
・・・衆院議長を歴代最長の6年半務め、上皇陛下の退位を実現した特例法成立などを手がけた大島理森さん。国会で合意を形成するため、「 政まつりごと の舞台回し」で名脇役となった議会人の生き方を語る・・・

私は麻生総理大臣秘書官の時に、自民党国会対策委員長の先生にお世話になりました。総理の国際会議出席などと国会出席とを、どのように調整するかです。しょっちゅう、先生と二人で、日程調整をしたのです。
東日本大震災では、自民党復興加速化本部長として、ご指導をいただきました。官僚では解決できない課題を、自民党と公明党が主導する形、それを官邸に提言する形で実現してもらったのです。
それぞれに困難な仕事であり、大島先生でなくては乗り切れないことがたくさんありました。見ていて、「なるほど、このように解決するのか」と、とても勉強になりました。
天下国家のことを考える政治家です。原発事故対応についても、「原発を推進した自民党と、私としても責任がある」と、正面から取り組んでくださいました。原発被災地の町村長の多くも、大島先生を頼りにして、尊敬しています。

若輩の私を、やさしく(人前では厳しく)指導してくださいました。しばしば、「それは何だ」と、厳しい声で机を叩かれるのです。
はじめは怖かったですが、懐の中に飛び込むと、解決策を考えてくださいます。だんだんと、私の持ち前の厚かましさと、先生の包容力に甘えて、いくつも難題を解決してもらいました。

ポピュリズムは進化する

2022年10月7日   岡本全勝

9月24日の日経新聞、小竹洋之コメンテーターの「ポピュリズムは進化する 政権奪取へ異端の印象薄めに」から。

米ギャラップによると、世界の人々が訴える怒りや悲しみなどの強さを示す指数(0~100)は、2021年に過去最高の33を記録した。グローバル化やデジタル化の痛みを感じる庶民が、新型コロナウイルス禍やインフレにも苦しみ、扇動的な政党になびきやすくなっているのは事実だ。
ならば左派ではなく右派のポピュリズムが、欧米で目立つのはなぜか。水島氏は「コロナ禍とウクライナ戦争は、人々の命や安全、暮らしを守る国民国家の重要性を再認識させた。その流れにのった現象だろう」と話す。
同志社大の吉田徹教授にも尋ねた。「右派は現状の維持、左派は未来に向けた変革に軸足を置く。将来不安がはびこる先進国では『何かを得る』という左派の主張より『何も失わない。喪失したものを取り戻す』という右派の主張が訴求力を持つのかもしれない」

見逃せないのはポピュリズムの進化だ。「スウェーデン第一」を標榜するオーケソン氏は、治安の強化や移民の制限を唱える一方で、ネオナチの流れをくむSDの主張やイメージを和らげる努力を重ねてきた。スウェーデンの欧州連合(EU)離脱をもはや求めず、北大西洋条約機構(NATO)への加盟にも理解を示す。
FDI(イタリアの同胞)のメローニ氏も戦略は同じである。移民制限の立場や伝統的な家族観を維持しつつ、ファシズムに近いという印象を薄めることに腐心し、EUとの協調やロシアへの厳しい制裁を貫いたドラギ首相の路線踏襲も掲げる。
EUの世論調査によると、EUを信頼する域内の人々は22年夏に49%を占め、リーマン・ショック前の08年春に次ぐ高水準にある。様々な危機を経て風向きを変えた世論に合わせ、ポピュリストも政権入りをにらんで現実的な対応を探り始めたのではないか。

原子力規制委員会の10年

2022年10月5日   岡本全勝

9月20日の朝日新聞「信頼への道、原子力規制委10年」、田中俊一・初代規制委員長の発言から。

――規制委は当初の狙い通りの姿になりましたか。
「発足は原発事故の翌年で、当時は原子力に対する社会の信頼がゼロでした。どう安全規制の信頼を取り戻すか。そこで打ち出したのが透明性です。審査会合をオープンにして中身をさらけ出した。今では信頼はある程度、得られたんじゃないでしょうか。でも、推進側が全然ダメですね」

――どこがダメですか。
「原子力の利用について国民は納得していませんよね。日本でどうして原子力エネルギーが要るのか、国民に考えてもらう必要があるわけですよ。特に、温暖化とかロシアの(ウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機の)問題がある今は、議論する絶好のチャンス。それなのに、政治家も行政も、きちんと議論をやろうという人がいません」
「電力不足だから審査を迅速化しろと言うけど、規制委が許可した原発17基のうち7基は再稼働していません。まず、それを動かせば間に合うはず。規制委が許可したって原発は動かないんです。社会が受け入れられるような議論を政治がやっていないからです」

――厳しい審査をしても、新規制基準で必要な安全対策がそろえば、最後は認めざるをえないようにも見えます。
「規制委は原子炉を止めるところじゃないんです。止めるなら規制なんか要らない。原発を利用する上で大きな事故を起こさないようにするのが規制委です」