カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第225回

2025年6月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第225回「政府の役割の再定義ー政治家に求められる能力」が、発行されました。政治家による政策議論について、国会が本来期待される機能を果たしていないことを指摘しています。

社会では、絶えず問題が生まれます。それを、「誰がどのように、そしてどの方向に解決するか」。家族と親族、企業、地域社会、中間団体、宗教、慈善活動やNPO、そして地方議会、国会、行政、司法のうち、誰がまずは責任を引き受け、誰と誰が発言し行動するのか。誰も引き受けない場合、あるいは意見の対立が解消しない場合は、最終的に誰が解決するのか。国によって、解決する主体、あるいは解決することを期待される主体が異なり、またそれら主体の力関係が違います。
同じ近代民主主義国、資本主義自由経済国家であっても、英国、フランス、ドイツ、米国、そして日本は、よってきた歴史と社会が異なり、「国のかたち」が違います。これを考えるのに役立つ書物が、近藤和彦著「イギリス史10講」(2013年、岩波新書)です。英国では、議会が解決の場であるだけでなく、主体になるようです。この本については、このホームページで、たくさんの論点に分けて紹介しました。「覇権国家イギリスを作った仕組み」~「覇権国家イギリスを作った仕組み、9」。番外も「覇権国家イギリスを作った仕組み、12

日本の国会においては、異なる意見や利害を議論して調整することが少ないと指摘しました。では、どこで調整しているのでしょうか。実態として、日本では、内閣、その中でも各省の官僚機構が解決主体として働くものと期待されているようです。
官僚に求められる能力と現実の問題について述べたので、政治家に求められる資質についても書いておきました。

これで、「政治の役割」のうち、「政治主導の在り方」を終えて、次回からは「政治家と官僚の関係」に入ります。

連載「公共を創る」第224回

2025年6月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第224回「政府の役割の再定義ー議論が乏しい「ムラの慣行」」が、発行されました。

政治家による政策議論について、国会と野党の役割を考えています。
先の衆議院選挙で、自公政権は少数与党になり、政府案を与党の数の力で押し通すことが難しくなりました。すると、与野党で議論して妥協し、結論を出す必要が出てきます。野党の意見を取り入れることで、より多くの国民に支持される政策が実現する可能性も出てきます。
一方で、首尾一貫した政策体系を示して、その対立の形で各党が国民の支持を獲得するために競い合うなら良いと思うのですが、政策体系の背景を持たずに、論点ごとに有権者にこびるようなポピュリズムに走ることになると、良くない結果を生むことになりかねません。

議会制民主主義とは、政治家と政党がそれぞれの主張を立て、国民の同意獲得競争をして政権に就き、政策を実行する。その場が国会であり、国民の間のさまざまな利害を調整する場です。政治学の教科書にはこのように書かれていても、それぞれの国がそれぞれに異なる社会と歴史を持っているので、国によって実際の運用は異なります。
日本では、国会が議員間の討論の場になっていません。議員が政府に説明を求め、問題点を追及する場となっているのです。与野党が議論を重ね、政府提案あるいは与党提案を磨き上げて、さらに良い法律や予算にするという意識と経験が希薄です。

この背景には、日本においては、人前で、意見の異なる人同士の間で議論することが少ないことがあります。討論の経験がないし、討論している人から学ぶ機会もないのです。しばしば「和を以もって貴しとなす」という言葉が使われます。聖徳太子の十七条憲法以来の日本の伝統であり、あるいはそうあるべき規範と思われているようです。
しかし、すべての事が最初から最後まで「和である」=一致するはずがありません。それは結局のところ、意見の対立を表面化させないこと、対立がある場合はウラの世界で調整をつけることが良いとされる、社会通念だということができます。

対立が少なく皆が協調するべきという「ムラの慣行」と、オモテの場で議論せず、意見の対立をなるべく表面化させないでいたいという日本社会の深層意識が、討論やそれに基づく修正は避け、野党は政府批判だけをするという我が国特有の国会審議の背景にあるのでしょう。それは、これまでのムラ社会、世間、そして国会を貫く、「この国のかたち」です。

読売新聞「あすへの考」に載りました

2025年6月8日   岡本全勝

今朝6月8日の読売新聞「あすへの考」に、私の発言「人口減令和の処方箋 地方創生本気で大胆に…」が載りました。吉田清久・編集委員の取材を受け、思っていることを話し、質問に答えました。話がいろいろなことに飛んでしまいました。記事を読んで、このように構成するのかと、発言した本人が感心しています。

この問題は即効薬はなく、長期的に取り組む必要があります。そして、モノを作るのではなく、国民の意識を変える必要があります。それは行政の不得意な分野で、行政だけではできず、企業や非営利団体などの力も必要です。私の経験を元に、復興庁でうまくいったことを説明しました。
中見出しに「創生本部を常設の「庁」に。中長期の具体的目標設定も必要」とあります。

・・・石破政権は最重要政策に「東京一極集中是正」と「地方活性化」を掲げた。「令和の日本列島改造」と銘打ち、地方活性化への取り組みに総力を挙げる。政府が地方創生を最初に看板に掲げ、司令塔に地方創生相を新設したのは2014年のことだ(第2次安倍政権)。初代の地方創生相は石破首相だった。しかし、目立つ成果は出ておらず、人口減少や地方の地盤沈下に歯止めがかからない。再生策に決め手はないのか。地方復興に長年取り組み、霞が関で「ミスター復興」と呼ばれた岡本全勝・元復興庁次官に「地方再生・令和の処方箋」を聞いた。(編集委員 吉田清久)・・・

・・・地方の地盤沈下の原因は〈1〉過疎化と東京一極集中〈2〉少子化と人口減少―が挙げられます。
「過疎化と東京一極集中」で留意すべきは、その背景にある心理的な側面です。
誰しも「大人になったら親元を離れ、きらびやかな東京に出てみたい」と思う。かくいう私も奈良県明日香村で生まれましたが、高校卒業後は村を離れたままです。
地方には働く場所が少ない。仕事がなかったら、地元を離れた人は戻らない。この事実は私が復興に関わった東日本大震災でも痛感したことです。
とくに若い女性が地域に根付かないと指摘されています。高学歴化が進み、女性も高校を卒業して東京の大学に多く進学するようになりました。地域に戻らないのは、若い女性が希望するような職場がないからです・・・

次のような位置づけも主張しました。
・・・政治家は国民に対し、国家のグランドデザインを明確に示すべきだと考えています。その意味で、石破茂首相の施政方針演説(1月)に注目していました・・・
・・・国民に、安心できる将来像を示すことは政治の大きな役割です。冒頭に述べた石破首相の「楽しい日本」の提唱もこの文脈で考えるべきです・・・
・・・国の針路を示す羅針盤を失い、向かうべき方向が定まっていません。地方再生が、かけ声だけで、問題解決に至らないのもそのためではないでしょうか。
「令和版・地方再生の処方箋」を見いだす鍵はそこにあります・・・

大きな記事で、見つけた知人からたくさん反応がありました。「中央省庁改革で組織の減量を担当した役人が、新しい役所の創設を提言するのか」「紙面下の長嶋さんの写真より大きいのは問題だ」とも。すみません。
全身像の写真の背景は、市町村職員研修所の中庭です。「どこかの料亭の庭かと思いました」「ホテルの庭ですか」といったメールも来ました。

連載「公共を創る」第223回

2025年5月22日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第223回「政府の役割の再定義ー与野党の政策立案能力の低下」が、発行されました。

政治主導がうまくいっていないことの一つとして、政治家の間の役割分担を議論しています。首相と大臣との役割分担の次に、各府省での大臣と副大臣と大臣政務官との分担について見ます。
前回で述べたように、首相と大臣の役割分担が混乱すると、大臣と官僚、そして大臣と副大臣や大臣政務官との役割分担も混乱します。
大臣や副大臣、大臣政務官の多くが1年で交代することの弊害もあります。1年では、予算年度を一巡する間に、決裁などの事務処理や多くの行事をこなすのが精いっぱいで、疑問や問題を見つけても、改善することができません。官僚たちと政策を議論する時間的な余裕がないのです。さらには、将来の職歴上昇に向けて、じっくりと大きな政策構想を築くための勉強もできないのです。

次に、政治家の役割分担の一環として、政府(内閣)と与党との関係について取り上げます。
政府と与党の二元制では、与党(議員)は多くの政策を行政機構(官僚)に依存することになります。自ら政策を検討することがなく、各省から出てくる政策案を議論したり、支援者などからの情報に基づく関心事項を各省に示して政策を検討させたりするからです。
もちろん、議員が関心事項について、各省に問い合わせることはあることです。また、議員に寄せられた情報を、各省の政務職や関係の部局に伝えることもおかしいことではありません。しかし官僚が、あたかも与党政策審議会の下部組織のように仕事をしてきたのがこれまでの実態です。

首相官邸の日程管理

2025年5月16日   岡本全勝

日経新聞ウエッブ版に、清水真人・編集委員の「首相官邸は1日にして成らず 政策の前に人事と日程管理」(2024年8月8日)に、私の発言が載っていることを教えてもらいました。これは、7月30日にPHP総研フォーラム「官邸の作り方ー総裁選を前に政治主導の未来を考えるー」に出演した際の発言です。1年近く前の話です。

・・・首相官邸は1日にして成らず。新首相が官邸を円滑に立ち上げるには3カ月の準備期間が欲しい――。政策シンクタンクPHP総研のこんな提言が永田町で関心を集めている。新首相にとって新しい目玉政策の展開も大事だが、その前に政権運営を安定させる官邸中枢の人事配置、重要日程の掌握や危機管理の備えが先決だと訴える・・・

・・・元復興次官の岡本全勝「08〜09年の麻生太郎内閣では、私を含め2人で首席首相秘書官の役割を分担した。首相の一番重要なリソースは時間だ。日程管理では首相に誰を会わせるか会わせないか、いつ何分、首相の時間を取るかが最も大事な仕事だった」

7月30日、PHP総研がこの報告書をテーマに開いたウェビナー。牧原や岡本らパネリストは日程管理の重要性で一致した。意外にも聞こえるが、報告書は新首相が早く展開したいはずの新しい政策について「政策プログラムの着手は急ぐな」と戒める・・・